米労働省が2018年10月5日に発表した9月雇用統計の主な結果は、(1)非農業部門雇用者数13.4万人増、(2)失業率3.7%、(3)平均時給27.24ドル(前月比0.3%増、前年比2.8%増)という内容であった。

(1) 9月の米非農業部門雇用者数は前月比13.4万人増と、市場予想の18.5万人増を下回る伸びにとどまった。ただ、前月分が27.0万人増へ、前々月も16.5万人増へと上方改定(改定前はそれぞれ 20.1万人増、14.7万人増)された事から、3カ月平均は19.0万人増と、引き続き高水準にある。なお、今回の減速については、ノースカロライナ州やサウスカロライナ州を襲ったハリケーン「フローレンス」の影響が出たとの見方もあるようだ。

(2) 9月の米失業率は3.7%と、前回から0.2ポイント低下して1969年12月以来、48年9カ月ぶりの低水準を記録。市場予想(+3.8%)を上回るペースで改善した。なお、労働参加率は前月から横ばいの62.7%であった。また、フルタイムの仕事を望みながらもパート就業しかできない人なども含めた広義の失業率である不完全雇用率は7.5%となり、約17年ぶりの低水準を記録した前月からわずかに上昇した。

(3) 9月の米平均時給は27.24ドルとなり、前月から0.08ドル増加して過去最高を更新。伸び率は前月比+0.3%、前年比+2.8%で、いずれも市場予想どおりだった。なお、前年比で約9年ぶりの高い伸びを記録した前回(+2.9%)からわずかに減速したが、過去1年間の平均上昇率(2.65%)は上回った。

米9月雇用統計は、非農業部門雇用者数の増加幅こそ予想に届かなかったが、失業率が歴史的低水準に改善し、平均時給も予想通りに高めの伸びを示した。全体としてみれば良好な結果と言えるだろう。雇用統計発表後には、物価上昇圧力が高まるとの見方が広がり、米10年債利回りは2011年以来約7年ぶりに3.24%台へと上昇した。

一方で、2日前に史上最高値を付けていたNYダウ平均株価は、長期金利の上昇を嫌気して前日比180ドル下落。また、ドル/円が114円台を維持できずに113円台へと押し戻されるなど、ドルも主要通貨に対して下落した。比較的良好な米雇用統計が、米債安(金利上昇)、米株安、米ドル安の「トリプル安」を誘発してしまった格好だ。

こうした市場反応は、投資化の短期的なポジション調整の影響が大きかったと見られるが、気がかりな動きではある。米連邦準備制度理事会(FRB)による12月利上げが確実視される中、今後も長期金利の上昇が続く可能性があるだけに、金利と株価の関係や、金利とドルの関係をこれまで以上に気にかけておきたい。

執筆者プロフィール : 神田 卓也(かんだ たくや)

株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Twitterアカウント:@kandaTakuya