ウォーターサーバーとコーヒーマシン。オフィスや家庭で利用されるふたつの機器が「合体」した新製品が発表された。
これは、ネスレ日本とアクアクララが、両者の製品をドッキングするために共同開発を行い、実現したもの。10月17日より予約受付を開始し、11月1日から発売する。
両社とも機器を無料で貸し出し、消費財の購入で利益を徴収するビジネスモデルは共通しているが、今回あえて機器を「合体」した狙いはどこにあったのだろうか。
「合体」したマシンがもたらす利便性
今回発表された「一体型マシン」は、ネスレのコーヒー専用マシン「ネスカフェ ゴールドブレンド バリスタ 50」、あるいはコーヒーや紅茶、抹茶も利用可能な「ネスカフェ ドルチェ グスト ジェニオ2 プレミアム」のいずれか1台と、アクアクララのウォーターサーバー「AQUA WITH」と一体化したもの。
この「一体型マシン」の開発は1年がかりで、「AQUA WITH」の開発と並行して行われた。コーヒーマシンは上記2機種決め打ちで、筐体にはめ込む格好。複数の機器を家庭用電源で稼働させるため、コーヒーマシンと水の利用を切り替えて行う仕様になっている。
「合体」したことによる利用側のメリットは、コーヒーマシンへ都度行う給水、余った水の廃棄といった手間を省けること。そして、コーヒーマシン単体の契約では得られない、温水・冷水の利用権も1つのプランに含むことだ。
機器を「合体」した理由はこの上なくシンプルだが、両社がタッグを組んだ狙いはどこにあったのだろうか。ネスレ日本の高岡浩三 代表取締役 社長兼CEOが挙げた理由の一つは、「共働き世帯の増加」。夫婦がともに多忙な中で求められる家事の"時短"の一環として、この「一体型マシン」が利便性を提供できるとした。
もうひとつの理由は「季節」による需要変動。ネスレ日本側からすれば、夏はアイスコーヒーが、冬はホットコーヒーが求められるという違いがあり、オフィス向けのレンタルサービス「ネスカフェ アンバサダー」にはアイスコーヒー専用機もラインアップしている。
一方、アクアクララの商材である宅配水は、サーバーで温水も提供できるが、夏場の需要の方が高いという。それぞれが強い季節・商材を「一体型マシン」の展開で穴埋めし合い、両社の消費財の売り上げ向上を見込む。
また、従来給水が必要だったことからコーヒーマシンの設置をためらっていた、顧客のセルフ利用を想定した店舗での設置も提案。テスト稼働時には調剤薬局やスーパーマーケットのイートインコーナーに設置したところ、顧客満足度が向上したという。
なお、利用の申込は両社でそれぞれ受付。マシンの設置は窓口問わずアクアクララ側で実施する。利用料金は、オフィス利用(ネスカフェ アンバサダー)も家庭設置も同額で、月額1,500円。ただし、家庭利用の場合は2年間のウォーターサーバー継続利用と、ネスレ定期便の申込が必要となる。
ネスレ日本の高岡社長は、「2019年までに5万か所に設置」と目標を明言。この数値は「宅配水業界の中ではとても大きな数字」であるとしながらも、これ以上の数が出るのではないかと予測していることを言い添えた。
コーヒーマシンの給水・排水は、特に水場が近くにないオフィス利用においては大きく利便を損なう要因となりうる。また、本体下部に水タンクを置くタイプであれば、交換の際の負担も小さくなる。
既存製品が内包していた顧客の"小さな不便"を取り除く共同開発マシンで、どの程度需要を広げられるか注目したい。
(杉浦志保)