東京急行電鉄、伊豆急行、首都高速道路、首都高技術の4社が地理情報と点群技術を活用した鉄道保守管理システムを共同開発。伊豆急行線全線(伊東~伊豆急下田間45.7km)で実証実験に着手し、27日に伊豆高原輸送管理センターにて記者発表会を行った。
今回発表された鉄道保守新技術は、首都高グループが開発した「インフラドクター」と呼ばれる道路構造物の維持管理システムを活用したものとなる。「インフラドクター」はレーザスキャンで得られる3次元点群データとGIS(地理情報システム)を連携させることにより、異常箇所の早期発見、構造物の3次元図面作成、個別台帳で管理してきた図面や各種点検・補修データの一元管理が可能に。構造物点検の作業、維持補修計画の立案などの効率が大幅に向上するシステムとされている。
この道路維持管理システムを鉄道に適用した事例として、「鉄道版インフラドクター」とも呼ばれる鉄道保守新技術が共同開発される。東急電鉄は「鉄道版インフラドクター」が鉄道設備の保守点検方法・頻度の見直し、予兆検知力の強化につながると考え、技術開発に取り組むことに。インフラ整備における維持管理の効率化・高度化・省力化を重点施策に位置づける首都高の取組み・意向とも合致し、共同開発に至った。
東急グループの伊豆急行は1961(昭和36)年12月に全線開業。トンネル数31カ所、橋りょう数173カ所(高架橋も含む)と土木構造物が多く、全線開業から50年以上経ったことで施設が老朽化。都心部の東急線と比べて終電から始発までの時間に余裕があることも理由となり、伊豆急行線全線を対象に実証実験が行われることになったという。
「MMS(モービル マッピングシステム)車」と呼ばれる計測車両を鉄道台車に載せた後、9月20日未明からき電停止後の計測がスタート。レール上からのレーザ計測により、レールの形状、トンネルの内面形状、橋りょうの上部形状、レール周辺の斜面、プラットホームの形状などを計測している。従来の「インフラドクター」は渋滞を発生させないように60~80km/h程度で計測を行うが、「鉄道版インフラドクター」は本線上を30km/h程度、駅において10km/h程度で計測しているとの説明もあった。
記者発表会では、計測車両を積載した鉄道台車と軌道モータカーを連結した編成で車庫内を走る計測デモンストレーションも行われた。
計測車両の屋根上には2台のレーザ計測機と全方位カメラ(視野角360度)などが設置され、レーザ計測機は1秒間に1台あたり100万発、2台合計で200万発照射できるという。このレーザ計測機と全方位カメラにより、3次元点群データおよび全方位動画等の取得が可能に。「インフラドクター」を鉄道分野へ適用するにあたり、独自の新機能としてLEDライトを装備し、レーザ計測機2台の設置角度も変えるなどの工夫も施された。デモンストレーションでは計測車両がLEDライトを点灯した状態で走行し、車庫内を往復した。
「鉄道版インフラドクター」の共同開発に向けた実証実験は伊豆急行線全線で実施した後、今年度中に東急線内での実証実験も行う予定。東急グループ・首都高グループは今回の実証実験を通じ、計測・運用方法や精度をさらに向上させることで、鉄道の新しい技術として事業化するとともに、空港など他分野の技術開発も行うとしている。