過日、iPhone XSシリーズが発表されたAppleのスペシャルイベントに筆者は招待されなかった。後からイベントに参加した磯修に、召集されたメンツがどんなだったか聞いてみると、ITジャーナリストで結成されたアベンジャーズかジャスティス・リーグといった様相で、非IT系の筆者が呼ばれなかったのも当然と言えば当然かなと思った。

  • iPhone XS/XS MAX

仕方なく、自宅で中継を見ることになった。しかし、それはうつらうつらの視聴となってしまった。6,900,000,000の何? 600,000,000回だったのが5,000,000,000,000回になった何? みたいな感じで、数字の話が続くなー、眠いわと。多分呼ばれとしても、Steve Jobs Theatreで居眠りこく羽目になっただろう、筆者に招待状を送らなかったAppleの判断は正しかった。

さて、それでiPhone XSシリーズのレビュー、どうしたものか? 本稿でも延々と数字を並べてみても良いのだが、字数稼ぎをしてると難詰されても仕方ない流れになるのは否めないし、大体その数字が何を意味してるのかも分からないまま話が進んでいきそうなので、それはやめておく。もっと簡潔にiPhone XSシリーズの魅力を伝えたいのだ。

では、iPhone XSシリーズの魅力は何だろうか? それは「三つの綺麗」に集約されることになるだろう。

その一、フォルムが綺麗

まず、綺麗なのは、そのフォルムだ。フレーム部には医療器具にも使われるようなステンレススチールを採用。Appleが特別に開発したアロイに精密な機械加工を施して、3つの仕上げの構造フレームを作り出している。スペースグレイとゴールドのフレームの着色には、PVD着色プロセスという高度な物理蒸着処理が行われ、ガラスに美しくマッチする色と反射率を実現している。色の光り方や光を受けての反射も深みが増したように感じられる。

  • iPhone XSシリーズでは、フレームの上部と底部にアンテナラインが追加

iPhone XSシリーズでは、フレームの上部と底部に、一つ前のモデルであるiPhone Xにはなかったアンテナラインが追加された。これにより、デザインはアシメトリーとなっている。一部のジャーナリストはウェス・アンダーソンばりにシンメトリーなデザインの採用を声高に叫ぶが、ANN DEMEULEMEESTERや山本耀司のようなアシメトリーなデザインを身上とするデザイナーが好きな筆者は、おお、良いじゃん!というのが第一印象だった。

  • アシメトリーなデザインが気に入らないという人も。でもまあ、美的センスというか審美眼の問題なので……

外見上はiPhone Xをベースにおく一方で、耐水および、防塵性能は向上。IP68等級に適合し、最大水深2mで最大30分の耐久と進化を遂げている。実用の面でもしっかりと歩を進めているというわけだ。

その二、ディスプレイが綺麗

綺麗なところ、二番目に挙げたいのはディスプレイだ。高精細を誇るSuper Retina HDディスプレイは、基本的にiPhone Xの仕様を踏襲。iPhone XSではコントラスト比、解像度はもちろん、明るい部分から暗い部分までを幅広く表示できるハイダイナミックレンジ(HDR)に、状況に応じて最適な色合いで表示をしてくれる「True Tone」テクノロジー、デジタルシネマ規格であるDCI-P3の広色域に対応する。

  • 圧倒的に美しいSuper Retina HDディスプレイ

HDRでは、Dolby VisionとHDR 10に対応。アプリの対応も進んだため、よりリッチな映像体験ができるようになった。再現性もとても高く、特に黒い部分の階調の滑らかさには驚かされる。

さらにiPhone XS Maxは6.5インチという大画面。没入感も桁違いである。筆者は今まで、映画の視聴にはiPadを利用してきたが、これからはiPhone XS Maxで観る時間が長くなりそうだ。

その三、撮った写真や映像が綺麗

三つの目の綺麗は、やはりカメラで撮れる画像に映像。前述のHDRはカメラにも搭載されていたが、それが「スマートHDR」に進化。撮影すると被写体を分析、写真の明部と暗部により精細な描写が可能となった。プロが一眼レフで撮ったような写真を楽しめる「ポートレートモード」も進化。撮った写真の被写界深度を後から調整できる「深度コントロール」が追加され、さらにより精巧な背景のぼかし効果を味わえるようになった。映像も最大30fpsの拡張ダイナミックレンジが適用されるようになったほか、前面のTrueDepthカメラには1080pと720pで映画レベルのビデオ手ぶれ補正が搭載され、1080pでの撮影は、フレームレートを30fpsと60fpsから選べるようになっている。カメラの機能と言って良いのかどうか迷うが、動画撮影では、ステレオの録音に対応している。これにより、音像も立体感を演出できるようになった。

  • 「ポートレートモード」も進化し、後から被写界深度を調整できる「深度コントロール」が加わった

これら「三つの綺麗」に加えて、バッテリーライフが長くなったこと、スマートフォン史上、最も強靭なガラスを採用したことでの堅牢性の向上、画面は大きくなったけど、「Plus」シリーズより小さくなった持ちやすいサイズ感、と、エンドユーザーが求める理想のスマーフォン像が全て揃っている。「スマートフォンに求める機能」でネット検索してみれば、消費者は何に期待しているのか様々な調査結果を発見できると思うが、iPhone XSシリーズはほとんど全部、それらのニーズを満たしているはずだ。数字で「凄さ」をアピールしなくても、本質的な魅力となる「良さ」の部分は「三つの綺麗」プラスαで十分伝わるのではないかと思う。