西日本鉄道は31日、筑紫工場にて観光列車「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」へ改造中の車両を報道関係者らに公開した。既存の通勤用電車6050形を座席数52席の本格的な観光列車に大規模改造し、2019年春から天神大牟田線で運行開始する予定となっている。
同社の6050形は1995年デビュー。6000形をマイナーチェンジした片側4ドアの通勤用電車で、VVVFインバータ制御装置と誘導電動機を採用しており、この駆動システムは以後の同社車両のベースとなっているという。6050形は2018年4月の時点で7編成26両(3両編成×2編成、4両編成×5編成)在籍しており、このうち6053・6253・6353・6553号車の4両編成(1996年川崎重工製)で車体更新工事・観光列車化工事を同時施工。乗客数や車内レイアウトを考慮して1両減車し、6053・6353・6553号車の3両が観光列車「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」となる。排除した1両(6253号車)は廃車予定とのこと。
報道公開では改造中の3両に加え、同型車両の中から3両編成の6157・6357・6557号車も並べて展示。車両および工事の概要説明を行った西日本鉄道鉄道事業本部運転車両部車両課の久木田珪一氏は、観光列車を6050形の改造とした理由について「当初は老朽代替の始まっている5000形で考えていましたが、お客様に快適にご利用いただくため、少しでも乗り心地の良い車両にしたいということで、VVVFインバータ制御装置などを搭載した6050形としました」と述べた。改造中の3両は構体工事を経て車体前面の貫通扉が塞がれ、車体側面に片側4カ所あった乗降扉も先頭車1カ所、中間車2カ所(幅を半分程度に縮小)のみに。床下機器(電装品)も代替・更新されている。
車内艤装(製作した車内装飾品を車体に取り付ける工程)はこれからだが、大牟田方先頭車の車内では木の床に加え、バラストや城島瓦のタイルも床面に取り付けられていた。城島瓦は壁面のタイルにも使用される。その他、天井に八女の竹を使用した竹編み、壁面に福岡出身アーティストが製作したTIN(ブリキ)パネルも装着する予定。これら車内装飾品の展示も行われた。
久木田氏はこれまでの工事で苦労した点として、「走り始めて20年経った車両のため、各部に歪みが出て設計図通りの取付けができず苦労したところもありました」「車内で竹編みや木の板を使用するため、燃焼試験に合格するまでにも苦労がありました」と明かす。車内装飾品は職人による手作りで、細心の注意を払った作業が必要になる。従来の通勤車とは違いデザイナー要望を満たす施工も必要となるため、作業時間が大幅に増加しているという。それでも「いま少しずつ形が見えてきたところなので、しっかり施工して皆さんに喜んでいただける観光列車を作りたい」と久木田氏。壁面・天井・機器搭載などの工事は11月末の完成をめざすとしている。
観光列車「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」の料金や運行・予約開始日は10月に発表される予定。2019年春の運行開始にあたり、出発式も開催される。金曜日・土曜日・日曜日・祝日にランチ・ディナーの運行を予定し(モーニングの運行は現在検討中)、ランチは11時30分頃に西鉄福岡(天神)駅を発車して大牟田駅へ、ディナーは17時頃に大牟田駅を発車して西鉄福岡(天神)駅へ、それぞれ約2時間の行程となる。
外観はキッチンクロスをイメージした赤いチェックのデザインが特徴。車内では中間車に設置する「窯」で焼き上げたピザをメインディッシュに、産地や旬にこだわった沿線地域の食材をふんだんに使用した料理を提供する。運行開始時の春メニューでは、博多和牛や有明海柳川産のお刺身海苔、みやま市産のセロリなどを使った前菜、八女市産のたけのこや大木町産のアスパラガスを使用したピザなどを用意。ウェルカムドリンクとして「あまおうプレミアムスパークリングワイン」を提供する。