『機動戦士ムーンガンダム』の第1巻

『ガンダムUC』『ガンダムNT』へと続く作家・福井晴敏氏の新たなニュータイプ・サーガ『機動戦士ムーンガンダム』の第1&2巻が、9月26日に同時発売される。

漫画雑誌「月刊ガンダムエース」(KADOKAWA)で連載中の『機動戦士ムーンガンダム』は、U.C.0088『機動戦士ガンダムZZ』とU.C.0093『逆襲のシャア』をつなぐU.C.0092のエピソードが描かれる。外部との交流を遮断し独自の生活を送るスペース・コロニー「ムーン・ムーン」に暮らす光族の少年ユッタ・カーシムを主人公に、「ムーン・ムーン」が地球連邦軍の外郭組織「ロンド・ベル」と「ネオ・ジオン」の争いに巻き込まれたことから、物語が動き出す。

本作の大きな見どころは2つ。1つ目は、『ZZ』と『逆襲のシャア』の間の期間を舞台に描かれる、宇宙世紀の新たなドラマである。シリーズでおなじみのアムロ・レイやブライト・ノアも登場しているほか、『ガンダムUC』のヒロインであるミネバ・ラオ・ザビも重要な役割を果たしており、『ZZ』以降の動向を知ることができる。

もう1つは、魅力的なMSの存在。メインビジュアルにも登場する「ムーンガンダム」は、三日月型の背部サイコプレートが目を引く独特な意匠のMSだが、その開発の経緯も非常に興味深い。同機は、ネオ・ジオンの指揮官用次世代ニュータイプ専用機「AMS-123X バルギル」のボディに、アムロが撃墜した謎のガンダムの頭部を組み合わせ、改修・カラー変更した機体である。ベースである「バルギル」は、後の「MSN-04 サザビー」のプロトタイプと目されているが、備えたサイコミュ兵器は従来のもの。一方で頭部である謎のガンダムには次世代サイコミュ兵器が搭載されていた。

その翌年である、U.C.0093『逆襲のシャア』で描かれる第二次ネオ・ジオン戦争(シャアの反乱)において、「サザビー」や「RX-93 νガンダム」といったサイコフレーム搭載MSの運用が開始される。そこから『UC』の「RX-0 ユニコーンガンダム」や、『NT』の「ユニコーンガンダム3号機 フェネクス」などへと発展していくのだが、そうなると「ムーンガンダム」は、『ZZ』で描かれたMSから、『逆襲のシャア』『UC』で一貫して描かれた新技術「サイコフレーム」を搭載したMSへの系譜における、技術的な断絶にも見える空白に位置する機体であることがうかがえる。そうした観点からも、『機動戦士ムーンガンダム』は見るべきところの多い作品となっている。

『機動戦士ムーンガンダム』は、9月26日第1・2巻同時発売で、各定価(本体720円/税別)。

(C)創通・サンライズ