女優の永野芽郁がヒロインを務めるNHK連続テレビ小説『半分、青い。』(毎週月~土曜8:00~)が、いよいよ今月29日に最終回を迎える。このたび、全156回を書き終えた脚本家の北川悦吏子氏にインタビュー。全6回の短期連載として掲載する。
第5回は、ヒロイン・鈴愛の師匠である少女漫画家・秋風羽織を演じた豊川悦司について。北川氏と豊川は、大ヒットドラマ『愛していると言ってくれ』(TBS・1995年)でタッグを組んだ旧知の仲で、今回が『Love Story』(TBS・2001年)以来、17年ぶりのタッグとなった。
“秋風ロス”という言葉が飛び交うほど人気となった秋風は、北川氏にとっても思い入れが強いキャラクターに。そして、演じた豊川の変わらぬストイックさに驚かされという。また、豊川から「還暦になるまでにもう1本やろうよ」と言葉をかけられたことも明かしてくれた。
――心に響く名言とともに秋風羽織は多くの人に愛されるキャラクターになりましたが、秋風羽織への思いをお聞かせください。
秋風羽織に関しては大変思い入れが深く、自分が創作について思っていることをすべて彼が代弁してくれるようなキャラクターでした。自分では強く言い切れないんだけど、秋風羽織というビジュアルを借りれば言えるのかなと思いました。
――そして、豊川悦司さんの名演が光りました。
私と豊川さんは『愛していると言ってくれ』というドラマで出会いましたが、相当大変な思いをしてあの作品があるんです。それくらい豊川さんは作品にのめり込むし、役にのめり込む方。あの時は手話も完璧でしたし、画家の役だったのでパリに行って絵を描いてきたらしいし、よくそこまでやるなっていうくらいの入れ込みようだったので、私も寄り添いたいなと。彼の思うことを聞きながら作れればいいなという経験を『愛していると言ってくれ』でしました。
今回はさすがに朝ドラだし、お互い50過ぎているし、その熱はないだろうと軽く見てたらまったく衰えていなくて、同じようなテンションで「僕はこう思う」「僕はこうしたい」って、「でも、私はこう思う」「それはどうなの?」なんてやりあいながら、一緒に秋風を作り上げた感じでした。人って変わらないんだなって思うと同時に、だからこそすごい人気となった秋風羽織はできたんだろうなと。とても振り切ってやっていただけたと思います。もちろんセリフも全部入っていたし、家に帰る時間がもったいないということで近くのホテルに泊まられて集中力を途切れないようにされていたり、相変わらずの豊川悦司だなと思いました(笑)
――終わった時はどんな会話をされましたか?
「北川さん、還暦になるまでにもう1本やろうよ」っておっしゃって、まだ懲りてないのかと(笑)。でも、私もそれに応えられる体力を持たなければと思いました。その言葉はうれしかったですね。
北川悦吏子
1961年12月24日生まれ、岐阜県出身。脚本家・映画監督。1992年に『素顔のままで』で連続ドラマデビュー。主な作品に、社会現象となった『愛していると言ってくれ』『ロングバケーション』、そして、『ビューティフルライフ』、『オレンジデイズ』など。2009年には、映画の世界にも進出し、脚本監督作品に『ハルフウェイ』『新しい靴を買わなくちゃ』。また、エッセイや作詞などでも人気を集める。NHKでの執筆は、2016年ドラマ10『運命に、似た恋』が初。NHK連続テレビ小説『半分、青い。』が2作目となる。
北川悦吏子氏の写真=撮影:萩庭桂太 場面写真=(C)NHK