Pro IEMシリーズ、5モデルを発売

Fenderのラボで設計、ハンドメイド

Fenderが、インイヤーモニター「Pro IEMシリーズ」を刷新、「THIRTEEN 6」と「TEN 5」、「TEN 3」、「NINE 1」、そして「NINE」の計5モデルを日本国内向けに発売します(11月以降となる予定)。全モデルがテネシー州ナッシュビルのFENDER AUDIO DESIGN LABで設計された名実ともに「フェンダー製」で、NINEを除くモデルはダイナミック型とBA型を組み合わせたハイブリッド型ドライバーを採用しています。

  • Pro IEMシリーズのラインナップ

Fender(フェンダー)といえばストラトキャスターとテレキャスター、とすぐに思い浮かぶほどロック小僧に圧倒的知名度を誇るギターブランドですが、2016年にステージ用カスタムインイヤーモニター(IEM)で実績豊富な「Aurisonics」を買収するなど、パーソナルオーディオの分野でも存在感を高めています。

発表会で最初に登壇したFender Music社長エドワード・コール氏は、ストリーミングサービスの普及により音楽市場は劇的に変化したと説明する一方で、「音楽フェスが増加し観客も増え続けている」と音楽体験の変化を指摘しました。今回発表する新シリーズを意識してか、「最近のミュージシャンはステージでIEMを使うことが当たり前になっており、今後もIEMの利用は増加する」と、楽器メーカーらしく演奏者側のトレンドを踏まえIEMの今後を分析しました。

  • 発表会場にずらりと並んだFenderのギター

  • フェンダーミュージック 社長のエドワード・コール氏

  • エントリーモデルのNINEを除き、Pro IEMシリーズはナッシュビルのラボでハンドメイドされています

ダイナミック型とBA型のハイブリッド構成

Pro IEMシリーズの説明は、Fender Music Instrumentsアジア・パシフィック地域セールス責任者のチャーン・ウェイ・マー氏が行いました。シリーズとしては、従来のFXAシリーズを一歩進めたプロ向けという位置付けで、新しい技術の投入とともに音質のさらなるブラッシュアップを図っているとのことです。

製品名は、ダイナミックドライバーの直径とBAドライバの数を組み合わせたもので、TEN 5を例にすると10mm径のダイナミックドライバーに5基のBAという構成が名前から判断できます。

上位3モデルに搭載されるダイナミックドライバーは、THIRTEEN 6が13.6mm、TEN 5とTEN3が10mmと径は異なるものの、振動板に高密度マグネシウム/チタン合金を採用した「HDD(High Density Dynamic)」と呼ばれる新開発のドライバーです。NINE 1とNINEのダイナミックドライバーは、完成度が高かったこともありFXAシリーズのものを継続採用したとのことです。

「HDBA (Hybrid Dynamic Balanced Armature)」と命名されたBAドライバーは、Fenderが特許を持つ独自の機構を備え、同じく独自設計を施したハウジングに最適化されています。エアフローを最適化して振動板を滑らかに駆動させるポート技術「APE (Atmospheric Pressure Equalization)」も用意し、広い音場と沈み込む低域を実現しているといいます。

THIRTEEN 6とTEN 5、TEN 3のハウジング成形に利用されている「3Dプリント・デジタルハイブリッドテクノロジー」も、Fenderの独自技術です。「さまざまな人種や年齢層から集めた約1万2千件の耳型データをもとに造形アルゴリズムを導き出し、3層構造で成型しました」(マー氏)とのことで、カスタムのIEMに近いフィット感を狙っています。

ダイナミック型とBA型のハイブリッド構成を採用する理由については、低域をリッチに再生できるパフォーマンスを重視した結果とのことですが、「エッセンシャルな帯域である中域には特に気を配っています。そこにギターの音域も含まれるから」(マー氏)と、チューニングにはギターメーカーとしてのアイデンティティを感じさせます。チューニングを担当したラボのメンバーも、「バックグラウンドは元ミュージシャンだったりスタジオのマスタリングエンジニアだったり多士済々」(マー氏)と、独特の音作りの背景が見え隠れします。

Pro IEMシリーズの仕様比較

製品名 THIRTEEN 6 TEN 5 TEN 3 NINE 1 NINE
HDDドライバー 13.6mm径 10mm径 10mm径 9.25mm径 9.25mm径
HDBAドライバー 6基 5基 3基 1基 非搭載
HDBAのうち超高域 2基 1基 1基
HDBAのうち高域 2基 2基 1基
HDBAのうち中域 2基 2基 1基
3Dプリント・デジタルハイブリッドテクノロジー
APEポート
Talon 2pinコネクタ

独自の「Talon 2pinコネクタ」

全モデルに採用されている独自の「Talon 2pinコネクタ」は、ハウジング側と端子側それぞれに凹凸が設けられ、それが嵌合することにより接続を確実なものにすることが狙いです。「他の2ピン端子ケーブルも接続可能なため、いろいろな2ピンケーブルが利用できます」(マー氏)とのことですから、リケーブルも楽しめます。

Bluetoothスピーカー「Monterey Tweed」

ギターアンプを彷彿とさせる外観がアイデンティティの「Monterey Bluetooth Speaker」には、バリエーションモデルとして「Monterey Tweed」が追加されました。最大出力は120W(ウーファー2基+ツイーター2基)、コーデックはSBC/AAC/aptXに対応と基本スペックはMonterey Bluetooth Speakerと同じですが、ツイード生地で覆われた外観が特長です。

  • レトロなギターアンプという佇まいのBluetoothスピーカー「Monterey Tweed」(奥がMonterey Bluetooth Speaker)

  • Monterey Tweedには、Fenderのギターアンプを彷彿とさせるのスイッチ類が使われています

  • 発表会場内に積み上げられていたFenderのギターアンプ。下に見えるものが「Monterey Tweed」のデザインの参考になったそうです

今回発表された全製品の価格はオープンですが、11月1日から国内販売を担うアユートによれば、市場想定売価はTHIRTEEN 6が263,980円、TEN 5が164,980円、TEN 3が109,980円、NINE 1が36,280円、NINEが14,280円、Monterey Tweedが58,280円とのこと(いずれも税込)。11月から順次発売される予定です。

アユートが国内代理店に

なお、イヤホンやBluetoothスピーカーなどFenderのオーディオ製品は、これまで完実電気が輸入代理業務を担当してきましたが、11月1日からアユートに業務移管されます。アユート代表の渡辺慎一氏は、「誰もが知るギターやアンプ製品のように、オーディオ製品についても誰もが知るブランドとなるよう盛り上げていきたい」と語っていました。

  • Fender Music Instruments アジア・パシフィック地域セールス責任者のチャーン・ウェイ・マー氏、フェンダーミュージック 社長のエドワード・コール氏、アユート代表の渡辺慎一氏