10月11日、アマゾンジャパンはスマートスピーカー「Amazon Echo」シリーズの最新モデルを国内向けに発表した。注目は、日本に初めて上陸する画面付きモデル「Echo Show」だ。

こうした、スマートスピーカーに画面を付け加えた「スマートディスプレイ」製品には、アマゾン以外にも参入が相次いでいる。日本ではまだまだ馴染みの薄い製品だが、果たして市場を切り開く存在になるのだろうか。

アマゾンが「Echo」シリーズの新製品を国内投入

1部屋に1台、スマートスピーカーという近未来

米国で2017年に登場した初代のEcho Showは、スマートスピーカーに画面を搭載した新しいデバイスだ。見た目はタブレットに似ているが、据え置きで使うのが特徴だ。

料理のレシピのように、読み上げよりも動画で見たほうが一目瞭然という用途において、音声での操作ができ、かつ動画を再生できるスマートディスプレイは非常に便利だ。ではタブレットとは何が違うか、というと、画面表示やタッチ操作は補助的なもので、あくまで音声での操作が主であるという点にある。

第2世代モデルの「Amazon Echo Show」

スマートディスプレイ市場は英語圏を中心に徐々に熱を帯びており、グーグルは2018年1月のCESでサードパーティと組んでスマートディスプレイに参入。さらに10月には自社製の「Google Home Hub」を投入した。Facebookもビデオ通話に特化した「Portal」を発表している。

いずれも英語圏向けの製品だが、アマゾンは7月に小型モデル「Echo Spot」を日本に投入。そして今回、10インチの画面を搭載したEcho Showの第2世代モデルを日本で発売するに至った。

Echo Showでは、新たに決済サービス「Amazon Pay」と連携したことで、音声だけで旅行のチケット手配や出前の注文ができるようになった。スマートホーム向けの機能がエンタメ機器にも対応しており、ソニーや東芝のテレビなどの音声操作も可能だ。

「Amazon Pay」との連携で音声だけで出前を取ることも

また今回、音声で使うアプリともいえる「Alexaスキル」の開発環境も強化。これまでのスマートスピーカーは音声だけで操作をしていたが、画面が加わったことで、開発手順は複雑化している。そこでさまざまな画面サイズに対応できる開発環境が必要になったというわけだ。

異なる画面サイズに対応したスキルを作りやすくなった

従来のスマートスピーカー製品もモデルチェンジし、小型の「Echo Dot」、温度センサーを搭載した「Echo Plus」の新モデルや、低音を楽しむサブウーファー(低音域のみを担当して再生するスピーカー)「Echo Sub」が加わった。複数台のEchoを連携させると、家中で同じ音楽を流すことも可能だ。

音声アシスタントに興味を持つ人はまだそれほど多くないものの、Alexaの便利さを理解した人なら、部屋ごとに1台、さらにはキッチンや洗面台などに置くためにどんどん買い増していけるラインアップといえる。

Amazonはハードウェアを売りたい訳ではない

画面付きのEcho Showが新しいジャンルの製品とはいえ、すでにタブレットやテレビを持っている人にとって、その存在意義は分かりにくいかもしれない。だが、アマゾンはその垣根も取り払おうとしている。

そこで打ち出してきたのが、Echo Showのような製品をサードパーティが作れる「Smart Screen SDK」だ。レノボはこれをAndroidタブレットに、ソニーはスマートTV製品に組み込むことで、タブレットやテレビをEcho Showの代わりに使えるという。

ソニーのスマートTVをEcho Showのように使える

これではEcho Showが売れなくなるように思えるが、アマゾンの目的はEchoというハードウェアを売ることではなく、Alexaを普及させることにある。EchoのライバルとなるようなAlexa対応機器をどんどん作ってもらいたいというわけだ。

「家電にAlexa」という提案、まずは電子レンジから

アマゾンが次に狙うのが、家電メーカーのさらなる取り込みだ。Alexaに関心を持つ家電メーカーは多いものの、家電製品ごとにアマゾンのクラウドと接続する通信機能を組み込むには、開発コストがかかりすぎる。

そこでアマゾンは通信に必要な部品をモジュール化し、容易に組み込めるキットとして売り出した。米国ではアマゾン自身がその活用例として、安価な電子レンジ製品を発表している。

米国でアマゾンが発表した電子レンジ「AmazonBasics Microwave」

アマゾンが描き出すスマートホームの姿は、家庭内のあらゆる機器が音声操作に対応し、Echo ShowやEchoシリーズのスマートスピーカーを通してアクセスできるというものだ。グーグルやLINEも同じビジョンを持っている中で、スマートディスプレイの国内展開ではアマゾンがリードすることになりそうだ。

(山口健太)