WOODシリーズ10周年記念モデル「HA-FW10000」
JVCケンウッドがビクターブランドのイヤホン「HA-FW10000」を11月上旬に発売します。価格はオープンで、想定売価は税別180,000円前後。「木」をメイン素材としたプレミアムなイヤホンです。
JVCケンウッドは2008年から、ハウジングや振動板の素材に「木」を採用するWOODシリーズのイヤホンを発売してきました。本機は10年の節目を迎えたWOODシリーズのフラッグシップモデルです。
ハウジングには国産の楓(カエデ)の無垢削り出し材を贅沢に使っています。さらに11mm口径のダイナミック型ドライバーの振動板には、カバ材から独自の薄膜加工技術によって、50μmの薄さに削り出したウッドドームと、カーボンコーティングを施したPET振動板を組み合わせました。
そして、今回の新製品「HA-FW10000」はJVCやKENWOODのブランドではなく、2017年に復活を遂げたVictor(ビクター)ブランドを冠して発売されます。背景については後ほど説明します。まずはHA-FW10000の特徴からみていきましょう。
HA-FW10000の設計
JVCケンウッドは、JVCの前身であるビクターの頃から「オーディオは楽器でありたい」というコンセプトを土台に、一貫したモノづくりを展開してきました。新しいイヤホンのHA-FW10000も、温かみのあるウッドハウジングの美しいたたずまいがバイオリンやクラリネットのような魅力を醸し出しています。
ハウジングは大柄すぎず、手に持ってみるとウッドならではの軽やかさを実感します。内部のドライバーケースにはチタニウムを使ったり、ノズル部分にはステンレスを、そして着脱可能なイヤホンケーブルのコネクタケースにもメタルを採用するハイブリッド素材の構成は見た目の高級感もたっぷり。コネクタケースにはビクターのブランドキャラクターとして長年にわたって親しまれている「ニッパー犬」があしらわれています。
ハウジング内部は、独自のウッドドームカーボン振動板のパフォーマンスを最大限に発揮できるよう、磁気回路からドライバーケース、そして空気圧をコントロールするためのダンパーまで徹底的に作り込まれています。通常スタンダードクラスのイヤホンではハウジングと一体成型にするコネクタ端子を、敢えてハウジングから分離した構造もこのモデルならではのユニークな試みです。ハウジング内部の音響設計を自由に、かつ精密なところまで調整できるようになったそうです。
艶っぽい外装の楓製ウッドハウジングは漆(うるし)による塗装を何度も重ねて光沢を引き出しています。内部の吸音材には天然素材の阿波和紙と絹を採用して、暖かな響きにチューニングを整えています。
イヤホンのノズルにはステンレスを採用して、中から外へ不要な背圧を逃がすための「アコースティックピュリファイアー」と呼ぶ細かな孔を配置しています。
「HA-FW10000」のスペック
- 型式: ダイナミック型
- ドライバー: 口径11mmウッドドームドライバー
- 出力音圧レベル: 出力音圧レベル
- 再生周波数帯域: 6Hz ~ 52,000Hz
- インピーダンス: 16Ω
- 最大許容入力: 200mW
- ケーブル: MMCX接続、1.2m(Y型) OFC線、φ3.5mm24金メッキステレオミニプラグ
- 質量(ケーブル含まず): 約21.5g
HA-FW10000を試聴してみた
18日に開催された記者発表会で、展示されたHA-FW10000の音を聴くこともできました。低域から中高域まで、雑味のないクリアなサウンドが自然とつながる「生っぽい音楽再生」がこのイヤホンの大きな魅力です。解像度も高く、スペック上の再生周波数帯域はハイレゾ対応の基準を余裕でカバーする6Hz~52kHzとしていますが、音に現れない「空気感」や演奏者の「緊張感」のようなものも迫力いっぱいに伝えてくれるイヤホンに思わず聴き入ってしまいました。
出力に余裕のあるポータブルオーディオプレーヤーやヘッドホンアンプを組み合わせた方が実力をフルに発揮できると思いますが、インピーダンスが16Ωと低めなので、ハイレゾスマホなどに直接つないで聴いても心地よく鳴ってくれます。
パッケージに付属するイヤーピースはノズルの内側にスパイラル配列のドットを設けたJVC独自の「スパイラルドット+」のイヤーピースです。サイズはS/MS/M/ML/Lの5種類。イヤホンケーブルを耳の後側に掛ける「ループ掛け」のスタイルを基本としているので、装着感が自分の耳にフィットするか、店頭の展示機などで確認してみることをおすすめします。
Bluetoothアダプターに差し換えてワイヤレス化
ほかにもHA-FW10000を100%楽しむ方法をご紹介しましょう。本機はMMCXコネクターによるケーブル交換ができるので、JVCから発売されているMMCX接続のBluetoothアダプター「SU-ARX01BT」を用意すればワイヤレスリスニングも楽しめます。
ビクターブランド、今後の戦略は
最後に、ビクターのブランド展開についても紹介しておきましょう。記者発表会にはJVCケンウッドのブランド戦略部 部長の山本耕志氏が登壇して、今後のブランド戦略を説明しました。
JVCケンウッドでは、しばらくコンシューマーから離れていたビクターの復活を2017年の5月に宣言。同社のイノベーティブな技術・ソリューションを搭載する製品に冠していくことを発表しました。その最初の取り組みとして、ヘッドホン再生の頭外定位技術「EXOFIELD(エクソフィールド)」が登場。これをハイエンドヘッドホン「HA-WM90-B」と組み合わせた数量限定のソリューション「WiZMUSIC(ウィズミュージック)」としてパッケージ商品化しました。
続いて今年の6月には、ビクターのブランド創立90周年を記念したオルゴール「RJ-3000MK2」の限定販売も実施しています。HA-FW1000は広くコンシューマー向けに一般販売される久しぶりのビクターブランドの製品となりました。
WOODシリーズのイヤホンを発売したあとも、ビクターブランドの製品ラッシュが続くようです。JVCケンウッドの執行役員 メディアサービス分野責任者 兼 メディア事業部長の林和喜氏は「来年度中にはWiZMUSICソリューションを応用したスタンダード価格帯のヘッドホンを発表したい」と述べていました。WiZMUSICのパッケージとして限定販売されたプレミアムヘッドホン「HA-WM90-B」の単品販売も11月に始まるそうです。
ウッドコーンコンポの新作も
また来年2月には据え置きタイプのウッドコーンオーディオシステムの新製品も発売を控えています。ハイレゾ再生やBluetoothによるワイヤレスオーディオ再生にも対応しながら、コンパクトでスタイリッシュに置けるコンポの試作機がお披露目されました。
ビクタースタジオの原音をリスナーに伝える
同じく記者発表会に出席したJVCケンウッドの技術開発部 主幹 音質マイスターの秋元秀之氏は「JVCケンウッドでハードウェアの設計・開発に携わるエンジニアと、コンテンツ制作の最前線である東京のビクタースタジオのノウハウが一体になったモノづくりをできることが当社の強み」であると述べています。秋元氏はまた、今後も「アーティストが鳴らしたかった音、スタジオで聴こえる音をありのままリスナーに伝える“原音再生”」を、JVCケンウッドが展開する全てのブランドの製品で探究していきたいと意気込みを語っていました。
ビクタースタジオでは、今後スタジオの音作りのノウハウを活かした商品に「Produced by」「Tuned by」「Made by」という各段階に分けたブランドを付けて、多彩なアイテムを手がけていく戦略も検討しているそうです。世界各地で圧倒的な人気と信頼を獲得している、日本を代表するブランドの躍進に期待しましょう。