私たちの生活に身近な”薬”ですが、その正しい飲み方や保存方法について、意外と知らないことも多いものです。そこで本シリーズでは2回にわたり、マイナビニュース会員からのアンケート調査で寄せられた「薬にまつわる素朴な疑問」に対する回答を紹介していきます。質問の回答者は、前稿に引き続き日本調剤の薬剤師・紀平陽子さんです。
冷蔵庫に入れると期限が延びる?
――薬も湿気ることはあるのでしょうか? また、湿気ると効果は落ちますか?
紀平さん:あります。とくに粉薬などは劣化してしまうので湿気を避ける必要があります。基本的には、缶などの密閉容器に乾燥剤と一緒に入れて、直射日光の当たらない涼しい場所で保管するのが最良の方法です。
――冷蔵庫の中は、保管場所として問題がありますか?
紀平さん:冷蔵庫で保管すると、出したときの温度差で湿気てしまうことがあります。また目薬なら、冷蔵庫に入れると結晶が出てしまうことがあります。薬ごとに保管方法も異なりますので、確認が必要です。
以前、真夏の高温になった車の中に薬を忘れてしまった、という相談がありました。こうした場合、品質が保たれているか保証できません。
――冷蔵庫に保存しておくことで、薬の有効期限は延びるのですか?
紀平さん:残念ながら、冷蔵庫に入れても保存期限は延びません。まして冷凍庫に保存することは、絶対に止めてください。
処方薬の有効期限とは?
――薬が余ってしまったとき、どうしたら良いでしょうか?
紀平さん:飲み残しの薬は、医師に伝えるか薬局に持ってきていただければ、まだ使えるか判断できます。当人に処方する予定だった薬を、その残薬で補うこともあるでしょう。
――病院で処方された薬の場合、有効期限はどれくらいなんでしょう?
紀平さん:錠剤であれば製造から3年程度持つものがあります。ただしこれは「製造から」の期間です。
めったに出ない薬の場合など、薬局である程度の期間、保存された後の薬を患者さんにお渡しすることもあります。基本的には有効期限ギリギリのものは渡しませんが、心配な場合は薬局に確認してみてください。
身体が健康なとき、人は病院から足が遠のきます。薬剤師と話す機会もないでしょう。でも誰しも、自分の身体のどこかに不安はありますし、病院に行くほどではないけれど気になっている、これってどうなんだろう、と思うことはあります。そんなとき、気軽に相談できる人が身近にいたら心強いものです。実は、その役割を担うのが薬剤師なのです。
忙しく働く20~40代の方たちに向けて、紀平さんは「是非、何でも相談できる薬剤師さんを見つけてください」と語ります。その人が病気にならないように健康をサポートする「未病」という観点でも、いま薬剤師に求められる役割は大きくなっているそうです。
「こんな症状がある、けれど病院に行く時間がない、という働き盛りの方もいらっしゃるでしょう。そんなときに相談いただければ、市販の薬ならこれを試してみると良い、あるいはこんなことに気をつけて生活してください、とアドバイスできます。薬剤師の目から見て我慢をしない方が良いと判断し、最適な病院への受診をおすすめするケースもあります」(紀平さん)
健康な人でも悩みを相談できる、ちょっとした疑問にも答えてくれる、そんな薬剤師という存在。筆者も知れば知るほど、利用してみたくなりました。気になった方は、お近くの調剤薬局を訪れてみてはいかがでしょうか。