シニアの課題は、ポストオフ後、いかにスキルを発揮するか
制度としては整った形だが、現場ではいくつかの課題があるという。その1つは、明確な貢献度やスキルが評価しづらいバックオフィス系の業務に対する評価だ。これについては、現時点では通常の評価制度の基準のみで評価している。それ以上に大きな課題は、スキルや貢献度によって評価されることになるシニアが、実際にいかに活躍するかということだ。
「定年後は原則、ポストオフします。それまで管理職としてマネジメント業務をしていた人も、そういう業務からは遠ざかるわけです。今後は30代、40代のうちから将来を見据えて専門性を磨き続けるなど、これまでとは異なる努力が必要となります。会社としてもしっかり支援していきたいと考えています」と語るのは、SCSK 人事グループ 人事企画部 人事課 課長の加々美充男氏だ。
高いスキルを持った人材に第一線で活躍してもらいたいというメッセージを含んだ新制度は、従来の再雇用のように「引退後の道」というイメージはない。
「1月から3月にかけて社内全体に対し説明会を開きましたが、シニアとして前向きに活躍してほしいというメッセージは伝わったと思います」と加々美氏。
「マネジメントを担当していた人に、いきなり現場で活躍してくれというのは難しいと思います。そのため、マネジメント補佐のような立場で育成に回っていただくこと、事業企画のような分野で活躍してもらうことも考えています。また、今後は、ポストから早めに外れて定年後の準備をする期間を設けるような取り組みも必要になるかもしれません」と高山氏も語る。
現役世代こそ、先を見据えて自分の市場価値を考えたい
2018年7月を境に、既存の再雇用社員もすべてシニア正社員へと雇用形態を移行し、また、専門性認定手当についても初回支給が2018年6月と、同時期にスタートしたばかり。
特別にスキルのある人は既に追加報酬を得ているが、多くのシニアはそれほど変化を感じていないだろう。この制度に注目しなければならないのは、これから対象者となる現役世代だ。
「自分のこととして考えると、親世代と同じ感覚ではいけないと感じています。年齢で区切って、そこで働くのは終わりということではなく、続けていかなければならない。自分の市場価値を高めていかなければならないことでもあり、少し焦りもあります」と高山氏。
一方、加々美氏は「これまでは再雇用というと、60歳をゴールとして第一線から退くようなイメージもありましたが、シニア正社員制度によって、60歳を過ぎても第一線で働けるという前向きなイメージができました。シニアがコア人材になれる環境を整えられたと考えています」と語る。
現役世代に早い段階から、定年後の資金繰りだけでなく活躍できる人材になることを意識させる新制度で、SCSKは加速する高齢化社会における人材不足に対応する環境を整えた。今後、企業成長の鍵となるシニア世代の活躍を促進する、好事例といえそうだ。