日本の洋酒文化を切り拓いたサントリー創業者・鳥井信治郎……今や誰もが知っている大企業の創業者である彼をモデルに、伊集院静が書いた小説『琥珀の夢 小説 鳥井信治郎』が、テレビ東京で実写ドラマ化。日経ドラマスペシャル『琥珀の夢』(10月5日 21:00〜)は、俳優・内野聖陽が、鳥井をモデルにした主人公・鳴江萬治郎を演じ、明治・大正・昭和と3つの時代にまたがった壮大な”夢”の行方を描き出す物語となっている。
今回は、主演の内野にインタビュー。作品の見どころや、現代社会の中で思う「やってみなはれ」精神の大切さなど、仕事論にも通じる内野の話を聞いた。
生命力を感じた
――3時代にもまたがり、全体を通して濃い内容だと思ったのですが、内野さんが作品を観られた時の感想をお聞かせください。
ここまでの時代に渡っているテレビドラマはなかなかないんじゃないかな、と思いました。ただ自分としては出ずっぱりだったので、あまりのシーン数の多さに、不安もありました(笑)。1日2〜3回メイクチェンジをして、若いときをやったり、老けたときをやったりないまぜになっていたので、ワンシーンワンシーン、丹念に撮っていくんだけど、ちゃんと並べた時に力のある作品になるのかなぁなんて不安を感じることはありましたね。
だから、実際に観た時は「さすが監督! さすが編集マン!」って思いました(笑)。狙っていた経年変化も、うまくいっていました。あと観ている方がどう感じ取られるか、ものすごくユニークで周りを引っ張る牽引力がある男の一代記を、どういう風にご覧になるか、とても興味があります。とにかく一番感じたのは、生命力、バイタリティというか。ピンチや苦境に陥っても、絶対に負けない魂がある人なんだなと、改めて感じました。
――萬治郎のように、突き進む部分は内野さんにもあるんですか?
こんなにすごく先見の明があって、みんなを巻き込んで突き進むようなことはないんですけど、「自分の感覚だけを信じて生きていこう」という部分はちょっとだけ重なるかな。今まで、そうやって生きてきた部分はあります。
強いメッセージが集約された
――演じられてみて、萬治郎の魅力はどのようなところにあると思いましたか?
いっぱいありました。萬治郎は会社のトップであるけど、彼にとっては会社という枠組みじゃないんですよね。本当に家族みたいな触れ合いで、実際のお話を聞いてもそうらしいのですが、病気になっている社員がいたり、社員の親戚が困っていたりしても手を差し出してあげたり。自分を「社長」ではなく「大将」と呼ばせて、人としてみんなと接していたのではないかと思います。それくらいみんなが付いていきたくなるような人なのが、すごいと思いました。
1番好きなのは、やっぱり「やってみなはれ」という精神ですよね。今の時代、いろいろ情報を得られて、いろんなケーススタディができる。そうすると、まず「やってみる」ということに対しての1番大事なエネルギーが弱まってしまうんじゃないかなと思ってて。まず「やってみなはれ。やってみなぁ、でけるかでけへんかわからしまへんやろ」という台詞が大好きで、「そうだよね」と思います。
やりたいことがあるのに、いろんな情報があるから、びびったり、怖気づいたりして、大事な大事な第一歩が踏み出せない人が多いんじゃないのかなと思うんですよ。この作品が尊いのはそこで、「まず、やってみなはれ」という力強いメッセージが集約されているのだと思います。