中川ホメオパシー(的場健/小林優一)による痛快ギャグマンガ『干支天使チアラット』(リイド社)を2017年に実写映画化"してしまった"河崎実監督が、こんどはチアラットの宿敵である化け猫ラング・ド・シャノワールを主演に置いたスピンオフ映画『チアラット外伝 シャノワールの復讐』を製作し、2018年11月にDVDソフトとしてリリースすることが決まった。
ここでは、さる8月12日に都内で催された『シャノワールの復讐』マスコミ向け試写会の模様をお届けし、河崎実監督がその豪快な人柄と幅広い人脈で呼び寄せた、異色すぎるにもほどがある"どうかしている"個性派キャストたちのコメントを紹介しよう。
『干支天使チアラット』とは、神様の使いである幻獣ヌエと出会ったことによって、子(ねずみ)年生まれの女の子・根住野レミが、干支天使(エトランジェル)チアラットへと覚醒し、仲間のチアミルク(丑年)、チアタイガー(寅年)と力を合わせ、人類抹殺を企む化け猫シャノワールに立ち向かう……というストーリーだった。実写化にあたって人気セクシー女優がキャスティングされたのを受け、原作では女子高生だったチアラット、チアミルク、チアタイガーはそれぞれOLへと設定変更されている。
今回の『シャノワールの復讐』は、『チアラット』における人類の敵ラング・ド・シャノワールを主役にしたスピンオフ作品。前作『チアラット』のクライマックスで干支天使の仲間入りをしたはずのシャノワールだったが、それは宇宙猿人「オリ」を倒すためのウソだったとわかり、改めてチアラットへの怒りを燃やす。シャノワール親衛隊の「風のマンチカン」は、チアラットを倒すためにはまず人間社会を勉強する必要があると、シャノワールにOLとして会社で働くよう勧めた。
用心棒として派遣された武闘派ネコ「雑種のミケ」のサポートもあって、見事会社に就職を果たしたシャノワールだったが、上司のパワハラ、同僚のセクハラ、そしてイケメン社員・池端(演:塩谷瞬/特別出演)との淡い恋愛などを体験し、人間社会の厳しさと楽しさを知っていく。そんな中、死んだと思っていたオリバー星人オリが出現し、事態は意外な展開へ……。
原作コミックにおいても、邪悪な存在でありながら憎めない愛らしさをふりまいているシャノワールを実写化するにあたって、地下アイドル兼ライターとして活躍している「姫乃たま」がキャスティングされた。前作『チアラット』でも、台本のセリフを読むのでいっぱいいっぱいとなり、感情表現が追いついていない独特の演技で話題を集めた姫乃は、今回主役として出ずっぱりの大活躍を見せる。
そして、何かとシャノワールの世話を焼く「雑種のミケ」を演じたすずきつかさ(元・プラン9)は本作の脚本(河崎監督、荒木太朗との連名)も手がけており、実力派・よしもと芸人ならではの強烈なツッコミで存在感を発揮した。
さらには、世紀の一戦『アントニオ猪木VSモハメッド・アリ戦』や謎の類人猿として騒がれた『オリバー君』などをプロデュースした伝説的暗黒プロデューサー・康芳夫が前作と同じ「オリバー星人オリ」役で出演するほか、『救急戦隊ゴーゴーファイブ』(1999年)でゴーグリーン/巽ショウを演じた原田篤、『忍風戦隊ハリケンジャー』(2002年)でハリケンレッド/椎名鷹介を演じた塩谷瞬、日本テレビ深夜の人気番組『月曜から夜ふかし』で再注目された千葉の人気スターJAGUAR(ジャガー)、人気作家でありながらテレビバラエティ番組で奇抜なコスチュームを身に着けて登場し、強烈なインパクトを視聴者に与えた岩井志麻子という、異色すぎるメンツが脇を固めているのも見逃せない。また、80~90年代を席巻した伝説のロックバンド「バービーボーイズ」の"イマサ"こといまみちともたかがエンディングテーマ「スパイシー」(ARIAとのユニット"麻実アイラ"として)を手がけているほか、エンリケ、逢瀬アキラ、ARIAと共に「友情出演」を果たしているのも、大きな話題といえるだろう。
舞台挨拶のステージに立った河崎実監督は、マイクを手にしたとたん「『月曜ドラマランド』みたいな映画を作ってしまいました!」と、80年代にフジテレビ系で放送された月曜ドラマランドを例に挙げ、「人気コミックを題材にして、アイドルが主演を務めるライトな感覚のドラマ作品」という本作のコンセプトを簡潔明瞭に表現した。
主演のほか、オープニングテーマ「わらわはシャノワールじゃ!」を歌った姫乃たまは、「もう、どこから突っ込んでいいのかわからない作品です」と、作品の「スキだらけ」の部分が最高の魅力だとして、映画の面白さをアピールした。
シャノワールが勤めることになった会社の重役・仁科専務を演じた岩井志麻子は「わたくし一応、小説家なんですけれど、ぜんぜん本が売れなくて……。いまの私を支えているのはもう"ヒョウの着ぐるみ"しかありません!」と、本業の作家としてではなく、自身の強烈なキャラクターを前面に押し出したタレントとしてコメント。劇中でも得意の「ヒョウのコスプレ」を披露しているシーンがあるが、どういう局面で出てくるのか、ぜひ本編をご覧になって確かめてほしい。
シャノワールの用心棒を自認する雑種のミケ役・すずきつかさは「僕は脚本にも参加させていただいているんですけれど、どうしても入れたかったセリフが『(姫乃に向かって)棒読みやな!』という言葉なんです。あのツッコミがないと、観ていられない(笑)。ちゃんとお芝居をされている原田さんのほうが浮いている映画です」と、全力でツッコむ甲斐のある姫乃の独特な存在感と、感情のこもらないセリフが映画の魅力だと絶賛していた。
原作コミックにも登場する半裸のイケメン猫「風のマンチカン」を演じるジョナサン・シガーは「僕はアメリカ人なのですが、群馬県出身なので日本語がしゃべれます。でも、映画で外国人が日本語をペラペラしゃべる作品はあまりなくて、今回のお話をいただいたときはうれしかったですね。まさかマンチカンになるとは思いませんでした。朝から夜までずっとパンツ一丁で撮影するとは(笑)」と、ネコ耳と首輪、ブーメランパンツのみという衣装での撮影に少々困惑していたことを明らかにした。
シャノワールが勤める会社の社長だが、後半で意外な正体が判明する秋本を演じた原田篤は「初めて河崎作品に出演することになりましたが、以前から監督の大ファンだったんです。とても楽しい企画に参加させていただきました。なんか紹介したくなるというか、クセになる作品だと思います。何度も観て楽しんでほしいです」と、ヒーロー時代を思わせるさわやかな笑顔でコメントした。
姫乃に楽曲提供をしており、お互いに大の仲良しだという昭和歌謡シンガーソングライター・町あかりは「今回、私は謎のOLとして出演し、なんと劇中で歌まで歌わせてもらいました。純粋に大笑いできる作品です」と、昭和30年代の東宝「クレージーキャッツ」映画さながらに、オフィス内でイキナリ歌い出す謎のOL役を演じた感想を明るく語っていた。
いまみちともたかは、「原作の中川ホメオパシーさんのファンだと言っていたら、河崎監督にバレてしまい、エンディングテーマを提供することになりました。その上、監督から『昔の友だち連れてきてよ!』と頼まれまして、うっかりエンリケも誘ってしまいました」と、中川ホメオパシーをきっかけに河崎監督との人間関係が生まれ、今回の参加につながった経緯を語った。いまみちに声をかけられて出演を果たしたエンリケは「いい社会科見学ができました」と、苦笑気味にコメント。現在もミュージシャンとして活躍を続けている2人は劇中でもオリバー星人に対抗する正義の宇宙人役で出演し、円熟のギターテクを披露している。
エンディングテーマ「スパイシー」を歌ったARIAもまた、宇宙人美女軍団のひとりとして出演を果たしており「劇中で、いまみちさんの隣で踊らせていただいています。シャノワールの恋模様がとてもかわいくて、楽しい作品に参加できて嬉しかったです!」と心底楽しそうにコメントした。
原作コミック『干支天使チアラット』の連載がいよいよ最終回(第50話)を迎えようとしている中川ホメオパシー・作画担当の小林優一は「キャラの死に方が"雑"で良かったです」と、本作における原作テイストの再現度を称えた。そしてネタ担当の的場健は「原作にないオリジナルキャラのインパクトが強烈。すごい映像体験だった」と、原作の持ち味を生かしつつ、最高の河崎ワールドでもある本作の濃密内容に感心するようすを見せた。
クラウドファンディングによる製作費支援によって成り立った本作を改めて振り返った姫乃は、「たくさんの方に支えられてこういう形(DVD化)になり、よかったなと思っております。この後も、女優として頑張っていこうと思います!」と、イキナリの「女優宣言」。これを聞いた河崎監督はすかさず「もうムリでしょ!」と、強烈なツッコミを放った。
すずきもまた「ええっ!? 女優? やるの? ウソやろ?」と、シャノワール以外の役柄も演じようと意欲を燃やす姫乃に対し、信じられないという顔つきで最高のリアクションをしていた。最後に河崎監督は「まあ、いろんな映画があっていいと思うんでね! よろしくお願いします!」と、軽快なノリと天然なキャラクターを生かした作品を多く生み出してきた"バカ映画の巨匠"ならではというべき包容力のある言葉で、舞台挨拶をしめくくった。
マスコミ試写の後に行われたクラウドファンディング出資者向け上映会では、劇中で異様な存在感を発揮した"怪優"JAGUARと康芳夫が登壇し、ノリノリで写真撮影会に臨んでいた。
映画『干支天使チアラット外伝 シャノワールの復讐』は2018年11月にDVD販売を開始する予定。
(C)中川ホメオパシー/リイド社/リバートップ