8月31日(現地時間)、ドイツ・ベルリンで開幕を迎えたIFA2018、初日の基調講演はファーウェイのRichard Yu氏(Consumer Bisiness Group CEO)が登壇した。昨年(2017年)、AI対応プロセッサとしてKirin 970を発表し、スマートフォンのP20シリーズ、Mate 10シリーズにKirin 970を搭載した同社。そのNPU(Neural network Processing Unit)を駆使した数々のAIサービスで、スマートフォンにおけるAIをリードするファーウェイの名を知らしめた。
こうして昨2017年のファーウェイは、「Mobile AI = On-Device AI + Cloud AI」であると定義した。Mate 10、P20シリーズに搭載されたSoCであるKirin 970は、世界初のNPU搭載SoCであり、On-Device AIへの第一歩だった。それによって翻訳やローパワーAR、写真などをAI処理することで、高度なサービスを提供できていた。
今年のファーウェイはというと、IFA2018基調講演の場でいきなり新SoCのKirin 980を発表したのだ。といっても、IFA開幕と同時に同社のブースには、すでにNPU内蔵プロセッサとしてKirin 980がショーケースに収められた状態で披露されていた。
今回の7nmプロセスによる新プロセッサKirin 980は、実にデュアルNPUでスマホAIの世界を塗り替えるという。7nm SoCとして、Cortex-A76ベースとして、デュアルNPU搭載、Mali-G76GPU搭載、1.4Gbps Cat.21 Modem搭載、2133MHz LPDDR4Xサポートなど、数多くの世界初をひっさげての登場だ。Yu氏の基調講演は最初から最後まで、堰を切ったように新プロセッサの説明にあてられた。
36カ月の準備期間、1,000以上のセミコンによる作業、5,000以上の評価ボードなど、7nmへの道は過酷だったという。2015年に7nmプロセスの開発を開始し、3年目の今年、ついに量産に入ることができた。10nmプロセスに比べて2割のスピードアップ、4割の消費電力低減、1.6倍の微細化だ。これが、完成した7nmのKirin 980の衝撃だ。
プロセッサの構成は、2.76GHzのA76×2と1.92GHzのA76×2、そして、1.8GHzのA55×4の2Big、2Middle、4Little構成だ。スマートフォンで音楽を再生したり、SNSを楽しんだり、負荷の高いゲームを楽しむなど、シーンに応じて適切なプロセッサ活用がスケジューリングされる。
ステージ上ではいたるところでSnapdragon 845との比較が行われ、その優位性が訴求されていた。特にゲームにおけるパフォーマンスは22%もすぐれているにもかかわらず、消費電力は32%少ないという。しかも、KirinのGPU Turbo機能を併用することで、さらにパフォーマンスは向上する。
デュアルのイメージシグナルプロセッサ(ISP)による処理性能向上も見逃せない。カメラプロセッシングで46%、レコーディングパワーで23%、レコーディングレーテンシーで33%の改善が認められるという。デモンストレーションで披露されたビデオのリアルタイムレンダリングにおいても、ディティールの描写が段違いなのがわかる。P20世代と同じセンサーであるとは思えないほどだ。
4x4 MIMO、5CC CA、256QAMなどによる4.5GのLTE対応もアピールされた。また、2波対応GPSにより測位性能も向上している。さらには、5Gへの対応も準備完了しているようだ。
とにかくSoCの技術説明会のような基調講演だった。細かいスペックを一気にまくしたてるYu氏は、その興奮した様子がこちらに突き刺さるように伝わってきた。ただ、このモンスターSoCで、スマートフォンのAIはどう変わるのか。その具体的な使い方についてはこのステージでは今ひとつ語られなかった。
Kirin 980が搭載される最初のスマートフォンとなるのはMate 20シリーズだが、このステージで、10月16日にロンドンで発表されることが明らかになった(ファーウェイが別ブランドで展開するスマートフォンのHonor Magic 2にも、Kirin 980が搭載されることが発表されている)。AIが向上させるユーザー体験の具体的な点についての話は、その日を待って欲しいということだ。発表を楽しみに待ちたい。