周期的にやってくる生理は女性にとって辛いもの。特に生理痛のひどい女性の場合、内臓が悲鳴を上げているかのように痛み、仕事や家事を普段通りにこなすのは困難と言える。ただ、いつも自分の中で把握しているタイミングより生理が早まったり遅れたりすると、それはそれで気になるというのが多くの女性の本音ではないだろうか。
初潮から閉経まで、一般的に数十年にわたり女性は生理と付き合っていかねばならないため、きちんとその仕組みを理解しておくことは自身のQOL向上にもつながる。そこで今回は、産婦人科専門医の船曳美也子医師に生理不順の原因などについてうかがった。
生理の周期をチェック
生理は約4週間(25~38日)を一つのサイクルと考え、その周期は「卵子が育って排卵するまでの時期」と「排卵してから次の生理までの時期」に分けられる。この周期にはエストロゲンとプロゲステロンという女性ホルモンが大きく関与しており、一般的には下記のようなサイクルで生理が行われている。
生理後1~2週間
生理から排卵まで、卵子が育つにつれてその周りの細胞からエストロゲンが分泌される。エストロゲンは排卵をコントロールする働きがあり、生理からおよそ2週間後にその分泌量がピークとなる。エストロゲンは肌のハリや髪の艶に好影響を及ぼすため、この期間中は「女性らしさ」が増すのが一般的だ。
生理約2週間~3週間後
排卵が終了するとエストロゲンの量は減少し、もう一方のプロゲステロンの分泌量が増えてくる。このプロゲステロンの量が増えていくのに伴い、生理痛や頭痛、肩こりなどといった身体面の不調が現れるようになってくる。生理前1週間前後に最もプロゲステロンの影響が強く出てくるが、徐々にその分泌量は減っていく。
「生理から排卵まで増えるエストロゲンは、子宮の内膜を分厚くさせます。分厚くなった内膜は排卵後のプロゲステロンにより、『ふわふわのふとん』のような膜に変わります。こうすることで、受精卵が着床しやすくなるのです。排卵後、卵子が出た袋は黄体になりますが、 妊娠したら黄体はそのまま保たれ、妊娠しなければ黄体は消えて再び生理が始まります」
極端なダイエットは生理不順を招く
正常な生理の周期は25日から38日間と考えられている。だが、さまざまな要因でこの範囲から外れてしまうのが生理不順だ。生理が不定期になる原因は「何らかの一時的な理由」「病気」「加齢」がある。
「原因が病気にある場合は、婦人科で治療したほうがよいでしょう。一時的に不順になる原因としては、『ストレス』『食生活の乱れ』『睡眠不足』が挙げられます。ストレスを低減させたり、食生活を改善したりすることが重要ですが、特に原因として多いのが極端なダイエットです。BMIは18.5を切らないようにし、やせるときも1カ月で1~2kgまでにしたほうがよいでしょう」
食事や睡眠などの生活習慣は自身の努力で改善できるが、加齢による生理不順対策はなかなかに厄介だ。加齢に伴い卵子が減ってくると、卵巣を刺激すべく、脳からの卵巣刺激ホルモンが増加する。すると、卵胞が早く育ち、排卵のタイミングが早くなるため、おのずと生理周期も短くなる。
一方で卵子が減ると、卵胞はなかなか育たないため、生理周期が長くなる。つまり、生理が来る時期が早くなったり、遅くなったりとまちまちになる可能性があるという。
「加齢による生理不順については、その時期を少しでも遅らせるために『たばこを吸わない』『寝不足にならない』『ストレスをためない』といったことが大切になってきます。食生活も関係してくるため、緑黄色野菜やビタミンDを日ごろから摂取するように心掛けてください」
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取材協力: 船曳美也子(フナビキ・ミヤコ)
1983年 神戸大学文学部心理学科卒業、1991年 兵庫医科大学卒業。産婦人科専門医、生殖医療専門医。肥満医学会会員。医療法人オーク会勤務。不妊治療を中心に現場で多くの女性の悩みに耳を傾け、肥満による不妊と出産のリスク回避のために考案したオーク式ダイエットは一般的なダイエット法としても人気を高める。自らも2度目の結婚、43歳で妊娠、出産という経験を持つ。2014年、健康な女性の凍結卵子による妊娠に成功。出産に至ったのは国内初とされる。著書に、「婚活」「妊活」など女性の人生の描き方を提案する著書「女性の人生ゲームで勝つ方法」(2013年、主婦の友社)、女性の身体について正しい知識を知ってもらえるよう執筆した「あなたも知らない女のカラダ―希望を叶える性の話」(2017年、講談社)がある。En女医会にも所属している。
En女医会とは
150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加している会。さまざまな形でボランティア活動を行うことによって、女性の意識の向上と社会貢献の実現を目指している。会員が持つ医療知識や経験を活かして商品開発を行い、利益の一部を社会貢献に使用。また、健康や美容についてより良い情報を発信し、医療分野での啓発活動を積極的に行う。En女医会HPはこちら。