国内でもキャッシュレスへの関心が高まる中、多くの事業者が参入しているのがQRコード決済だ。国内の規格統一に向けた動きもある中で、楽天は「楽天ペイ」の展開を進めている。
8月22日に楽天は、人気キャラクター「お買いものパンダ」をテーマにしたカフェを期間限定でオープンした。このカフェに仕掛けられた、QRコード決済の普及に向けた工夫をご紹介する。
QRコード決済の隠されたデメリットとは
楽天の「お買いものパンダ」は、若い女性を中心に高い人気を誇るキャラクターだ。プロデューサーである楽天 顧客戦略統括部 ヴァイスジェネラルマネージャーの山岡まどか氏によれば、カフェの予約席の倍率は8倍に達したという。
レジでの支払い手段は、現金や各種クレジットカードなどのほかに「楽天Edy」と「楽天ペイ」に対応する。楽天EdyはSuicaなどと同じ「FeliCa」を用いた非接触式の電子マネーであるのに対し、楽天ペイは実店舗での利用時にはQRコードを使うのが特徴だ。
QRコード決済には、スマホのカメラで用意されたQRコードを読み取る方式や、スマホの画面に表示したQRコードを店舗側がリーダーで読み取る方式がある。カフェでは、店舗のタブレットに表示したQRコードをスマホアプリから読み取る、前者の方式を採用した。
実際にはQRコードを介して取得した情報を用いて、楽天に登録したクレジットカードで決済が行なわれる仕組みだ。店員にクレジットカード番号を知られることがなく、安全性も高い。
QRコード決済では、対応するスマホの機種も幅広い。「おサイフケータイ」対応機種に限られる楽天Edyとは異なり、QRコードならスマホのカメラで読み取りができるため、旧モデルのiPhoneやSIMフリー機など、ほとんどのスマホが対応している。
こうしたメリットがあるとはいえ、QRコードには手間がかかるというデメリットもある。スマホのロックを解除し、アプリを起動。そこからQRコードの表示や読み取りの機能を呼び出す必要があるなど、一瞬のタッチで終わるFeliCaに比べてはるかに面倒だ。
QRコード決済の普及に向けて、この手間をどう乗り越えてもらうかが課題となっている。楽天のアプローチを次に見ていこう。
手間を上回るメリットを打ち出せるか
楽天によるお買いものパンダCaféでは、楽天ペイを使った場合に会計から200円を値引きしている。あくまで限定的なキャンペーンであり、恒久的な値引きは期待できないものの、ほかの支払い手段より安いとなれば消費者がQRコードに関心を持つきっかけになるだろう。
次に、ポイントの使いやすさがある。他の電子マネーを使うとき、支払いとは別にポイントカードを出すのは面倒で、ポイント付与をあきらめることもあった。だが楽天ペイなら、アプリに楽天ポイントの機能が統合されており、ポイント付与を受けることも、ポイントでの支払いも簡単だ。
カフェ内ではQRコードに親しむ仕掛けも用意されていた。QRコードを読み取ると独自のアニメーションを楽しめるので、ついついQRコードにカメラを向けてしまうというわけだ。LINEのID交換で使うためQRコード自体の認知度は高いが、活用シーンが広いことを知ってもらうのに役立っている。
店舗側のメリットとして、アプリの活用が挙げられる。Suicaなどの電子マネーでは、決済端末に打ち込んだ金額を支払ってもらうことしかできない。だがアプリを介することで、キャンペーン情報やクーポンなどを見せるチャンスがあることになる。
消費者視点で見れば、ほとんどの客は、よほど愛着のある店舗でもない限りそれほど多くの情報提供は望んでいないだろう。だが、クーポンのようにお得な情報があれば興味を持つ人は増えそうだ。
このようにQRコード決済は、現金やFeliCaに比べて手間が多いというデメリットはたしかにある。だがポイントやクーポンで消費者にもメリットがあるという認識が広まれば、普及に向けて勢いがつきそうだ。
(山口健太)