手紙などの冒頭に決まって登場する「ますますご清栄のことと……」という挨拶文。似た言葉に「ご清祥」というのがありますが、両者の違いをご存じでしょうか。
そこで今回は、「ご清栄」と「ご清祥」の意味や使い分けについて解説します。
■「ご清栄」「ご清祥」の意味と違い
「ご清栄」も「ご清祥」も、手紙などで用いられる挨拶用語です。「ご清栄」は相手の健康や繁栄を、「ご清祥は」は相手が健康で幸せに暮らしていることを喜ぶ言葉です。両者ともに、相手の健康を喜ぶ点では同じですが、違いは、「栄」と「祥」という文字にあります。
ご清栄の「栄」は「繁栄」を意味します。一般的に「経済的な繁栄」と解釈されることから、「ご清栄」は、個人だけでなく企業に対しても適した言葉とされています。
一方、ご清祥の「祥」という文字には、「さいわい」「めでたい」という意味があります。相手が健康かつ幸せに暮らしていることを喜ぶ言葉であることから、「ご清祥」は、基本的に個人に対して使う言葉とされています。
企業宛てに使用したからといって完全にアウトとは言い切れませんが、ご清祥の意味から考えると、企業宛ての文書には、「ご清祥」よりも「ご清栄」の方がより相応しい表現であると言えます。
■「ご清栄」「ご清祥」の類語
ご健勝
「健康が勝(すぐ)れている」という意味であるため、個人宛てに用いる言葉になります。
ご盛栄
「盛」は「商売繁盛」を指しています。そのため、個人ではなく、企業に対して適した言葉になります。
ご隆昌(ごりゅうしょう)
「隆」も「昌」も「さかん」という意味を持っています。従って「ご隆昌」は、相手が「非常に栄えている」「勢いがある」ことを讃える企業宛ての言葉です。
ただし、「ご盛栄」や「ご隆昌」を使う場合には注意が必要です。相手の商売が必ずしも繁盛しているとは限りません。相手の状況が不確かな場合には「ご清栄」を用いた方が無難です。相手の状況にあわせ、適切な言葉を選択するよう心がけましょう。
それぞれに適した使い方をまとめると、下表のとおりになります。
■使い方と例文
企業宛「ご清栄」「ご盛栄」「ご隆昌」
・時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
・貴社におかれましては益々のご盛栄のこととお喜び申し上げます。
・貴社ますますご隆昌のこととお喜び申し上げます。
個人宛「ご清栄」「ご清祥」「ご健勝」
・○○様におかれましては、ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
・晩秋の候、皆様方にはますますご清祥のこととお喜び申し上げます。
・皆々様には、ますますご健勝のことと心よりお喜び申し上げます。
手紙の冒頭には、相手の現況を讃える言葉を置くのが基本です。今まで深く考えずに使っていたという人もいると思いますが、それぞれに違った意味があり、相手や相手の状況に合わせて使い分ける必要があります。正しい使い方をしっかりと覚え、失礼のない文書を作成するよう心がけましょう。