日本マイクロソフトは2018年10月10日、都内でプレスブリーフィングを開催し、Microsoftが米国時間10月2日に発表したSurfaceシリーズの新製品を日本市場でも展開することを改めて説明した。「Surface Pro 6」「Surface Laptop 2」は全国量販店やMicrosoft Storeで予約を受け付け中で、10月16日の発売。
注目が集まる「Surface Studio 2」は2019年1月発売予定。「Surface Headphones」は2019年の早期発売を予定しているという。Microsoftの担当者は「もの作りに忍耐強く取り組んできた。(最新のSurfaceシリーズは)妥協せず完璧だ」(Microsoft CVP Chief Product Officer, Panos Panay氏)と4製品をアピールした。
Surface Pro 6ブラックモデルに惹かれるものの……
Surface Pro 6およびSurface Laptop 2は、2018年10月3日の時点で日本マイクロソフトが価格や販売時期を[発表](https://news.microsoft.com/ja-jp/2018/10/03/181003-new-surface-devices/)しており、新しい情報はさほどないと思われていた。Surface Pro 6やSurface Laptop 2に関する情報は先のリンクと重複するため詳細は割愛するが、第8世代Intel CoreプロセッサーはQuad Coreモデルが加わるなど、パフォーマンスという文脈ではなかなか魅力的な存在である。
実際に、New Surface Proとの比較では約67%、Surface Laptop対Surface Laptop 2では約85%のパフォーマンス向上を実現した。さらにカラーバリエーションとしてブラックが加わったのは、魅力の1つに数えても構わないだろう。筆者はクラムシェル型ノートPCであればThinkPad一辺倒だった過去があるため、仮にSurface Pro 6を購入するのであればブラック一択となりそうだ。
パフォーマンスの向上は目覚ましいSurface Pro 6も、USB Type-Cなど新テクノロジーの採用には消極的である。この点についてMicrosoftは、「USB Type-Cはよい技術だが課題も多い。個人・法人の利用者は(Surfaceシリーズに)一貫性のある体験を求めている」(Panay氏)と理由を説明した。
現在、New Surface Proのユーザーなら、今回のSurface Pro 6に乗り換えるメリットは少ないのだが、少々気になるのが価格設定だ。最下位モデルはCore m3ではなくCore i5に変わり、メモリーも4GBから8GBに増えた。ただしストレージはSSD 128GBのままだ。
価格面も相違があり、New Surface Pro(Core i5・メモリー4GB・SSD 128GB)の税別参考価格は12万6,800円(法人向けは11万4,800円。いずれも税別参考価格)だが、Surface Pro 6(Core i5・メモリー8GB・SSD 128GB)は11万9,800円(法人向けは11万4,800円)と安価になっている。また、個人向けモデルはHomeエディション+Office Home & Business 2016、法人向けはProエディションだが、価格差は昨年よりも縮まっている。
こうした違いを踏まえると、手持ちのNew Surface Proを譲ったりして自身は新モデルを使うユーザー、もしくは、昨年(2017年)のNew Surface Proを見送ったユーザーに、Surface Pro 6は、お得な選択肢となる。
他方でSurface Laptop 2は、初代モデルと異なり、当初から法人向けを用意しているのが目新しいポイントだ(プレスリリースを確認すると、2017年5月の時点で法人モデルの価格は未発表だったが、日本マイクロソフトは後日に法人展開を開始している)。
多面的な活動に活躍するSurface Headphones
2017年5月に開催したNew Surface Pro発表会では、周辺機器「Surface Dial」が注目を集めた。そして今回も、Surface Headphonesという新たな周辺機器がラインナップに加わったが、まずはSurface Studio 2が2019年1月に日本市場へ投入されることを紹介したい。Panay氏のプレゼンテーションによれば、ディスプレイのコントラストは前モデルと比較して22%、鮮やかさは38%向上している。GPUもPascal世代のNVIDIA GeForce GTX 1060・1070が選択可能。GTX 1080を用意しないのは価格設定が向上するのを避けたためだろう。
今回発表されたのは発売予定時期のみで、価格は見送られたが、前モデルの税別参考価格は一般向けで38万4,800円から52万9,800円。今回も同等の値付けをすると思われるため、個人ユーザーが気軽に手を出せる価格帯ではない。筆者もプレゼンテーションや実際のタッチ&トライで一瞬食指が動いたが、正直なところ自作PCでハイエンドモデルを構築し、タッチ体験を得られる環境はSurface Pro 6などを別途用意した方が安価に感じられる。もちろん一般的なディスプレイはキャンバスモードで使えないのだが……。
さて、今回の発表会で強くお伝えしたいのが、Surface Headphonesの存在。発売予定は2019年の早期とまだ先だが、ヘッドホンの選択肢に加えるべきだと感じた。実際に装着し、13段階のアクティブノイズキャンセリング機能(NC)を試したところ、となりで会話をしているライター諸氏の声はほとんど聞こえず、NCの効き具合を中段階ほどに変更すれば、音楽と周りの会話がちょうどよく聞こえてくる。
その他にも、ダイヤル操作によるボリューム調整や、タップ操作による楽曲のスキップ・リバースが行えることを確認した。今回は試していないが、Cortana経由のスケジュールリマインドや、今後はMicrosoft Teamsに集約されるであろうSkype for Businessによるビデオ通話にも便利そうだ。“かさ張り具合”も、ハウジングとイヤーパッド部分が90度回転するので神経質になるほどではない。Panay氏はSurface Headphonesを職場や自宅といったカテゴリーで分類せず、「創造性にフォーカスした。仕事場と自宅の生活は近く、上下はない」と語っていた。
Panay氏による一連のプレゼンテーションで印象に残ったのは、もの作りへのこだわりだった。日本の職人的執着や気質が称賛させる価値観だが、Microsoftは「もの作りにおいて日本の文化は重要だ。(仕事や創作的活動において)技術が表層に浮き出してはいけない。私の娘がピアノを弾くとき、ピアノが人に寄り添うと同時にバックグラウンドへ溶け込む。Surfaceシリーズを使うことで、最高の創作的能力を発揮するワークスタイルとライフスタイルに変革をもたらす」(Panay氏)と、Surfaceシリーズに流れる開発への姿勢を語った。
なお、米国で発表したSurfaceやWindows 10のサブスクリプションモデルである「Surface All Access」について、日本マイクロソフトは時期は未定ながらも、日本でも具体的展開を検討しているという。また、New Surface Pro発表時に明らかにしたLTEモデルも時期は未定だが、前モデルやSurface Goのことを考えると、いずれ市場に投入される可能性は高いだろう。自身の使用スタイルに合った、最適なモデルを選んでいただきたい。
阿久津良和(Cactus)