先日、労働組合の報告書に「留保することとした」という記述があった。保留と書き間違えたのかと思って調べたら、どうやら「留保」で合っているらしい。でも、保留とどう違うの? というわけで、今回は「保留」と「留保」の違いについて解説します。

  • 「保留」と「留保」の違い、ご存じですか?

■「保留」とは

「保留」の意味を辞書で確認すると、「保留」は、「そのまま保ちとどめておくこと。とめておくこと」、あるいは「その場ですぐに決めたり実行したりせずに延ばすこと」とあります。

「保留」という言葉がよく使われる場面と言えば、電話です。例えば、「そちらで○○の商品を扱っていますか?」というお客さまからの問い合わせに即答できない場合には、「通話を一旦保留」し、その商品の取扱い状況をきちんと確認してから回答するのが一般的でしょう。

また、会議や議論の場でも使われることが多く、結論が出ない場合に、「今日のところは一旦保留にしましょう」「前回保留にしていた案件についてですが」などと使ったりします。ちなみに、ビジネスシーンでは、保留を意味する「ペンディング」というビジネス用語を用いることが多いかもしれません。

このように、「保留」は、まだ回答や結論が出ていない状態、あるいは決めかねていて先延ばしの状態にある時に使う言葉です。

■「留保」とは

一方「留保」の意味は、「すぐその場で行わないで、一時差し控えること」、あるいは「法律で、権利や義務を残留・保持すること」、「国際法上は、多数国間の条約で、ある当事国が特定の条項を自国には適用しないと意思表示すること」と記載されています。

「すぐその場で行わないで、一時差し控えること」という意味は、非常に「保留」と類似していますが、保留との違いは「差し控える」という点です。「差し控える」とは、「見あわせる」という意味で、さらに「見あわせる」には、「実行するのをやめて、しばらく様子をみる」「時期を見はからう」という意味があります。

つまり「留保」は、相手の出方を見たり、ある狙いがあって、意図的に結論を出さずに先延ばしにする時に使う言葉なのです。

■「保留」と「留保」の違い

両者の違いは、結論が出ているか否か、出せないのか出さないのかにあります。「保留」は、結論が出ずに決めかねている状態であるため、仕方なく保留しているのに対し、「留保」は、ある狙いがあって意図的に結論を出さずにいる状態の時に使うものです。

■法律や政治の場面で使われる「留保」

ここで、留保についてもうひとつの使い方をご紹介しましょう。意味に法律や国際法といったワードがあるように、「留保」は、法律や政治に関する場面でも使われることが多い言葉なのです。

例えば、多数の国の間である条約が結ばれようとしている時に、その内容の一部が自国に適さないものであるとします。そのような場合に、承認はするけれど一部合意できない、自国では適用しないといった意思表示をすることを「留保」と言います。これは国際法上で認められている制度で、宗教上の理由などで一部合意できない内容がある場合に、一定の条件や制限をつけることで条約に参加できるようにするために設けられたものです。

政治などのニュースで耳にする「留保」ですが、なんとなく聞いていた人も多いのではないでしょうか。留保することにどんな意味があるのか、頭に入れておきましょう。


今回は、「保留」と「留保」の違いについてお話ししました。どういう理由で結論を「保留」にするのか、あるいは「留保」にするのか、状況にあわせて正しく使いわけましょう。