女優の永野芽郁がヒロインを務めるNHK連続テレビ小説『半分、青い。』(毎週月~土曜8:00~)が、いよいよ今月29日に最終回を迎える。このたび、全156回を書き終えた脚本家の北川悦吏子氏にインタビュー。全6回の短期連載として掲載する。
第4回は、ヒロイン・鈴愛の幼なじみ・律を演じた佐藤健について。律というキャラクターは、書いている中でゆらゆらしたまま進み、幅のある役になったという。そして、「それがよかったのかな」と北川氏。その“ゆらゆら”は、佐藤だからこそ成り立ったものだという。もともと佐藤ありきの律だと話していたが、佐藤の魅力についてあらためて聞いてみると、演技力はもちろん、「画面に映るだけでもってしまう華がある人」と称えた。また、「振り返る芝居がうまい」とピンポイントな意見も。そして、「才能もあって天才だと思うけど、分析し計算しストイックにお芝居を突き詰めている方だと思う」と語った。
――以前、佐藤健さん演じる律がラブストーリーの相手役の集大成になるとおっしゃっていましたが、書き終えて律というキャラクターはどういう人物になりましたか?
律は何を考えているのかわかりづらくて、そういうところが魅力でもあると思う。156回書いている間に自分でも律との距離をとりかねて、どういう律なんだろうって……。意外と情けなくてわかりやすい人にしちゃおうかなと思う瞬間もあって、母親の病気で悩み、眠れなくなるという面を入れたり。でもすごい広い心で人を包むタフさがあったり、ゆらゆらしたまま進み、自分としてはそれがよかったのかなと。
佐藤健さんはとてもお芝居ができてニュアンスも出る人なので、私の“ゆらゆら”を彼がグイッとリアルに立体として起こし、画鋲のように止めていったのかなという感じがしています。彼が演じることによってそうなるという計算がついたので、ゆらゆらのまま行ってみようと、自分の中に幅があったような気がします。結局、律はこういう人っていうのは、焦点を結ばないまま終わらせたいという気持ちに。佐藤健くんありきなんですけどね。
――鈴愛と律は対照的でしたね。
鈴愛がものすごく捉えどころがある、しっかり気持ちがある人なので、それに受けて立つ律はどこかスポンジみたいなところもある、人の形を受けて自分の形ができる、でも強いみたいな人物に。「こういう人いるよね」というところに落とし込むのではなく、「ずっとつかみきれなかったよね」でいいような気がしていました。ある種のファンタジーというか、それでもみんなの心の中に律が残ると、いいなと。どこか天使のような妖精のような、それでいてすごい弱っちい男の子みたいなところを、行ったり来たりしながら書いたような気がします。
――佐藤健さんありきで作られた律とのことですが、完成した映像を見てきて、あらためて佐藤さんの魅力をどう感じましたか?
最初に画面に映ったときに、ものすごく華があると思いました。彼が映るだけでもってしまうという、その華がある人だと思います。そして、お芝居が本当に上手で、感受性が豊かで賢い方なんだろうなと思っています。脚本について話していてもすごい的確ですし。
あと、振り返る芝居がうまいなと(笑)。つくし食堂の前で律がが「あの素晴しい愛をもう一度」をちょっとだけ歌って、鈴愛が「なんで歌う」っていうシーンがすごい好きなんですけど、あのときの振り返りがすごいなと。本人も「あれはマイベストな振り返り!」と(笑)。どう芝居をしたらどう見えるのか、すごく計算されているのだと思います。才能もあって天才だと思うけど、分析し計算しストイックにお芝居を突き詰めている方なのではないかなと。そうでないとあの域には達せないと思います。
北川悦吏子
1961年12月24日生まれ、岐阜県出身。脚本家・映画監督。1992年に『素顔のままで』で連続ドラマデビュー。主な作品に、社会現象となった『愛していると言ってくれ』『ロングバケーション』、そして、『ビューティフルライフ』、『オレンジデイズ』など。2009年には、映画の世界にも進出し、脚本監督作品に『ハルフウェイ』『新しい靴を買わなくちゃ』。また、エッセイや作詞などでも人気を集める。NHKでの執筆は、2016年ドラマ10『運命に、似た恋』が初。NHK連続テレビ小説『半分、青い。』が2作目となる。
北川悦吏子氏の写真=撮影:萩庭桂太 場面写真=(C)NHK