パナソニックは10月2日、集中力を高めるウェアラブル端末「WEAR SPACE」の開発・事業化を目指したプロジェクトを立ち上げ、同社が企画・デザインしたプロダクトで初となるクラウドファンディングを開始しました。

  • WEAR SPACE

    こちらが集中力を高める手助けをしてくれるウェアラブルデバイス「WEAR SPACE」

昨今、多くの企業が取り組んでいる働き方改革。オフィスのフリーアドレス化や風通しのよいオープンなレイアウトによる、活発なコミュニケーションが重視される一方、集中して作業にあたれる場所や環境に対するニーズも高まってきました。他人の会話や雑音、動きによって集中を乱されることを防ぐべく、どんな場所でもパーソナル空間を創り出せるのが「WEAR SPACE」です。

どこにいても「自分の空間」を創り出す

WEAR SPACEは、パナソニックの家電デザイン部門で先行開発を担当するFUTURE LIFE FACTORY(以降、FLF)が企画・デザインした新コンセプトのウェアラブルデバイス。その見た目は非常にユニークかつエッジの効いたものとなっています。ノイズキャンセリング機能を搭載したヘッドホンと、装着した人の視界を狭めるパーテーションで構成されており、周囲の雑音を低減しつつ不要な視覚情報を遮ることで、カフェやオープンスペースの中にいても瞬時にパーソナル空間を生み出せます。

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    WEAR SPACEを装着してPC作業を行うとこんなイメージに。装着者が作業に集中できるのはもちろん、周囲の人に「彼は今集中したいんだ、話しかけない方がいいな」と伝わる効果も

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    WEAR SPACEの特徴的なファブリックパーテーションは、たとえるなら競走馬のブリンカーのようなもの。余計な情報をカットしてくれる

プロジェクト始動に際し、FLFでデザイナーを務める姜花瑛(カンファヨン)氏は、WEAR SPACEの特徴を5つ紹介。1つ目は、ファブリックパーテーションによって水平視野を約6割狭め、目の前の作業に集中できること。2つ目は、周囲の雑音を低減するアクティブノイズキャンセリング機能を搭載していること。3つ目は、Bluetoothに対応し、スマホやプレーヤーとペアリングしてお気に入りの音楽をワイヤレスで再生できること。4つ目は、快適さを追求した装着スタイルであること。5つ目は、装着しているだけで「作業に集中しているぞ」と周囲に伝わるデザインとなっていること。

コアターゲットはエンジニアやWebデザイナーといったデスクワーカーを想定しているそうですが、このほかスポーツで選手が本番前に集中を高めるといった、幅広い人々の「集中したい!」ニーズに合致するのではと語りました。

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    パナソニック株式会社アプライアンス社デザインセンターFUTURE LIFE FACTORYでデザイナーを務める姜花瑛氏

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    WEAR SPACEは、東京ミッドタウンなどで体験可能

実際にWEAR SPACEを装着してみると、周囲の雑音がほどよくカットされ、短時間でフラットな精神状態になれそう。また、ファブリックパーテーションによって前方だけに意識を注げるため、PC操作であればモニターと自分だけが相対しているかのような作業環境を得られるでしょう。会場では試せませんでしたが、Bluetoothを利用して音楽も聴けるため、手軽に「自分の世界」に没入できるのではないかと感じました。

ちょっと重そうに見えるWEAR SPACEですが、約330gと軽量。首や肩の負担もさほど感じず、長時間の使用でも問題なさそうです。ノイズキャンセリング機能なら約20時間、音楽を再生しても約12時間のバッテリーライフを有しているので、たとえば海外への長時間にわたるフライトのお供に、なんて利用シーンも想像できました。

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  • 写真左は右側面から、写真右は後方からWEAR SPACEを捉えたところ

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  • WEAR SPACEは、耳当て部分とその上部に配されたガイドで顔に装着する。写真右は裏側の様子

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    重さは約330g。ファブリックの手触りは心地よく、色味は余計な情報を生まないシンプルなもの

大企業が苦手とする「0から1」を生み出す

2018年4月に設立された株式会社Shiftallとの合同プロジェクトであることも注目されています。Shiftallの代表取締役CEOの岩佐琢磨氏は、パナソニックを経て、株式会社Cerevoを起業。そして2018年にパナソニックのグループ会社として、Shiftallを設立しました。

Shiftallは、大企業でもその有用性に白羽の矢が立てられている「アジャイル手法」(短い開発期間単位を採用し、リスクを最小化すること)により、製品の設計・開発から販売・サポートまでを一気通貫で行います。岩佐琢磨氏は、パナソニックとShiftallが手を組むことで、大企業が苦手な「0から1を生み出し、まったく新しいプロダクトを迅速に世に送り出す」ことができるといいます。

クラウドファンディングは、カルチュア・コンビニエンス・クラブが運営するクラウドファンディングサービス「GREEN FUNDING」の力を借り、広く出資を募ります。支援金の募集期間は10月2日から12月11日で、調達目標額は1,500万円。目標額を達成できない場合は、集まった資金を全額ユーザーへ返金する「All or Nothing」方式というチャレンジングな取り組みとなっています。支援額は28,000円(税込)からで、出資者への製品配送は2019年8月となる見込みです。

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    「GREEN FUNDING」のWebサイト。支援者や支援金額は原稿作成時のもの

オープンな環境で、活発にコミュニケーションをとる重要性もわかる。でも、誤りの許されない数字合わせのような作業においては、誰にも邪魔されたくない。パーソナルな空間を手軽に生み出せるWEAR SPACEは、勉強に集中したい学生や仕事に打ち込みたいビジネスパーソンなど、さまざまな人にメリットを提供することができそうですね。