突然の災害から難を逃れても、その後の避難生活の中には、さまざまな不安によるストレスや、食欲不振、水分不足、免疫力の低下など、避難者の健康面を脅かす要素がいくつも潜んでいる。そんな「間接被害」に対する備えとして、日々進化している防災グッズの中から最新のものをピックアップし紹介しよう。
歯磨きもできるウェットティッシュ
災害時、幅広いシーンで活躍してくれるウェットティッシュ。その中でも、「エスピタプロプル」シリーズは化粧品に分類され、肌に優しいのが特徴だ。大豆由来の洗浄剤が汚れを浮かし、取り除き、皮膚を保湿。赤ちゃんにも使用でき、メイク落としや歯磨きもできるという。「エスピタプロプル Type-C」は、極寒から灼熱まで対応。-30~80℃の環境下でも保管が可能となっているため、クルマに備えておくのもいいかもしれない。そのほか、しっかり拭ける大判タイプや、水に溶けてトイレに流せるタイプなども展開している。
水いらずの手袋シャンプー
東日本大震災があった際、仮設のお風呂が設置されたのは地震発生から約1週間後であったという。そのような水をうかつに使えない環境下でも、髪の汚れや頭皮のかゆみを解消してくれるのが「ウェット手袋」。使い方は、そのまま手に装着して頭皮をマッサージするように揉むだけ。水も使わず、洗い流しやタオルでのふき取りも不要ながら、使った後はまさにお風呂上がりのようなサッパリ感が得られる。
本棚に収納できるヘルメット
落下物から頭を守るヘルメットに、収納しやすくするための工夫を加えた「回転式ヘルメット Crubo(クルボ)」。トップ部をくるっと回すだけで、ヘルメットの高さは140mmから80mmまでコンパクトに。A4サイズのパッケージに入れておけば、本棚や引き出しにもしまっておける。頭囲は47~62cmまで調節でき、子どもから大人まで幅広く対応可能。
持ち歩ける蓄電池で電気を備蓄
避難生活の最中、娯楽を享受できる数少ない手段のひとつがスマートフォンだ。そのスマホも、電源がないことには役に立たない。そこで、電気の備蓄も考えておかなければならないというわけだ。「ポータブル蓄電池 PG-223」は、高さ286mm・重量1.8kgという持ち運び可能なサイズ感ながらも、電池容量は223Whを誇る。具体的には、スマホ約22台分、ノートPC約8時間分の充電をまかなえる計算だ。
蓄電池そのものを充電するために、ソーラーパネルも準備しておこう。同商品は、28Wのソーラーパネル(別売)を利用した場合、日照12時間ほどでフル充電ができるとのこと(AC電源の場合は約6時間)。
ソーラーパネルは、小型のタイプも要チェック。7Wのソーラーパネルと5,000mAhの充電器、USB LEDライトがセットになっている「電気の備蓄 ST-18」は、折りたたみ可能でカバンの中にも常に入れておけるスマートさが嬉しい。折りたたんだ際の寸法は、230×165×5mm。日照12時間でフル充電されるモバイルバッテリーでは、スマホ約2台分、タブレット1台分の充電をまかなえる。
直径約6cmのミニマムな防災キット
たくさんの防災用品を詰め込んだ非常袋を用意したものの、置き場がなくて押し入れの奥に眠ってしまっている。そんな人にオススメなのが、玄関などにも置いておけるスリムな防災キット「MINIMAID(ミニメイド)」だ。直径57mm、長さ580mmの円柱状のケースには、災害が起きてから避難所へ行くまでに必要な最低限のアイテムとして「懐中電灯」「多目的ケース」「ラジオ」「ポンチョ/水筒」が収納されている。
空気と電気で水をつくる!?
普段の生活の中では、“水に不自由する”という状況をイメージするのは難しいかもしれない。しかし、過去の大規模地震の発生時を振り返ると、「水の確保に困った」という声は被災者の大多数から上がり続けていたはずだ。そんなときに活躍してくれるのが、空気と電気で飲料水を生成する「泉せせらぎ」。
空気中の水分をフィルターに吸着する→ヒーターで温めて蒸発させる→外気温との差で水が発生→ろ過してキレイに、という仕組みで、電源がある環境ならどこででも飲料水が生成可能。水の生成量は1日約4Lで、金額に換算するとランニングコストは1Lあたり約24円となる。
4カ国語・606メッセージ収録のメガホン
海外でも大きく報道された、東日本大震災のニュース。その中で、特に海外メディアから注目を集めていたのは、大災害の直後にも関わらず秩序を保つ日本人の姿だったということを覚えているだろうか。一方で、日本在住歴が浅い外国人や海外から来た旅行者は、災害が発生した際に大きな不安を抱いたり、パニックを起こしたりしてしまうこともあるかもしれない。そのような状況下で訪日外国人をスマートに誘導するには、内容や伝え方などにより一層の配慮が必要となってくる。
「非常用多言語放送装置 MegaSpeak(メガスピーク)」は、4カ国語(日本語、英語、中国語、韓国語)で避難誘導や案内など606パターンのメッセージを標準収録している。すべての言語でネイティブチェックを経ており、ナレーションも機械音声ではなく、聞き取りやすさを重視してプロのナレーターが録音。最大6言語まで追加可能で、オリジナルメッセージの収録にも対応してくれるという。メガホン上部に取り付けられたタッチパネルで操作も簡単。電池式でネットワーク環境も不要なため、どこでも・誰でも利用できてしまう。
ほとんど紙でできているトイレ
災害後のライフラインが復旧する順番は、「電気」→「水道」→「ガス」→「下水道」と言われている。加えて、公共のトイレの封鎖や、使用済み簡易トイレの廃棄場所が不足することによる二次感染の発生なども起こりうるため、災害直後のトイレの確保は非常に重要な課題となっている。
「ほぼ紙トイレ」は、発災後すぐに使用できる備蓄型組立式のトイレなのだが、名前の通りほぼ紙製であるため、女性2名で運べてしまうほどの圧倒的な軽量化を実現している。組み立ては工具も不要で、所要時間は約20分。紙でできているとはいえ材料のほとんどが耐水性なので、屋外にも設置可能となっている。
「防災製品等推奨品マーク」って?
災害時、有効に活用できてなおかつ安全だと認められる防災グッズには、「防災製品等推奨品マーク」というものが付いている。これは、防災安全協会が認定している制度であり、今回紹介したアイテムのほとんどにもこのマークが付いていた。もし防災グッズを探すうえで迷ったら、ひとつの判断基準としてこのマークを覚えておくといいかもしれない。
東日本大震災を境に、防災グッズへ目を向けるようになったという人も多いはずだ。あの日から7年以上が経った今も、防災グッズは常に進化を続けている。今回紹介したアイテムたちは、ほんの一例に過ぎない。自宅はもちろん、オフィスなどにおける防災グッズの備えは定期的に見直す機会を設け、より安心感が得られるものを選んでみてほしい。
(取材協力:防災安全協会、そなエリア東京)
※価格はすべて税込