ソニーが、フラグシップモデルのイヤホン「IER-Z1R」をドイツで開催されているエレクトロニクスショー「IFA2018」の会場で発表しました。欧州では11月以降から順次発売を予定しています。価格は2,200ユーロ(約284,000円)。導入時期は未定ですが、日本での発売も楽しみなイヤホンです。
コンサートホールの特等席に座って聴いているような音
本機はオーディオプレーヤーのウォークマン「NW-W1Z/A」や、据え置き型のヘッドホンアンプ「TA-ZH1ES」など、フラグシップラインのオーディオ製品が名を連ねる「Signature Series」に新しく加わることになります。
ドライバーや内部構造に、本機のために新開発した技術を惜しみなく投入した、気合の入ったプレミアムモデル。ハイレゾ対応のイヤホンとしては異例の、100kHzに到達する超高域再生と、圧倒的に広い音場の再現力、そして徹底したディティールの描写を特徴としています。
ソニーでは「コンサートホールの特等席で聴いているような音楽体験を、常に持ち歩きたい人のためのイヤホン」として、本機の完成度を説明しています。
繊細な音を生み出す内部構造
本体には、受け持つ再生周波数帯域と種類が異なる3基のドライバーによる「HDハイブリッドドライバーシステム」を搭載。中低域は12mm口径のダイナミック型ドライバーが担当し、高音域をカバーするBA型ドライバー、そしてもうひとつ超高音域の再生を受け持つ5mm口径のダイナミック型ドライバーによって、3Hzから100kHzまでのワイドレンジをカバー、つながりの良いスムーズなサウンドを再現します。
12mm口径の中低域の再生を受け持つダイナミック型ドライバーには、内部損失の高いアルミニウムコートLCP振動板の中をくり抜き、中心に軽量・高剛性な薄膜マグネシウム合金を使ったドーム状の振動板を配置。開放型のフラグシップヘッドホン「MDR-Z1R」が搭載する70mm口径の大型ドライバーのノウハウを活かしながら、国内工場で製造した品質の高いドライバーユニットにより、深く沈み込む低音、クリアで微小な音へのレスポンス性能に富んだ中高音域の再生を両立させました。
高域用のBA型ドライバーの振動板にも剛性が高く、内部損失に優れるマグネシウム合金が使われています。電導効率の高い銀コート銅線を用いたボイスコイルにより、ドライバーの駆動力を高めています。そして端子部には金メッキ処理をかけて、透明感なハイトーンと微小な音の緻密な描写を獲得しています。
100kHzの超高音域を再現するために
100kHzに到達する超高音域を再現するために、新規開発の5mm口径超高音域用ダイナミック型ドライバーを搭載しています。アルミコートLCP振動板と外磁型磁気回路により、音色の明瞭度を高めてパワフルな駆動を合わせて実現しています。ドライバーユニットを超小型化できたことで音導管を同軸線上に配置しています。
3つのドライバーユニットはマグネシウム合金製のインナーハウジングに装填。各ドライバーユニットの音が最適な位相特性でつながるよう、音が伝わる経路も緻密に調整しました。ソニーではこの構造を「リファインドフェイズ・ストラクチャー」と呼んでいます。各ドライバーユニットから発生する不要な振動を極限まで押さえ込めることによって、音が引き締まってクリアに聴ける効果が得られます。
イヤホンのエンクロージャー内部にある音響室にもひと工夫が凝らされています。ドライバーユニットの後方に設けた拡張音響空間に、極細の音導管を設けて振動板の背面に生まれる圧の抜けをつくり、空気の流れを綿密にコントロール。周波数特性を本機に合わせてチューニングしたことによって、各帯域の音のバランス、つながりは極上のレベルに。驚くほどに豊かな音の広がり感も味わえました。
ネットワーク回路には音質にこだわったフィルムコンデンサを使い、振動や電気的な干渉を限界まで抑えています。繊細で伸びのある高音再生を引き出す原動力になっています。そして各部品の接合部にはソニー特性の“高音質はんだ”を使いました。
外装にも贅を尽くした
イヤホンの最上位モデルは当然ながらリケーブルにも対応します。イヤホン側の端子形状は汎用性の高いMMCX。3.5mmのステレオミニケーブルと、4.4mm/5極のバランスケーブルがパッケージに同梱されます。ケーブルの導体はOFCの表面に純銀コートをかけて、ツイストペア構造としてノイズの影響を回避。ケーブルによる信号伝送の劣化をとことん回避しています。イヤホン側とプレーヤー機器側、両方のプラグは非磁性体メッキをかけて電流の流れをスムーズにしています。そして被覆にはタッチノイズを軽減するためにシルクを編みました。
きらびやかなハウジングの素材は硬度が高く、腐食にも強いジルコニウム合金。フェイスプレートには凹凸を設けたペルラージュ加工として高級感を持たせています。カラーは明るいシルバー。
イヤホンには金属をふんだんに使っているので、手に持ってみるとしっかりとした重さを感じてしまいます。筐体の体積は一般的なイヤホンよりも大きめに感じられるかもしれませんが、耳にあたる凹凸を減らしたり、ユーザーが心地よく身につけられるよう随所に工夫を凝らしています。
製造は国内の熟練作業者によるハンドメイド。厳しい検査をパスしたユニットだけが出荷されるという、Signature Seriesらしいこだわりを詰め込んだフラグシップのイヤホンが誕生しました。