最近、賃貸住宅でも「オール電化」の物件が増え、便利で節約できそうなイメージを持つ人も多くいるかもしれません。しかし、いざ使うとなると、不便を感じないか、自分に合っているのか、火事の危険や災害時はどうなるのかなど不安に思うことも多いのではないでしょうか。
今回は、オール電化住宅のメリットとデメリットや、電気代の節約術などオール電化住宅について詳しくご紹介します!
オール電化住宅とは?
「オール電化住宅」とは、給湯や調理、空調などのすべてを電気で賄う設備を導入している住宅のことをいいます。家計のうちの光熱費は電気代とガス代、都市部の賃貸住宅では石油ストーブなどの使用を不可としている物件も多いのですが、場合によっては石油代・灯油代などの空調用燃料費を指しますが、これが電気代だけになるということです。
近年は、賃貸住宅においてもオール電化住宅が登場してきています。
給湯は、一般的に「エコキュート」という名称で知られている自然冷媒ヒートポンプ給湯機が使われています。電気代の安い深夜のうちにお湯を沸かして、ためておくシステムです。調理器具としては、ガスコンロでなくIHクッキングヒーターとなります。火ではなく、磁力発生コイルでの加熱となるため、中華料理などを調理する際にフライパンや鍋を浮かせて振ったりすると、熱が伝わりません。一人暮らしの賃貸住宅でも、火での調理にこだわりのある人はこの点も踏まえて検討しましょう。
オール電化の5つのメリット
では、賃貸住宅のエネルギーを電気のみで賄うオール電化のメリットは、具体的にどういったものがあるのでしょうか。
光熱費を管理しやすい
すべて電気で賄う機器を使用し、ガスや灯油などのその他燃料をまったく利用しないのであれば、ガス会社との契約は不要となり、基本料金を支払う必要もありません。ガス併用の賃貸住宅の場合、2つの料金を管理しなくてはなりませんが、オール電化住宅の賃貸物件なら電気代のみで済むため、管理が簡単になるというメリットがあります。
光熱費を圧縮できる可能性がある
各電力会社は、オール電化住宅に対してお得な料金プランの提示をして、オール電化の普及促進に努めています。
ただし、プランによって、安い時間帯が違うなど、それぞれ特徴があります。深夜電力が安いプランは、日中の電気代が高くなることがほとんどです。そのため、夜間の仕事などで日中在宅することが多い場合は、光熱費が圧縮できるとはかぎりません。
調理時の火事のリスクが低い
オール電化住宅では、直火でなく、IHクッキングヒーターの磁力線による加熱となります。火を使わないため、火事のリスクを大幅に減らすことができます。お子さんが留守番をすることが多いファミリー向けの賃貸物件や、お年寄りだけの世帯などではオール電化住宅は安心材料のひとつかもしれません。また、火事のリスクが低くなることから、賃貸物件や保険会社によっては火災保険が少し割安になることも。
ガス漏れ・一酸化炭素中毒の心配がない
ガスや灯油のストーブなどの機器を使用する場合、必ず換気が必要です。寒いからと窓を閉め切ったまま使い続けてしまうと、ものによっては一酸化炭素中毒を引き起こす危険性があります。直接室内で火を使用しないオール電化住宅では、ガス漏れや一酸化炭素中毒などの心配がないというのは大きなメリットです。特に、賃貸の集合物件ではいくら自分が気をつけても、隣室や階下でガス漏れが発生することもあるので、そういった面でも安心につながります。
大規模災害時の復旧が早い
近年、電気・都市ガス・水道などのライフラインを直撃する大災害が次々に日本列島を襲っています。災害には地震、台風、豪雨などさまざまなケースがありますが、すべてのライフラインが停止した場合、過去の多くの例で復旧が早いのが電気です。
たとえば、東日本大震災では、もっとも被害が大きかった地域のひとつである宮城県では、震災6日後には電気の復旧率が8割を超えています。一方、都市ガスの復旧率が8割を超えたのは、震災32日後のことでした。
断水となった場合に、給湯用のタンクから直接お湯または水が補給できることも、電化住宅が評価された点だったようです。
オール電化の5つのデメリット
ガスから電気に変えることで得られるメリットがある一方、デメリットはどういったものがあるのでしょうか。
電気代が高くなることも
契約内容によりますが、オール電化住宅のトータル電気料金が安くなるのは、給湯のために使用する電気を深夜に使うなどして、割安な深夜帯の電気を使うことが前提になっています。例えば東日本大震災後、電気料金が値上がりした地域もあったり、燃料の世界的な高騰を受け、値上がりする場合などもあります。
音が気になってしまう人がいるかも?
エコキュートは割安な深夜電気料金を利用するため、深夜にコンプレッサーを稼働させる必要があります。他の家電でももちろん音や振動は出ますが、稼働特性上、また設置場所や家の作りや周辺環境によっては、気になる人もいるかもしれません。
使っている途中でお湯がなくなることも
ずっとお湯を使用していると、タンク内のお湯が切れてなくなってしまうことがあります。モニターで残量が確認できるものもあり、またほとんどの機種でお湯の追加ができますが、うっかりしていると突然水になって不便を感じる場合があります。
直火調理はできない
料理にこだわりがある方には大きなデメリットとなる可能性があるのが、調理機器の制限です。鍋やヤカンもIH専用のものしか使えません。強い火力を再現できる機種もあるIHクッキングヒーターですが、「あぶる」という調理方法はできないため、オーブントースターなどで代用する必要があります。また、これまで賃貸住宅で直火(ガスコンロ)用の調理器具を揃えていた場合には、引っ越しのタイミングでIH対応の調理器具を買い換える必要があるので、思わぬ出費になることも。
地域によっては電気よりも災害に強いプロパンガス
災害時に、復旧は早いといわれている電気ですが、それでもプロパンガスほど早くはありません。プロパンガスと都市ガスは供給会社が違うものです。一般的に、供給所から道路下のガス管を通じて供給される都市ガスが普及していないエリアでガスを使用する場合、液化されたLPガスを大きなガスボンベに充てんし、その容器を定期的にトラックで各戸配送する仕組みのプロパンガス(LPガス)を利用します。都市ガス世帯普及率は、関東では6割を超えていますが、全国平均では48%を切り、本州でいちばん都市ガス世帯普及率の低い東北ではわずか24%です。
このプロパンガスは、賃貸住宅ではそれぞれの部屋と建物の脇などにおいてある容器(ガスボンベ)を接続しているだけなので、大型災害時に強い威力を発揮することも。エリアによってはオール電化住宅よりもガス併用の方が災害に強い場合もあります。
知っておきたいオール電化住宅の節約術
電気に一本化することで、ガス代が不要なオール電化住宅ですが、それ以上に電気代が上がってしまえばトータルコストは高くなります。賃貸物件の家賃をなるべく抑えたのに、住んでみたら意外と電気代がかかってしまった……。そんなことにならないためにも、オール電化住宅で注意するべき、節電ポイントをご紹介します。
お湯の無駄遣いをしない
ガスは使用したいときにすぐにお湯を好きなだけ使えるのに対し、電気給湯器では貯めていたお湯を使い切ってしまった場合、もう一度お湯を沸かすのに時間をかけなければなりません。。通常、エコキュートでは家族の人数を設定するなどして日常使う湯量を計算し、1日分賄えるだけのお湯を深夜に沸かしてストックしておきます。大掃除や朝風呂、お湯の出しっぱなしなどで、そのストックを使い切ってしまうと、割高な昼間の電気でお湯を沸かさなくてはいけなくなります。お湯は計画的に利用しましょう。
暖房効率を上げる工夫をする
冬は外気温が低くなるため、室温を22℃などに設定しても室外と室内の温度差が大きくなり、部屋を温めるために多くの電力が消費されてしまいます。日中ずっと家に居る日などは、エアコンのみでの暖房を続けると、電気代がかなり高くなってしまう可能性も。
すき間テープなどを利用し断熱性をアップする、なるべく1部屋に集まるようにして暖める空間を狭くする、日中に睡眠をとる場合は部屋全体を温めるエアコンは抑えて電気アンカや電気毛布を利用するなど、効率のよい暖房法を工夫したいですね。また、冬は空気熱が低いため給湯についても効率が低下し光熱費が高くなる傾向があります。
電気料金プランをマメにチェックする
「電気料金プランはみんな同じ」とお考えの方も多いのですが、実は電気料金プランはライフスタイルや使用頻度の高い家電機器に合わせていくつかの種類があります。契約している電力会社だけでなく電力自由化によって誕生した新電力会社の料金プランも含め、定期的に料金プランを確認してみましょう。自分の家庭の使用量ならどのプランが最適なのか、試算して比べてみることが大切です。
まとめ
オール電化住宅のメリットやデメリットは使うエリアや、利用者の生活スタイルによって異なります。しかし、日中あまり在宅せず、夜間を中心に電力を使うライフスタイルと選択した電気料金プランがマッチすれば、光熱費を抑えることが期待できます。自分に合っているかどうかを基準にオール電化住宅を部屋探しの候補に入れることで、今よりも快適な暮らしができるようになるかもしれませんね。
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