GPSや心拍数計を搭載した、スポーツ重視のスポーツ&スマートウオッチが増えています。なかでも、以前からプロアスリート向け心拍計を発売してきたポラール・エレクトロ・ジャパン(以下、ポラール)のスポーツウオッチは、中・上級アスリートにも人気です。

  • ポラールの新スポーツウオッチ「Vantage V」発表会

    フォトセッションから1コマ。ポラール・エレクトロ・ジャパン 代表取締役の園部英生氏(写真左)と、シドニーオリンピックの女子マラソン、金メダリストの高橋直子氏(写真中央)

このポラールが、10月31日に発表したスポーツウオッチのプレミアムモデルが「Polar Vantage V」(以下、Vantage V)です。ポラールのプレミアムモデルということで非常に多機能なVantage Vですが、最大の特徴ともいえるのが「ランニングパワー」が計測できること。しかも、スポーツウオッチのような手首型デバイスだけでランニングパワーが計測できるのは、現在世界でもVantage Vのみだといいます(ポラール調べ)。

  • Vantage V

    11月8日発売のPolar Vantage V。カラーはホワイト、オレンジ、ブラックの3色。税別価格は69,800円。スポーツウオッチ単体のほか、ポラールの胸ベルト型心拍計「H10」心拍センサーとのセット製品も用意されています

  • Vantage V

    比較的手首が細い筆者の装着イメージ。サイズは直径46×厚さ13mm、重量は66g。女性には少々大きめにも感じましたが、デザインがシンプルなせいか、見た目には違和感がありません

  • Vantage V

    左右に合計5つの操作ボタンを配置。アナログボタンなので運動中も指の感触で操作しやすいのが特徴。とても多機能なので、操作を覚えるのには少し時間がかかるかも

ランニングパワーでトレーニング精度をアップ

現在多くのユーザーが、ランニング中のパフォーマンスを管理するためにスポーツウオッチを活用しています。ほとんどのスポーツウオッチはGPSや加速度計、心拍数計を搭載しており、これらのセンサーによって走った距離や経路、速度などがわかるほか、心拍数計による心肺機能の推移もチェック可能です。

このため、心拍数が一定以上の速度になるように走ることで心肺機能を強化するトレーニングをしたり、一定以上に心拍数を上げないことで長距離を走る訓練をしたり、といったことができます。また、ランニングの記録を残すことで自分の弱点や、次のトレーニング目標を立てることもできます。記録を残していくと、モチベーションが上がるという声も多く聞かれます。

  • Vantage V

    Vantage Vのトレーニング後のログ確認画面。写真はランニング後の記録を呼び出した画面。前回のランニング時の平均心拍数が161/分、最大心拍数が186/分だったことがわかります

とはいえ、同じ「1kmのランニング」をしても、平坦なトラックを走るのと、山道を駆け上がるのではランニングの強度が異なってきます。そこでこの数年、ランナーに注目されているのが「ランニングパワー」という指標です。

これは走っている道の傾斜や自分の体重などの情報から、筋肉に伝達されるパワーを数値化したもの。ランニングパワーが高い数値の場合は、それだけ筋力を使っていることになります。

  • Vantage V

    前回走ったランニングのログを表示。平均ランニングパワーが292W、最大381Wだったことがわかります。「Muscle Load」はランニングパワーなどの情報から筋肉への負荷を数値化したもの

従来、このランニングパワーを計測するには、足に専用のセンサーを装着する必要がありました。今回発表されたVantage Vは、世界で初めて手首型のデバイスだけでランニングパワーが計測できるようになっています。

ポラールによると、ランニングパワーがわかることでさまざまなトレーニングに応用が可能だそう。たとえば「筋肉に負荷をかけない走り方」をトレーニングする場合は、同じコースを同じスピードで、より低いランニングパワーで走ることが目標となります。また、同じ心拍数でより高いパワーで走ることができれば、心肺能力が向上していることがわかるといった具合です。

  • ポラールの新スポーツウオッチ「Vantage V」発表会

    運動後にVantage Vに表示されるサマリー。運動時間や心拍数のほか、カロリーやスピード、ランニングパワーなどが表示されます。今回表示しているのはランニング用サマリー画面ですが、サイクリングや水泳など、運動ごとに最適なインタフェースが用意されています

  • ポラールの新スポーツウオッチ「Vantage V」発表会

    ポラールのWebサービス「Polar Flow」と連携させることで、より詳細なデータをチェック。心拍数、ランニングペース、ランニングパワー、ピッチ、高度などの相関関係をわかりやすく表示してくれます

心拍計メーカーならではの、高精度な心拍計

Vantage Vの魅力は、ランニングパワーが計測できるだけではありません。ポラールは心拍計メーカーということもあり、内蔵されている脈拍計の精度の高さも特徴です。

一般的に、腕時計型の心拍計は運動中にズレやすい構造なので、うまく脈拍をセンシングできなかったり、脈拍以外のノイズを拾って正確なデータにならないことがあります。そこで、Vantage Vには新開発の心拍センサー「Poler Precision Prime センサー」が搭載されました。

Poler Precision Prime センサーは、2色のLEDを利用していることが最大の特徴。一般的な光学式心拍センサーは、緑色のLEDで肌表層の血管の脈拍をセンシングしますが、Poler Precision Prime センサーは5つの緑色LEDのほかに4つの赤色LEDを併用しています。赤色LEDは緑色LEDよりも光の波長が長く、より深い位置にある血管の脈拍を計測。肌の表層と深部を平行して計測することで、より精度の高い計測が可能になるそうです。

脈拍と関係ないノイズを除去する機能も。ひとつは、皮膚と接触する部分に搭載された4つの接触型センサーです。激しい動きでセンサーが皮膚から離れた場合、そのタイミングに受け取ったデータをノイズとして処理します。さらに、3D加速度センサーも備え、運動によってVantage Vが手首でグラつく動きをセンシング。この「動き」による心拍計測精度への影響も除去するそうです。

  • Vantage V

    手首と接触するセンサー部分。5つの緑色LEDと4つの赤色LEDが確認できます。一般的なスポーツウオッチよりLEDの数が多いのも、精度を高めるため。4つある銀色の丸い金属部分は接触型センサーです

このほか、Vantage Vはバッテリーのスタミナも魅力です。1日24時間連続で心拍計測を行いながら、毎日1時間トレーニングモードを起動した場合でも、最大1週間の連続使用が可能。高精度のGPSを使用したトレーニングモードでも、最大40時間、連続して使えます。このため、アイアンマンレースやウルトラマラソンといった長時間スポーツにも、安心して使用できるようになりました。30m防水なのもうれしいところ。

シドニー五輪マラソン金メダリストの高橋尚子氏もゲストとして登場

  • 高橋直子氏

    Vantage Vを装着する高橋尚子氏

Vantage Vの発表会では、2000年シドニーオリンピック女子マラソン金メダリストの高橋尚子氏がゲストとして登場しました。ポラールのアンバサダーでもある高橋氏は、トレーニング中はもちろん、寝るときもVantage Vを装着しているそうです。Vantage Vはランニング中のパフォーマンス管理に便利なだけではなく、睡眠の質といった体調管理にも役立っていると話しました。

  • Vantage V

    「Polar Flow」と連携させることで、運動についてのデータだけではなく睡眠時間や睡眠の質なども管理できます。ちなみに、高橋氏の「睡眠の質」の数値は、5点満点中3.5から4と比較的高得点なのだとか

新製品のVantage Vについては、ランニングパワーの計測機能を絶賛。高橋氏は「トレーニングによって自分が成長できたかは、普段の生活ではわかりにくい」とコメント。ランニングパワーを計測してデータの推移を比較することで、自分がどう力をつけたか、今後どういった練習メニューを組むかの参考にできることを高く評価していました。