台風の直撃で、いつもの農家から有機野菜が仕入れられなくなってしまった。慌てて他の有機農家をあたったが、開店までに間に合わない。オーナーに相談したら、「リスクヘッジがなってない!!」って怒鳴られてしまった。
というわけで、今回のテーマは「リスクヘッジ」です。どんな意味なのか、どんな時に使うのか、事例を交えて解説します。
■リスクヘッジとは
リスクヘッジ【riskhedge】という言葉は、「危険」という意味の【risk】と、「垣根・塀」を意味する【hedge】から成り立っている言葉で、直訳すると、「危険を回避するために垣根を作っておくこと」となります。
つまり、「リスクヘッジ」とは、起こりうるリスクに備えて、前もって対策を立てておくことを意味するのです。単に「ヘッジ」と呼ぶこともあります。
■リスクヘッジの使い方と事例
「資産運用におけるリスクヘッジ」
リスクヘッジは、もともと、資産運用において使われていた金融用語です。例えば、株式の投資を行う際に、投資先をひとつの銘柄に限定してしまうと、その会社の株価が下落したときに大きな損失が生じてしまいます。そこで、全投資額を複数の銘柄に分散して投資しておきます。株価が下がるところもあれば上がるところもありますので、損失を軽減することができるのです。
このように、資産運用におけるリスクをいかに軽減するかを考えて行う戦術を、金融業界ではリスクヘッジと呼びます。
「食品産業のリスクヘッジ」
主に金融業界で使用されることの多いリスクヘッジですが、今では、さまざまな分野のビジネスシーンでも使われるようになりました。
食品産業が行うリスクヘッジは、産地の分散です。近年、予測のつかない災害や異常気象によって、農業や漁業、畜産といったあらゆる食品産業の供給がままならない事態が多発しています。産地にこだわる事も戦術のひとつではありますが、一年を通して安定した供給を保つためには、産地を分散させることも大事なリスクヘッジと言えるでしょう。
「不祥事に対するリスクヘッジ」
異物混入やリコール、個人情報の流出など、企業は、さまざまなアクシデントや問題に直面する可能性を抱えています。こういった不祥事が実際に起きると、企業のトップ自らが謝罪会見を開くことが多いのですが、これは、不祥事が与えるダメージを最小限に抑えるための行動で、マニュアル化されているものです。
不祥事を隠すことで会社を守ろうとした企業もありましたが、それは逆効果です。対応策を間違えると、時に企業の存続すら危ぶまれる事態を招くことになりかねません。ビジネスシーンにおけるリスクヘッジは、リスクを無かったことにするのではなく、軽減することにあるということを念頭に、適切な対応策を用意しておきましょう。
「各種保険によるリスクヘッジ」
事故や災害、病気などの不測の事態に備えて保険に入ることも、リスクヘッジの一種です。
例えば、宝石店であれば、万が一の盗難に備えて商品に「盗難保険」をかけておくものです。運送会社であれば、貨物船の沈没や輸送トラックの事故などによる商品の損害に備えて、「運送保険」に入っているでしょう。また、ほとんどの企業が、自社の建物や店舗に「火災保険」をかけているはずです。
保険によるリスクヘッジは、個人にも該当します。医療保険や死亡保険、介護保険といった「生命保険」はもちろんのこと、「自動車保険」や「賠償責任保険」もリスクヘッジのひとつです。
ここで紹介した事例はほんの一部です。ビジネスシーンには実に多くのリスクが存在し、そのリスクの数だけ備えが必要です。備えあれば憂いなし。万が一の事態に備えて、適切なリスクヘッジを行うようにしましょう。