「かかりつけ薬剤師」を利用したことはありますか? 薬について24時間365日いつでも相談でき、ときには患者の悩みを医師に伝えるパイプ役にもなってくれる心強い存在です。薬=高齢者というイメージを抱きがちですが、実は働き盛りの20~40代だからこそ知っておきたい活用術もあるんだとか。

  • 24時間365日対応してくれるかかりつけ薬剤師って? 働き盛りの活用術も紹介

    薬について24時間365日いつでも相談できる「かかりつけ薬剤師」とは?

かかりつけ薬剤師とは?

「かかりつけ薬剤師制度」は、2016年4月に開始された制度。これにより、患者は希望の薬剤師を1人指名して、症状や服用の相談などを継続的に行えるようになりました。

日本調剤の薬剤師で、かかりつけ患者を多く抱える紀平陽子さんは、次のように話します。

24時間365日対応してくれるかかりつけ薬剤師って? 働き盛りの活用術も紹介

かかりつけ薬剤師として多くの患者を抱える日本調剤の紀平陽子さん

「病院で出される処方箋について、ときには『こんなにたくさん飲んで大丈夫? 』とか、あるいは『早く治したいのに、これだけの薬しか出ないのか』といった疑問を抱くことがあると思います。そんなとき、医師には直接言えない患者の希望を聞き、その気持ちをくみ取って、必要に応じて医師に相談するのが私たちの役割です」(紀平さん)

たとえば、紀平さんのかかりつけ患者で、喘息を患った子どもの母親から「もう発作は出ていないのに、小さな子にたくさんの薬を飲ませるのが心配」という問い合わせがあったそう。喘息の場合、発作を抑える薬は2~3年間の長期にわたり処方されます。

そこで、子どもの症状とこれまでの経緯、現在の状況を確認した紀平さんは「いまお子さんの喘息は、焚き火がくすぶっている状態です。火がついていないように見えますが、風邪や感染症にかかったとき、まるで焚き火に息を吹きかけるように燃え始めてしまう。再発のリスクが高いので飲み続けてください」と説明。

それ以降、母親の感情のモヤモヤは解消でき、治療に専念できたとのことでした。かかりつけ薬剤師が「セカンドオピニオンを聞ける身近な存在」として機能していることがうかがえるエピソードと言えるでしょう。

働き盛りの活用術

――働き盛りの20~40代なら、かかりつけ薬剤師をどのように活用できるでしょうか。

「たとえば、仕事が忙しくて病院に行く時間がない場合。薬局にある市販の薬に頼りたくなるけれど、副作用や、普段から飲んでいる薬との兼ね合いが気になります。そんなときは、いつもの薬と一緒に飲んでも大丈夫でしょうか、といつでも相談してください。

地方出張で、かかりつけでない医師に処方箋をもらうこともあるでしょう。副作用を心配する患者にとって、新しい薬は心配です。そこで電話してもらえれば、普段飲んでいる薬との違いを説明できます。副作用が出ている系統の薬なのか否かを判断して、必要であれば医師に連絡することもできます」(紀平さん)

子どもの体調や薬の服用歴をお母さんしか把握していない家庭も少なくない……

――働き盛りは子育て世代でもありますが、活用法はありますか。

「そうですね。とくに夫婦で共働きの場合、お父さん、あるいは祖父母といった家族が、お母さんの代わりに薬局まで子どもの薬を取りに行くこともあるでしょう。その場合も、それまでの経緯が分かっているので、渡す薬についてご家族に詳しい説明を行えます。治療の段階によっては薬の種類が変わることもありますが、いつもの薬と違う、なぜこの薬が出たのか、といった疑問をお持ちのお母さんには、後から連絡してもらえれば説明できます」(紀平さん)

医療費の削減にも一役

話は少し横道に逸れますが、国では増大を続ける医療費の削減が喫緊の課題となっています。日本調剤によれば、飲み残しなどの”残薬”により無駄になっている薬剤費は、年間で約475億円にも上るとのこと。かかりつけ薬剤師が、この問題の改善に一役買うことが期待されています。

「高齢者のご自宅には、飲み切れなかった薬が大量に余っていることがあります。それを薬局まで持ってきていただければ、まだ飲めるか判断できます。飲めていない理由を確認すれば、飲み方も工夫できる。たとえば、普段はお昼まで寝ているという高齢者の方が、朝食後に飲む薬を余らせているケースがありました。また、出ている薬を飲んでいる前提で治療が進んでいた慢性疾患の患者さんの場合、飲めていないことを患者さんが医師に伝えなかったので、効いていないと判断されて、薬の量が増えていました。個人にヒアリングすることで、こうした不必要な残薬を減らすことができます」(紀平さん)


いつでも親身になって薬剤治療の相談に乗ってくれる、かかりつけ薬剤師という存在。話を聞けば聞くほど、筆者も利用したい気持ちが強くなりました。

薬局が近くて通いやすい、薬剤師の人柄が良くて相談しやすそう、そんな観点で自由に指名できるとのこと。気になった方は、検討してみると良いでしょう。