ミラーレスや一眼レフでなめらかな動画を撮影するための「カメラスタビライザー」、これまでは大きくて扱いづらく、しかも高価な製品しか存在しませんでした。そのような状況のなか、意欲的な価格とサイズのカメラスタビライザー「MOZA AirCross」が登場。どれほどの実力を持っているのか、さっそく実機でチェックしてみました。

片手でも扱え、価格が安いのが画期的

昨今、4K画質の動画撮影に対応するミラーレスやデジタル一眼レフが増えてきました。プロ用のムービーカムと同等か、それ迫るクオリティの精細な動画撮影が楽しめるようになっています。

  • 近ごろのミラーレスやデジタル一眼レフは、4K画質の動画撮影に対応する機種が大半を占める。写真は、4K動画撮影に対応した富士フイルムのミラーレス「FUJIFILM X-H1」

  • キヤノンのエントリーミラーレス「EOS Kiss M」も、動画はしっかり4K画質に対応している

ただし、4K画質の動画が撮影できるといっても、満足するクオリティの動画が容易に撮れるとは限りません。カメラを手持ちして4K動画を撮影すると、高精細だけにブレや揺れがより気になってしまうからです。ボディやレンズに手ぶれ補正機構を搭載していても、歩きながらの撮影で見られる大きな揺れまでは補正できないのです。ブレや揺れを抑えるには、カメラをしっかりとした三脚に固定するのが一番。しかし、撮影の自由度が極端に低下してしまうので、動き回る被写体を撮影するのはほぼ不可能になってしまいます。

手持ちでもブレや揺れの少ない動画を撮影するための味方となるのが、カメラ用の「スタビライザー」です。歩きながらの撮影でブレや揺れ、傾きが発生しても、それを打ち消すようにカメラを固定する部分が電動で細かく動くことで、安定感のある動画に仕上がる仕組みになっています。

この手のスタビライザーは、ドローンメーカーとして有名な中国DJIの「Osmo Mobile 2」など、スマートフォン用の製品が普及しています。ただ、重量のあるミラーレスや一眼レフに対応したカメラスタビライザーは安いものでも十数万円と高価なうえ、両手でしっかり保持する必要がある製品がほとんどで、普通の人が手軽に扱えるとはいえませんでした。

  • スマホ用のスタビライザーは、1万~2万円前後で購入できる値ごろ感と扱いやすいサイズが好まれ、日本でも普及が進んでいる。写真はDJIの「Osmo Mobile 2」

  • デジタル一眼に対応したスタビライザーは、これまでプロが映像制作で利用するような大型で高価なモデルしかなかった。写真はDJIの「RONIN-M」(実売価格は税込130,000円前後)

ところが、リンクスインターナショナルが5月末に発売した中国Gudsen Technologyの「MOZA AirCross」は、大口径レンズを搭載したフルサイズミラーレスが装着できる性能を持ちながら片手でも扱え、しかも実売価格は税込65,000円前後とお手ごろ。これまでのプロ向けカメラスタビライザーとは一線を画す価格とサイズ、使いやすさに仕上げたことで注目されています。

  • リンクスインターナショナルが発売した一眼向けのカメラスタビライザー「MOZA AirCross」。3軸のジンバルを備えるカメラスタビライザーとして基本的な機能を押さえつつ、構造を簡略化して片手で扱えるようにするなど使いやすさを追求した。写真のミニ三脚も付属する

使用前にバランスを取るのがやや面倒

MOZA AirCrossは、ミラーレスなどのデジタル一眼に対応する3軸ジンバルを採用した、片手持ちが可能なカメラスタビライザーです。本体の主要部分はアルミニウム合金が用いられており、重量は896gに抑えられています。ペイロード(耐荷重)は1.8kgで、ボディとレンズを合わせて1.8kgまでのカメラが装着できます。

  • MOZA AirCrossは1.8kgまでの機材を搭載できる

  • ソニーのα7シリーズと標準ズームレンズの組み合わせなら余裕で対応する

  • キットには、スタビライザーのほかに充電器やミニ三脚などが付属する。標準添付のこのケースに、スタビライザーやアクセサリーなど一式を収納して手軽に持ち運べる

  • 上がカメラの向きをコントロールするジョイスティック、下が電源ボタン。いずれもプッシュすることでジンバルの機能を変更できる

MOZA AirCrossを使用するにあたって、まずカメラを実際に乗せてバランスを取る必要があります。手順としては、最初にカメラの前後のバランスを調整し、その後チルト軸、ロール軸、ヨー軸とバランスを取っていきます。慣れないと手間と時間がかかり、面倒に感じるかもしれません。しかし、この調整ができていないと本来の補正効果が出ませんので、あきらめずに落ち着いて調整してください。慣れてくれば、調整は3分もかからずできるかと思います。

  • レンズを装着したカメラを固定したら、カメラ自体の前後のバランスを調整する

  • 次に、チルト軸のアームのバランスを調整

  • 続いて、ロール軸のアームのバランスを調整

  • 最後に、ヨー軸のアームのバランスを調整して完了

  • カメラは、付属のプレートを介してMOZA AirCrossに装着する仕組みになっている

なお、レンズを交換したり、光学フィルターやレンズフードを着脱した場合はバランスが変わってくるので、その都度調整を実施する必要があります。デジタル一眼に対応したカメラスタビライザーは、そのような繊細さがあることは覚えておきましょう。