「マイホームを買おう」と思ったものの、予算面で苦しいとき、心強い味方になってくれるのが父母や祖父母からの「資金面の援助」です。国もこうした住宅購入のための贈与を後押ししていて、マイホーム取得時には「贈与税の非課税枠」を利用できます。しかもこの制度、2019年4月以降、期間限定で拡充されます。詳しく解説していきましょう。

通常かかる贈与税が、住宅購入時なら「非課税」になる

そもそも、親子や祖父母に限らず、人から人へ財産を贈ると贈与税が発生します。ただ、贈与した金額が1年間で合算して110万円以内であれば、贈与税は課税されません(基礎控除)。

この基礎控除に加え、住宅取得資金としての資金が贈与される場合、一定の非課税枠が設けられています(住宅取得等資金贈与の非課税)。資金面でゆとりのある祖父母・父母世代が住宅資金の援助をしやすくし、若い世代を助けようというのがその狙いです。

この非課税枠、2018年では最大1200万円ですが、2019年4月以降に住宅の売買契約をし、消費税10%を負担する人の場合、最大3000万円まで非課税と拡充されるのです。非課税枠がなんと2倍以上になるのですから、贈与が期待できる人には大きな差となります。

ただ、非課税枠が3000万円になるのは2019年4月からその翌年である2020年3月31日までの、1年間のみ。その後は縮小していきます。贈与税の非課税枠をフル活用するには2019年4月以降、1年間に契約するのがもっともトクといえるでしょう。

  • <消費税「8%」物件の場合の非課税枠>

※消費税率8%が適用される契約(個人が売り主の中古住宅、土地購入)の場合。ただし、2019年3月31日までに契約する物件は、引き渡しが消 費税10%増税(2019年10月1日)以降でも税率8%(仕様などに特別な注文ができる契約の場合)。

  • <消費税「10%」物件の場合の非課税枠>

ただ、この贈与税の非課税枠は、住宅取得資金への贈与が対象となるため、対象となる人や住宅に制限があります。もう少し詳しく解説していきましょう。

受け取り手にも、住まいにも適用条件がある

この制度を利用するためには、いくつか条件があります。まずは、受け取り手と贈り手の関係ですが、父母や祖父母など直系尊属からの贈与が対象になります。義理の父母では適用されませんので注意してください。また、贈与時に20才以上で、日本国内に住み、1年間の合計所得が2000万円以内である必要があります。贈与された資金は、自身が住むための住まいの購入・増改築の費用が対象となります。

あわせて、贈与をうけた年の翌年3月15日までに、購入・増改築した住まいに引っ越して、生活をしなくてはいけません。万一、居住していなくとも、同日後遅滞なくその住まいに居住することが見込まれることが適用条件となります。また、適用を受けるために、確定申告をする必要があります。

住まいにも、適用条件があります。

まず、住宅の床面積(登記簿面積)は、50平米以上240平米以下でなくてはいけません。また、中古住宅を購入する場合は以下のうち、3つのいずれかを満たす必要があります。 (1)マンションなど耐火建築物は築25年以内、木造などは築20年以内
(2)一定の耐震基準をみたすことが建築士等によって証明された住宅
(3)購入後に耐震改修工事を行い、贈与を受けた年の翌年3月15日までに建築士等によって一定の耐震基準に適合すると証明された住宅

また、一般的な住宅を購入した場合、非課税枠は2500万円ですが、以下のような条件を満たした質の高い住まいだと、非課税枠は3000万円にもなります。

(1)断熱等性能等級4または一次エネルギー消費量等級4以上
(2)耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上または免震建築物
(3)高齢者等配慮対策等級3以上

上記はすべてではなく、いずれかを満たしていればよいので、贈与を受けようと検討している人は、住まい探しのときには、この条件を1つの目安とするのがよいでしょう。

相続時精算課税制度とあわせて活用しよう

親・祖父母から贈与を受ける場合、活用できるもう一つの制度が、「相続時精算課税制度」です。これは、60歳以上の父母または祖父母からの贈与について、相続までの贈与額を相続財産に加算し、納めた贈与税を相続税で精算する制度です。住宅資金の非課税枠とあわせて活用し、より賢く住宅資金とするとよいでしょう。

  • 回遊舎

嘉屋恭子

フリーライター。編集プロダクションなどを経て、2007年よりフリーランスで活動。主に住まいや暮らしに関わる分野で取材・執筆を続ける。FP技能士2級取得。