外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏が2018年10月の為替相場レビューと、今後注目の経済指標やイベントをもとにした今後の相場展望をお届けする。
【ドル/円 10月の推移】
10月のドル/円相場は111.375~114.548円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約0.6%の下落(ドル安・円高)となった。ドル/円と相関性が高い米10年債利回りが9日に3.25%を突破。利回り上昇の過程でドル/円も114.548円まで上昇して年初来高値を更新したが、長期金利の上昇を嫌気する格好で高値圏にあった米国株が崩落するとドル買いよりも円買いが強まった。
トランプ米大統領が9日に米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げを「好ましくない」と批判した事もドルの重しとなった。ただ、ドル売り・円買いが一巡した中旬以降は111円台に下落すると買い戻されるなど底堅く推移。世界的に株式市場が不安定化する中でも安値は26日の111.375円どまりであった。月末にかけて主要国株価が値を戻すと30日には113円台を回復した。
【ドル/円 11月の見通し】
10月のドル/円相場は小幅安で取引を終えたが、どちらかと言えば底堅さが目立つ展開であった。日経平均が終値ベースで約2200円(約9.1%)下げたほか、NYダウ平均も約1340ドル(約5.1%)値下がりしたが、ドル/円は0.7円程度(約0.6%)の下落で踏みとどまった。
ドルの下落局面では、日米金利差に着目した買いが出やすいという事だろう。本邦大手機関投資家らの多くが、オープン外債投資(為替ヘッジなしの外国債券投資)を増やす方針を表明しており、こうした動きがドル/円の「押し目買い」に繋がっている公算が大きい。他の先進国・地域との景況感格差などから考えても当面はドルが下がりにくい展開が予想される。市場が注目する11月6日の米中間選挙を大方の予想通りに(上院を共和党、下院を民主党が勝利)終えれば不透明感が薄れ、12月の利上げを見据えてドルが買われやすくなる事も考えられる。
もちろん、米国景気に陰りが見えれば話は変わってくる。1日の米10月ISM製造業景況指数や2日の米10月雇用統計、また15日の米10月小売売上高などの重要統計のチェックは欠かせない。これらが、揃って悪化しなければ、11月のドル/円は下値が堅い一方で、上値が軽くなりそうだ。
【11月の日米注目イベント】
執筆者プロフィール : 神田 卓也(かんだ たくや)
株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Twitterアカウント:@kandaTakuya