貯蓄は安定した生活のバロメータだ。日々の生活費や各種ローン、老後の蓄えなど不安のない家庭生活を送るうえで非常に重要な命綱でもあり精神的な拠り所でもある。
だからこそ気になるのが、どのくらい貯金があれば安心できるかとういう点だ。この額はそれぞれの家庭事情によって大きく異なってくるのは間違いないが、しかし一般的な家庭という前提での貯蓄額の平均や貯蓄している金融資産や借入金の額などについては知っておきたいところだ。
そこで、都道府県金融広報委員会、政府、日本銀行、地方公共団体、民間団体などが共同で運営する金融広報機関である金融広報中央委員会が平成29年6月16日から7月25日までの間、インターネットで調査したレポート「家計の金融行動に関する世論調査」(二人以上世帯調査)」で公開しているデータからそれらのデータを読み取ってみよう。
平均貯蓄額は1,151万円、金融資産がない世帯は31.2%
「家計の金融行動に関する世論調査(二人以上世帯調査)」は、金融広報中央委員会が、家計行動分析のための調査データとして、家計の資産・負債や家計設計などの状況を把握や、これらのデータを元にした適切な金融知識の広報のためのもので、毎年行われている。 このデータを元にすると二人以上の世帯での金融資産の保有額の平均値は1,151万円となり、前年の1,078万円より増加している。そして、金融資産の内分けは、預貯金が54.1%(定期預金が29.4%)、生命保険が、16%、有価証券が18%(債権が3%、株式が8.9%、投資信託が6.1%)となっている。
この額はあくまでも最高額の保有者や、まったく保有しない人も合わせた平均値なので一般の感覚から離れて高額に感じられる。そこで調査対象世帯を保有額の順に並べたとき、中位に位置する世帯の金融資産保有額を表した数値、中央値で見てみるとその額は380万円となる(央値に関しては下の図を参照)。この額は400万円であり、現実の平均保有額に感覚的に近い数字といえるだろ。
金融資産を保有していない人についてはどうだろうか。調査では金融資産を保有していないと回答した世帯は31.2%であり、平成28年度の30.9%に比べて0.3%増加している。下の図からも2013年から数値は横ばいだが、少しずつ増えているのがわかる。
また、収入別の数値から無収入が増加し、1,000万円から12,000万円の階層6にあたる高収入者の金融資産の減少が見て取れる。加えて年齢別では、20歳代の大幅な低下と40歳代の低下が見て取れる。若年層とこれからローンや教育費などの費用が多くなる世代の金融資産の減少は一般家計が全般的に厳しくなっていることを物語っている。
保有率ゼロの世帯を抜いた金融資産保有状況
二人以上の世帯での平均金融資産保有額は1,151万円だったが、金融資産を持たなない世帯が31.2%も存在している以上、この部分を抜いた数字でなければ、適切な保有者の平均保有額とはいえないだろう。
これに関してもレポートでは融資産保有世帯の金融資産保有状況として数値を公開している。これによれば、29年度は1,729万円となり、28年度の1,625万円に対して104万増加している。中央値では、29年度1,000万円、28年度950万円となっておりより現実的な数値となっている。
金融資産の内訳は、より具体的な額が報告されている。2017年においては、貯金額は937万円(内定期預金503万円)、生命保険が289万円、有価証券では、債券52万円、株式が154万円、投資信託が105万円、個人年金が102万円となっている。ほとんどの額が預貯金で運営されているのがわかる。
借入金の平均額は494万円
そして、もう一つ気になるのが借金の有無とその額だろう。これに関してレポートでは、入金のある世帯の割合は39.7%と前回の38.6%と比べて1.1%も上昇し、やはり現実の家計環境の厳しさを表した数値が出ている。借入金の平均額は、494万円となっている。この額には住宅ローンなども含まれている。
借入金の目的に関しては、レポートを見ると「住宅(土地を含む)の取得または増改築などの資金」が65.5%と抜き出て多いことがわかる。次に耐久消費財が23.6%と多い。
これ以外にもレポート「家計の金融行動に関する世論調査(二人以上世帯調査)」では、家計のバランス生活設計、老後の生活への心配や年金に対する考え方などの数値が公開されている。そちらに興味がある人は直接ファイルを閲覧してみてはいかがだろうか。貴重な情報を得ることができるだろう。