映画『散り椿』(9月28日公開)のシニア夫婦限定試写会が19日に都内で行われ、岡田准一(V6)、西島秀俊、木村大作監督が登場した。
同作は葉室麟による同名小説を映画化。カメラマンとして数々のキャリアを持ち、映画監督としても『劔岳 点の記』(2009)で第33回日本アカデミー賞最優秀監督賞を受賞している木村大作がメガホンを取る。藩の不正を訴え出たために追放された男・瓜生新兵衛(岡田)が、死を迎える妻・篠(麻生久美子)に頼まれ、かつての親友・榊原采女(西島)と対峙する。
観客から「木村監督はどのような存在ですか」と質問された岡田は、「親みたいな感じ」と告白。「師であり先生であり親であり」と表しつつ、「戦えたらいいなと思いながら、エネルギーに飲み込まれるのではなくて、コミュニケーションを取れるようにしたかった」と振り返った。
また作中で木村監督が役者として斬られるシーンを、岡田が撮影していたことが明かされると、会場も驚きに包まれる。岡田は「僕に『俺が死ぬとこを撮れ』と言うんですよ」と苦笑し、「その日休みだったけど呼び出されて、わざわざ彦根の方まで行って撮ってますから。そういうロマンチックなことをいってくれる。年は離れてますけど、心の友になれたらいいなと思っている」と心境を吐露した。
木村監督はさらに「その時の西島さんのアップも、岡田さんが回してます」と明かす。「西島さんのアップは、豪雨でほとんど表情は見えないし、血糊がかかってるんですが、それも映ってません。『何も見えません』と岡田さんが叫んだんで、『心の目で見ろ!』と言った」と撮影を振り替えた。
それを受けた岡田は、「大作さん名物の大雨で、『降らせ降らせ』と言って倒れているカットを撮っていたら、大作さんが溺れてました」と思い出し笑い。岡田は「自分でフレームがわかっているから、フレームから手を出して『カット!』 と言ったんですよ」と木村監督の様子を再現すると、監督は「口の中に水が入ってきて、うわわわわって言って、横向きで死を迎えたました」と苦笑した。
一方西島は、「とにかく撮影所に憧れて、潜り込みたくてこの世界に入ったので、撮影所システムが崩壊していてショックを受けた」としみじみ。「大作さんと会って、『きっと、撮影所にこういう人達が沢山いたんだな』と。映画がそのまま人の形になったみたい。純粋な思い、エネルギーを毎日受けて、少しでも継承していきたいと思って、現場にいました」と監督への思いを表した。
第42回モントリオール国際映画祭で、審査員特別賞を受賞した同作だが、木村監督は「腹の中では、どうせ取るなら金にしたかったですよね」とニヤリ。「僕も喜ばないといけないと思ってますが、次は金を狙いたいと思っています」と意欲にあふれる様子に、会場からも拍手が起こっていた。