日本のみならず、世界にその名をとどろかせる『ゴジラ』の誕生を祝したオールナイト上映&トークイベント『ゴジラ誕生祭2018』が、11月2日夜から3日朝にかけて開催された。

  • メカゴジラ(1993Ver.)と3式機龍(2002Ver.)のソフビ人形を手にした中尾彬(左)と手塚昌明監督(右)

『ゴジラ誕生祭2018』では、「ゴジラ」シリーズの第26作『ゴジラ×メカゴジラ』(2002年)、第21作『ゴジラVSスペースゴジラ』(1994年)、第22作『ゴジラVSデストロイア』(1995年)の3作が上映されるとともに、これらの作品と縁の深いゲストが招かれ、トークイベントが行われた。

第1部では、『ゴジラVSメカゴジラ』(1993年)、『ゴジラVSスペースゴジラ』(1994年)、『ゴジラVSデストロイア』(1995年)でゴジラと戦う「Gフォース」麻生司令官を演じ、『ゴジラ×メカゴジラ』(2002年)と『ゴジラ モスラ メカゴジラ 東京SOS』(2003年)で五十嵐総理を演じた俳優・中尾彬がステージに登壇。映画やテレビドラマで長年活躍するベテラン俳優で、近年ではワイドショーのコメンテーターとしても知られている中尾が「ゴジラ」および特撮映画をテーマにしたトークを行うのは、映画公開時の舞台あいさつ以来、10数年ぶりのこと。ゴジラファンにとっては長年夢見ていた光景がついに実現した「正夢!」とでもいうべき快挙であった。

MCを務める特撮ライター・円山剛士氏の呼び込みで現れた中尾は、満場のゴジラファンからの盛大な拍手を受け、「すごいね、この熱気は!」と驚きつつ、にこやかにあいさつを行った。まずは『ゴジラVSメカゴジラ』での「Gフォース」麻生司令官役について、「当時は50歳くらいで、脂が乗っていたんだねえ。"ゴジラより恐い"って言われたよ」と、チャームポイントでもある大きな目を見開いて思い出を語り、ファンを大いに沸かせていた。

中尾は、少年時代に第1作『ゴジラ』を地元・千葉県で観ており、そのときの印象を「郷里である木更津は、目の前に東京湾がある。そこからゴジラが出てくるんだよ。海から上がってきたゴジラは黒くヌメーッとしていて、すごく恐かったね!」と今も生々しい記憶として残っていると語った。

アメリカをはじめ、世界じゅうで公開されている「ゴジラ」シリーズだけに、海外でも中尾に「あなたはゴジラに出ていた俳優ですね」と声をかけるファンに遭遇するという。これについて中尾は、「(北野)武の映画に出ても、そんな風に言われたことがない」と笑いながら語り、「ゴジラ」の世界的知名度に感心する場面も見られた。

ここで、『ゴジラVSメカゴジラ』で助監督(セカンド)を務め、『ゴジラ×メカゴジラ』『ゴジラ モスラ メカゴジラ 東京SOS』の2作では監督を務めた手塚昌明氏が登壇。まず『ゴジラVSメカゴジラ』のエピソードを聞かれた手塚監督は、麻生司令官の衣装について「あの頃(1990年代)はアメリカのパウエル統合参謀本部議長(後に国務長官)が有名で、彼の制服を研究して、麻生司令官の制服に"略綬"をたくさんつけさせていただきました」と、衣装へのこだわりを明かしていた。

また、ゴジラと戦う部隊の長をどのように演じるかと問われた中尾は、「役としては単純なんだよね。ただ威張っていればいいんであって(笑)。ただ困ったのは、ゴジラがどこにいるのかわからないってこと。助監督が長い竿の先端に目印をつけて、役者はみんなそこに目線を合わせて"ゴジラがいるつもり"で芝居をするんだね。ゴジラと我々の切り返しなど、完成した映像を観ないとどうなっているかわからない。ゴジラ映画っていうのはそういった"活動大写真"というべき、ワクワクする楽しさがありました」と、特撮を使って現実にありえない場面を作り上げるゴジラ映画の魅力を、俳優の立場から簡潔かつ的確に語った。

続く『ゴジラVSスペースゴジラ』では、麻生司令官が自衛隊時代の部下だった結城晃(演:柄本明)に、対G兵器MOGERA(モゲラ)のパイロットを要請するという、渋い大人のやりとりが印象的だったが、中尾は「屋上で撮ったあの2人の芝居はよく覚えているよ。柄本とはこの作品がきっかけで、一緒に飲むことが多くなりました」と、思い出を語ってくれた。

そして、五十嵐総理役で出演した『ゴジラ×メカゴジラ』に話題が移ると、中尾は「司令官から総理に"上がった"のはうれしかった。でもギャラは上がらなかったな」と漏らし、客席を笑わせたあと「あのころ(2002年)は小泉(純一郎)さんが総理で、国民に人気があった。だから五十嵐総理を演じるときも、なんとなく小泉さんならこんなこと言うんじゃないかな、みたいにイメージして演技がしやすかった」と、小泉元総理をお手本にして総理大臣役を演じたことを明かした。

手塚監督は『ゴジラ×メカゴジラ』のラストで、ボロボロに大破しながらもゴジラの撃退に成功した「機龍」と「機龍隊」を称える五十嵐総理のセリフについて「撮影の前日に、中尾さんから『このセリフ、ちょっと弱いと思うんだけど』と言われまして、僕も締めの言葉にしては弱いと思っていたので、一晩じっくり考えてセリフを変えたんです。それを読まれた中尾さんが一言『イイね! これは言えるね』って(笑)」と、映画を締めくくる五十嵐総理の名セリフを作り上げた秘話を語った。また、中尾から「手塚監督は、背中を撮るのが上手い」と称えられた手塚監督は、「やはり男は背中で語るものですから(笑) 機龍の二度目の出撃を決断される、五十嵐総理の背中からの振り向きは格好よかったでしょう。そして、大島ミチルさんによる素晴らしい音楽!」と、良き俳優、良き音楽に恵まれて最高のシーンを作ることができた喜びをあらわにした。

  • ステージに並べられたソフビ人形。左から、『ゴジラVSメカゴジラ』のメカゴジラ、『ゴジラ×メカゴジラ』の3式機龍、『ゴジラVSスペースゴジラ』のMOGERA

トークイベントの後、ファンはこのまま『ゴジラ×メカゴジラ』『ゴジラVSスペースゴジラ』『ゴジラVSデストロイア』と、中尾の出演したゴジラシリーズ3作品を"朝まで"観続けることを知った中尾は「みんな寝ないで観ているの?」と驚きながら「いいねェ~」と、テレビでもおなじみの渋い低音で絶妙なリアクションを返し、客席からの大拍手を浴びた。

次回は、『ゴジラVSスペースゴジラ』に出演した斎藤洋介と、サプライズゲストを迎えたトークイベント第2部のもようや、ゴジラ誕生日カウントダウンの瞬間についてのレポートをお届けする。

「ゴジラ」関連作品としては、映画『GODZILLA 星を喰う者』が11月9日より全国劇場にてロードショー公開される。また、レジェンダリー・ピクチャーズ製作の『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』はアメリカで2019年5月31日より公開が予定されている。

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