外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏が2018年10月の為替相場レビューと、今後注目の経済指標やイベントをもとにした今後の相場展望をお届けする。

【ユーロ/円 10月の推移】

10月のユーロ/円相場は126.635~132.458円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約3.1%の大幅下落(ユーロ安・円高)となった。イタリアのポピュリズム政権が提出した予算案を廻り、欧州連合(EU)との対立が激化した事や、英国のEU離脱=Brexitに関する協議が難航した事からユーロ売りが先行。

その後も、ユーロ圏の景況感下ブレを示す経済指標の発表が続いたほか、そうした中でも欧州中銀(ECB)が量的緩和(QE)を年内に終了させる方針を堅持した事などからユーロ売りが継続。月末には、ドイツのメルケル首相が、州議会選挙で惨敗を喫した事などを背景に、次回の与党党首選に出馬しない意向を示した事で、ユーロ圏の「柱」であるドイツでも政局不安が高まった。

【ユーロ/円11月の見通し】

10月のユーロ相場を下落させた「犯人」の主犯格はイタリアだろう。イタリア政府が、欧州連合(EU)の規律違反となる大規模な赤字予算案を発表した事でEUとの対立が激化。欧州委員会は、ユーロ発足後初めて加盟国の予算案を却下して、イタリア政府に再提出を求めたが、選挙公約を守る必要があるイタリア政府としては修正に応じるつもりはないようだ。その予算案の再提出期限が11月13日前後と推測されるため、この前後で再び両者の対立姿勢が強まる恐れがある。

そのほか、中国の景気減速懸念などを背景にユーロ圏の景気にも先行きに不透明感が広がり始めている。10月のユーロ圏PMI(コンポジット)は約2年ぶりに52.7に落ち込んだ。11月のPMI(23日)にも注意しておくべきだろう。

一方で、10月後半になって世界の株式市場が落ち着き始めたのは、ユーロ/円相場にとっても心強い動きだろう。このまま、株価が復調すればユーロ/円のサポートになると見られ、イタリア不安などによるユーロ安をある程度は吸収できそうだ。

【11月のユーロ圏注目イベント】

  • 10月ユーロ/円相場は約3.1%の大幅下落

執筆者プロフィール : 神田 卓也(かんだ たくや)

株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Twitterアカウント:@kandaTakuya