企業の経営状況を把握するためには、いくつもの指標が必要です。それぞれの指標が何を表すものか、みなさんはご存じでしょうか。そこで今回は、数ある指標の中から「売上高」「営業利益」「純利益」を中心に、会計上の利益についても解説します。

  • 「売上高」「営業利益」「純利益」の違いとは

■売上高とは

商品を販売したり、サービスを提供するなど、企業が主たる営業活動によって得た代金の総額を「売上高」と言います。単に「売上げ」と呼ぶこともあります。

■「営業利益」とは

「営業利益」について解説する前に、会計における「利益」について少し触れてみましょう。

「利益」とは、売上げから費用(コスト)を引いた残りのことで、簡単に言うと「もうけ」です。当然のことながら、売上げよりも費用の方が多ければ赤字となります。そのため、企業は売上げをアップさせるか費用を減らすかして、利益をあげようとするのです。

会計上の利益には、「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「税引前当期純利益」「当期純利益」の5種類がありますが、それぞれの「利益」は、売上げから何の費用を差し引くかによって異なります。

「営業利益」は、売上高から売上原価(※1)を引いた売上総利益(粗利)から、販売費および管理費(※2)などの費用を差し引いたもので、企業が主たる営業活動で得た利益(もうけ)を表します。つまり、企業が本業でどのくらい稼いだのかが分かる指標です。差し引いた結果がプラスであれば「営業利益」と言いますが、マイナスの場合には「営業損失」と言います。

※1「売上原価」… 商品を販売するために発生する仕入れ原価または製造原価のこと。
※2「販売費および管理費」…人件費・通信費・水道光熱費・広告宣伝費・消耗品費などの経費。

■純利益

「純利益」とは、経常利益に本業以外での損益を計上し、そこから企業が支払うべき税金(法人税、住民税、事業税など)を差し引いて残ったもののことを言い、企業の最終的な利益を表します。税金などを差し引く前の利益を「税引前当期利益」と言い、それと区別するために、「税引後当期利益」と呼ぶこともあります。

「経常利益」とは、営業利益に財務活動などの本業以外の損益を加味したものです。つまり、本業ではなく副業で稼いだ利益のことです。「本業以外での損益」とは、受取利息や借入利息などの営業外収益および営業外費用のほか、特別な要因で一時的に発生した「特別利益」(※3)や「特別損失」(※4)のことを指します。

※3「特別利益」…不動産売却、有価証券売却等による利益 ※4「特別損失」…不動産売却、有価証券売却、火災、リコール等による損失

■まとめ

  • 「売上高」→ 企業が主たる営業活動によって得た代金の総額

  • 「売上総利益(粗利)」= 売上高 - 売上原価

  • 「営業利益」= 売上総利益 - 販売費および管理費 → 本業で稼いだ利益

  • 「経常利益」= 営業利益 + 営業外収益 - 営業外費用 → 本業以外で稼いだ利益

  • 「税引前当期純利益」= 経常利益 + 特別利益 - 特別損失 → 税引前の利益

  • 「税引後当期純利益」= 税引前当期純利益 - 税金 → 企業の純粋な最終利益


単に商品がたくさん売れているからというだけで、その企業が儲かっていると判断することはできません。銀行から膨大な資金を借り入れていたり、災害などで一時的に赤字に陥っているだけかもしれません。株や不動産の売却で一時的に黒字になっていることもあるでしょう。なにで儲けているのか、なぜ赤字なのか。そういった状況を正しく見極めるために、さまざまな指標が存在するのですね。企業の業績を正しく把握することができるよう、それぞれの指標の意味をしっかりと覚えておきましょう。