当日は、JAXA相模原キャンパス内にある宇宙探査実験棟において、コンソーシアム参加企業3社によるAVATAR技術のデモが行われた。
人間と同サイズながらパワフルなロボットハンド
MELTINは、AVATARロボットのコンセプトモデル「MELTANT-α」を披露。このロボットは、パワフルで器用なハンドを持つのが大きな特徴だ。通常、パワフルさと器用さは両立が難しい。指の関節を増やそうとすれば、小型モーターを使わざるを得ず、パワーが出ない。パワーを出そうとして大型モーターを使えば、ハンドが大きくなってしまう。
しかし人間に代わってさまざまな作業を行うためには、汎用的に使える、パワフルで器用なハンドが不可欠だ。そこで同社は、大きなモーターはすべて胴体側に格納し、指先はワイヤーで駆動することで、小型軽量、パワフル、高速、高耐久を実現。人間と同サイズのハンドで、人間と同等の関節数を実現したという。
リアルな触覚フィードバックが可能な遠隔ロボット
Re-alは、慶應義塾大学が開発したリアルハプティクス技術を搭載したAVATARロボットを開発している。この技術は、ロボット側でモノを掴んだ微妙な触覚まで操縦者側に伝えるというもので、固いブロックでも柔らかい果物でも問題無く扱うことができる。同社は前述のANA AVATAR XPRIZEへの参戦も表明している。
同社は、宇宙ステーションの船外活動を想定したデモを行っていた。披露したのは、面ファスナーで外壁に固定されている断熱材を引きはがす作業。ロボットにとって、布のような柔らかいモノを扱うのはまだ難しい。しかしリアルハプティクス技術では、微妙な力加減が可能になり、こうした作業も可能になるというわけだ。
AVATARでテレポーテーションを実現?
凸版印刷は、「IoA仮想テレポーテーション」の実現を目指している。IoA(Internet of Abilities)というのは東京大学の暦本純一教授が提唱している概念で、さまざまな能力をネットワークで繋ぐことを意味する。考え方としては、AVATAR Xプログラムにかなり近いと言えるだろう。
同社のシステムは、4Kの大型液晶ディスプレイを3列×2段で並べた没入型スクリーンが大きな特徴だ。VRゴーグルは基本的に1人用となるが、没入型スクリーンは複数で体験でき、開放感もあるのがメリットだという。AVATARロボットはシンプルな構成で、広角レンズを搭載した4Kカメラからの映像を送っていた。
課題は通信の遅延
臨場感のあるAVATARの実現には、遅延が少ない高速通信が不可欠で、地上では5G技術の活用が期待されている。しかし宇宙には、「距離」という大きな問題がある。特に月面と地上ほど離れてしまうと、通信に秒単位の大きな遅れが発生するが、この遅延は物理原則なので改善しようがない。
時間遅れが大きいと、うまく操縦できなくてミスしたり、違和感によるストレスが大きくなる可能性がある。この問題が気になったので各社に質問したところ、「ロボットの動作速度を遅くする」「半自動の機能でうまくカバーする」などの対策などが考えられているそうだ。