大ヒット映画『ヒロイン失格』(15)を手がけた伊藤卓哉プロデューサーは、SNSで観客の反応を調べる中で、コミュニケーションに悩みを持つ若者が多いことを知る。高校生だからといって、みんなキラキラしているわけじゃない。那波マオのコミックは、そんな優しい気づきを与えてくれる作品でもあったという。実写映画『3D彼女 リアルガール』(9月14日公開)は、伊藤プロデューサーの「『ヒロイン失格』チームで新作を撮るなら、コミュニケーションをキーワードに据えたい」という思いから生まれた作品でもある。
完璧なルックスを持ちながら「男グセが悪い」「性格は最悪」という噂もある「リア充女子」の五十嵐色葉(中条あやみ)。2次元を愛する“つっつん”こと「コミュ障」で「恋愛経験ゼロ」の筒井光(佐野勇斗)は、学校一の美少女である色葉から突然の告白を受け、新手のイジメと疑いながらも向き合っていく。しかし、色葉にはある問題が……。やがては、俺様系イケメン・ミツヤ(清水尋也)、明るいギャル・ありさ(恒松祐里)、2次元を愛してやまないオタク女子・純恵(上白石萌歌)、筒井のオタク仲間・悠人(ゆうたろう)との関係性にも変化が訪れる。
主演の中条あやみといえば、『CanCam』専属モデルを務め、数多くのCMにも出演。ドラマや映画では、ヒロインやマドンナなど“美の象徴”的な役柄を数多く演じてきた過去がある。自分のイメージと向き合ってきた中条は、自分が「人見知り」であることを受け入れつつ、ある特別な思いを抱えながら本作に挑んでいた。
「私はこの世界の中で生きていた」
――これまで2度インタビューをさせていただきました。1回目が『劇場版~零~』(14)、2回目が『ライチ☆光クラブ』(16)でした。
懐かしい! ありがとうございます。
――2年ぐらいのペースです(笑)。さて、本作を観るタイミングが女子高生限定試写会しかなく、少々気まずい思いもしたんですが、その世代の盛り上がりを肌で感じることができました。そういった反響は届いていますか?
そうだったんですね(笑)。たくさん試写会をやっているみたいで、そのたびにSNSに感想が書き込まれていて。「3D彼女」「試写会」で検索して調べているのですが、うれしい感想ばかりで、きちんとみなさんの心に届いていることを実感しています。
――いつもそうやって調べてるんですか?
はい。毎回、みなさんがどのように感じているのか気になるので調べています。
――公式サイトには、「みんなで一生の思い出になる素敵な作品を作っていきたい」という中条さんのコメントが記されていました。どのような思いだったんですか?
なんだか恥ずかしいです(笑)。私は色葉に、佐野さんもつっつんに共感できると言っていました。この映画のためにみんな集まったと思うくらい、それぞれが演じたキャラクターと共通する部分があったように思います。私たち以外に役にピッタリの方はきっといないんじゃないか、そう思うくらい。みんな一緒の撮影だったら自然と仲良くなると思いますが、全員があまり揃わなかった撮影でここまで仲良くなるのは、すごく珍しいことだと思います。監督のおかげでそれぞれがマイペースで演じたいように演じさせいただき、「私はこの世界の中で生きていた」という気持ちにさせてもらえました。
――全員が揃うのは、キャンプと学校の数シーンぐらいですね。撮影現場で盛り上がりすぎて、怒られたと聞きました(笑)。
そうなんです(笑)。楽しみすぎちゃいました。怒られても、みんな脳天気で(笑)。でも、学生時代に戻ったような感覚で、こんな仲間がいたら楽しかったんじゃないかなと思いました。
――そんな雰囲気が、映画を通して伝わりました。さきほどおっしゃっていた「色葉への共感」とは?
つっつんに対して引かないところです。見た目で人を判断せず中身を見て向き合って、相手を受け入れる。私も見た目で人を判断したくないといつも思っていて。こういうお仕事をしているので仕方がないことだとは思いますが、私も見た目で判断されがちなので。でも、つっつんは色葉に対して見た目ではなく中身で向き合った。だから、色葉も好きになっていったんだと思います。
『ニセコイ』『雪の華』と役の幅
――中条さんの外見イメージが強くなるのは、芸能活動歴が長くなり、活躍の場が広がっていることの現れなのかもしれませんね。
そういうイメージも大事なお仕事だと思っています。『チア☆ダン』の後は「明るい子だね」と言われるようになりましたが、「クール」なイメージがより強かったと思います。自分自身ではなく、役柄としてのイメージなのでありがたい気持ちもあって。ちゃんと役になりきれていたということでもあるので、うれしい反面、「本当の私は違うのにな……」という思いも両方あります(笑)。
――徐々に役柄が広がるにつれて、世間のイメージも変わっていきそうですね。
そうですね。中島健人さんと共演させていただいた『ニセコイ』(18年12月21日公開)では、初めてハーフを前面に押し出した役に挑戦しました。「強烈な役が来た!」と思ったと同時に、「ついにハーフを解き放つ時が来た!」というか(笑)。『雪の華』(19年2月1日公開)は、病気をかかえている役柄です。最近は、精神的な部分に関わる役が多くなっているような気がします。
――本作の前半部分では、少ないセリフで感情を表現する難しい役どころでしたね。
表情が重要になってくると思いますが、今回は壁ドンやビンタのように役の象徴的なところを伝えるシーンもありました。
――壁ドンしてましたね。される側ではなく(笑)。
そうなんです。壁ドンといえば、女の子が男の子にされるものとして映画でたびたび目にして「私にもいつかこういうシーンがあるのかな」と想像していたら、人生初の壁ドンを自らやることになるとは(笑)。英監督からは「大阪出身を出していき!」と言われて、もう勢いです! でも、実際に壁ドンをやってみると気持ちいいんですよ(笑)。1テイクでOKが出て、英監督が「最高!」と唯一褒めてくださったシーンです(笑)。