外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏が2018年9月の為替相場レビューと、今後注目の経済指標やイベントをもとにした今後の相場展望をお届けする。
【ドル/円 9月の推移】
9月のドル/円相場は110.380~113.700円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約2.3%の上昇(ドル高・円安)となった。米中貿易戦争への懸念や新興国経済への不安に加え、日米間でも貿易摩擦問題が再燃するとの懸念が重しとなり上旬は上値が重く推移。しかし、7日の米8月雇用統計で賃金の伸び加速が確認されると、米長期金利の上昇とともにドル買い・円売り優勢に転じた。
24日には米国が中国製品2000億ドルへの関税を発動し、中国も同時に600億ドル相当の米輸入への報復関税を発表したが、事前報道などで織り込まれていたため市場に混乱は見られなかった。ドル/円は、下旬にかけてもじり高基調が続き、26日の米連邦公開市場委員会(FOMC)や日米首脳会談(2国間の物品貿易協定の交渉開始と引き換えに米国による自動車関税の発動を回避)を経て、28日には113.70円前後まで上昇して年初来高値を更新した。
【ドル/円 10月の見通し】
10月はドル高・円安が進みやすいという「ジンクス」がある。本邦の機関投資家らが、下半期入りでいわゆる「外モノ」への投資を増やす傾向があるとの見方などがその背景にあると考えられている。なお、ドル/円は昨年まで7年連続で10月の月足が陽線引けとなっており、この間の平均上昇率は約1.6%を記録している。今年も、9月末時点で1月に付けた年初来高値(113.385円)を更新しているだけに、10月は連続月足陽線記録を8年に更新して続伸する展開を期待したい。
米国の政策金利であるFFレートの誘導目標は9月25・26日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で2.00-2.25に引き上げられており、すでに先進国の中では最高水準にある。日米金利差は今後も拡大する公算が大きい。また、昨年10月に、月100億ドルのペースでスタートした米連邦準備制度理事会(FRB)によるバランスシートの圧縮(保有債券残高の削減)は、着々と圧縮額を増やし、今月からは月500億ドルに引き上げられる。インフレが目標の2%を超えるまで円資金の供給継続を約束している日銀との政策ギャップは、金利だけでなく量の面でも一段と拡大する事になる。もっとも、こうした金融政策のギャップに市場が関心を寄せるのは、市場に大きな混乱が生じない「平常モード」においてこそだろう。米中貿易戦争の戦況の他、英国と欧州連合(EU)の離脱協議や、イタリアの予算案を巡るEUとの協議の行方にも注目しておきたい。
【10月の日米注目イベント】
執筆者プロフィール : 神田 卓也(かんだ たくや)
株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Twitterアカウント:@kandaTakuya