俳優の田中圭が25日、都内で行われた「東京ドラマアウォード2018」に出席し、2018年4月期のテレビ朝日系ドラマ『おっさんずラブ』で主演男優賞を受賞。終了後、報道陣の囲み取材に応じ、同作への思いを語った。

  • 田中圭、吉田鋼太郎

    「東京ドラマアウォード2018」主演男優賞の田中圭(左)と助演男優賞の吉田鋼太郎

受賞の感想を聞かれ、田中は「うれしいです。自分が個人的に賞をいただくことが今年までなくて」と笑顔を見せる。「もちろん賞のことを考えて役者をやっているわけではないですし、撮影中も考えていたわけではないですけど」と前置きしつつ、「夢にも思ってなかったです」「『おっさんずラブ』のキャスト、スタッフのみんながくれた賞だと思うので堂々といただきます」と喜びを表現した。

初回視聴率は2.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。これを「数字的にはとても良くない」と素直に受け止めるが、「1話を見てすごく面白くて、現場でも手応えは感じていました」という自負があった。ところが初回放送の翌日、撮影現場では監督とプロデューサーが落ち込んだ様子で、田中に謝ってきたという。

  • 田中圭、吉田鋼太郎

「もともとそんなに数字に固執してるわけでもなかったですし、1話を見てすごく面白かったから『全然気にすることないよ』『数字をとりにいこうと思って連ドラにするんだったら、まずタイトルは“おっさんずラブ”じゃないよ』という話をしたのを覚えています」

「自分たちがブレずに楽しいと思うこととか、自分たちが好きだという気持ちをただただ真剣にやり続けよう」と心に決めると、その思いが“視聴率”を超え、SNSを通じて世間に広がりはじめた。

  • 田中圭、吉田鋼太郎

「視聴率で見えないものが確かにある。判断基準が視聴率しかないですから、もちろん数字がよくてドラマの現場が上がることにこしたことはないんですけど、数字にとらわれず自分たちが面白いと思う作品を作ってきたのが日本のドラマだと思います」

そう語る田中は、「オリジナルで書いてくださる人が少ない。もちろん原作も楽しいですけど、オリジナルの楽しさとか、純粋にみんなが作りたいものが今回、『おっさんずラブ』という形で届いて、たぶん史上最低の視聴率でグランプリをとったと思う。それでも逆に誇れるというか」と胸を張り、「数字を恐れない自分たちがやりたいものを貫く作品が、今後増えていってくれたらいいなと素直に思います」と今後のドラマ界への期待も寄せる。

「俳優18年やってきて、主演でやることなんてほとんどなくて。単発からではなく、連ドラスタートだったら、主演はきっと僕じゃなかったと思います」と自身の転機を感慨深げに回顧する田中。「とにかくやり切ろうと思って、18年の集大成だと思ってやった」と俳優人生を懸けた作品だったことを明かし、「意外とまだまだこんな現場作れるんだ。まだまだ楽しいことがこの先いっぱいありそうだなと、次への感情が生まれてきた」。

集大成のはずだった『おっさんずラブ』。「田中さんにとって『おっさんずラブ』とは?」という質問にしばらく考えた後、「スタートにすぎなかった」と引き締まった表情で答えた。数字では見えなかった視聴者の反応が、田中圭を新たな俳優像へと導いている。

  • 田中圭、吉田鋼太郎
  • 田中圭、吉田鋼太郎

「東京ドラマアウォード2018」受賞作品・受賞者一覧

■作品賞「連続ドラマ部門」
グランプリ『おっさんずラブ』テレビ朝日
優秀賞『ひよっこ』NHK
優秀賞『過保護のカホコ』日本テレビ放送網
優秀賞『アンナチュラル』TBSテレビ
優秀賞『コンフィデンスマンJP』フジテレビジョン
優秀賞『石つぶて~外務省機密費を暴いた捜査二課の男たち~』WOWOW

■作品賞「単発ドラマ部門」
グランプリ『眩(くらら)~北斎の娘~』NHK
優秀賞『あにいもうと』TBSテレビ
優秀賞『琥珀』テレビ東京
優秀賞『黒井戸殺し』フジテレビジョン

■作品賞「衛星・配信系ドラマ部門」
優秀賞『小さな橋で』スカパーJSAT
優秀賞『Miss Sherlock』Hulu

■ローカル・ドラマ賞
『You May Dream』NHK福岡放送局
『マザーズ2017~野宿の妊婦~』中京テレビ放送

■個人賞
主演男優賞 田中圭(『おっさんずラブ』)
主演女優賞 石原さとみ(『アンナチュラル』
助演男優賞 吉田鋼太郎(『おっさんずラブ』
助演女優賞 阿川佐和子(『陸王』
脚本賞 野木亜紀子(『アンナチュラル』
演出賞 塚原あゆ子(『アンナチュラル』

■特別賞
『アンナチュラル』制作チーム

■主題歌賞
米津玄師『Lemon』(『アンナチュラル』主題歌)

■海外作品特別賞
『お花畑から来た少年』台湾
『KADIN』トルコ
『閉じた心』ベトナム