この数年、メーカーが発表する最新オーブンレンジはとにかく高性能。とくに、プレミアムモデルは過熱水蒸気を使い「水で食材を焼く」機能がほぼ標準で搭載されています。オーブンレンジといっても「レンジ」「オーブン」「蒸し」、ものによっては「グリル」までできるのが特徴です。とはいえ、高機能な製品はもちろん価格もプレミアム。そんななか、アイリスオーヤマは9月27日に「スチーム流水解凍オーブンレンジ」を発表しました。直販価格は49,800円(税別)で、10月22日に発売します。
電子レンジでの解凍は失敗も多い
スチーム流水解凍オーブンレンジは、蒸し調理もできる高機能なスチームオーブンレンジでありながら、49,800円(税別)と比較的リーズナブルな価格。スチーム、レンジ、オーブン、グリル機能を備え、庫内容量は24Lと、2人~3人の少人数世帯に最適なサイズです。最大の特徴は名前にもある通り、スチームによる「流水解凍」レベルの解凍ができる点でしょう。
肉や魚を冷凍保存する家庭は多いと思いますが、問題となるのは解凍方法。一般的に、素早く手軽に解凍できるのは電子レンジで、今は低価格な電子レンジでも「解凍」モードを搭載しています。とはいえ、解凍モードに対する不満は多く、なかでも最大の不満は「加熱ムラ」。
食材の一部に火が通ってしまっている、あるいは一部がカチカチに凍結したままという問題です。豚ひき肉など、解凍したあとに加熱調理する食材ならガマンもできますが、刺身のように「生のまま食べる」食材だとかなり困ります。このため、過熱を防ぎたい生ものは半日以上かけて冷蔵庫で解凍するか、水道水を使った流水解凍がほとんどです。
流水解凍は水を出しっぱなしにするので水道代が気になりますし、食材が水道水で濡れないよう気を遣う必要もあります。このため、流水解凍は手軽な解凍方法といえません。アイリスオーヤマのスチーム流水解凍オーブンレンジは、今まで電子レンジのネックだった「食材の解凍」にこだわっています。
特別な容器で食材をスチーム温め
解凍モードでは、自動メニューの「スチーム流水解凍」から、「刺身」「薄切り肉」「ブロック肉」のいずれかを選択し、食材のだいたいの重さを入力します。本体に重量センサーは搭載されていないので、食材の重さは自分で量る必要があります。スチーム流水解凍オーブンレンジを試せる会場で、マグロ柵の刺身を解凍してみましたが、刺身解凍は100gで25分ほどかかるようでした。
スチーム流水解凍モードでは、最初にオーブン機能を使って庫内を温め、そこからスチームで食材をじわじわと加熱して解凍します。おもしろいのが、解凍には必ず付属の小さい洗面器のような深皿を使用すること。深皿のフチが庫内横から吹き出すスチームを遮り、食材全体を均一に温めます。庫内で吹き出すスチームは80度~90度ほどあるらしいのですが、この深皿のおかげで食材は40度~50度ほどの温度で温められるといいます。このため過熱の心配はありません。
実際に25分ほどかけて解凍したマグロの柵をチェックしてみると、刺身の中心は軽くシャリっとしているものの、力を入れれば簡単に指の跡がつくレベル。包丁でサクサク切れる「パーシャル冷凍」より、少し柔らかめの感触でしょうか。刺身は完全に解凍するとグニャグニャして切りにくいので、ほどよい硬さが残る解凍具合は個人的に満足です。
意外だったのは、ドリップが非常に少ないこと。通常、急速解凍をすると食材から液状のドリップが発生するものです。スチーム流水解凍で解凍したマグロは、ラップにスチームの水滴はついていたものの、血が混じる刺身のドリップはかなり少ないと感じました。ドリップが流出すると旨味も逃げるので、ドリップの少なさはかなり魅力的。とくにお取り寄せグルメを楽しむ家庭には、うれしいポイントだと思います。
解凍以外の基本性能もなかなか
スチーム流水解凍オーブンレンジは解凍だけでなく、前述したようにスチーム、レンジ、オーブン、グリルと4種類の調理に対応しています。スチームはカセット給水方式で、カセットに水を入れてボタンを押すだけで、茶わん蒸しやプリンなども調理可能。蒸し調理は温度管理が難しいうえ、蒸し用の調理器具は場所をとるため、電子レンジのようにボタン一つで蒸し調理ができるのはありがたく思います。
また、電子レンジ機能も最大出力が1000W(自動メニューのみ)とパワフル。手動設定でも、600Wから100Wまで5段階で切り替え可能です。オーブンは35度と40度の発酵モードのほか、100度から250度まで温度を設定できる標準的なスペック。グリルは上下のヒーターそれぞれで680Wの加熱が可能だといいます。
残念ながら会場では、スチーム流水解凍のほかにデモンストレーションがなかったので、オーブンの焼きムラなどの実力はわかりませんが、スペック的には総菜の温めから蒸し料理、お菓子やパン作り、グラタンに焼き目をつけるといった幅広い用途で使えそうです。これだけ充実した機能で、価格が48,000円(税別)という点から、非常にコストパフォーマンスが高いと感じました。