『木枯し紋次郎』『新・極道の妻たち』などで知られる“日本映画界の巨匠”中島貞夫監督の20年ぶりとなる長編最新作『多十郎殉愛記』(2019年春公開予定)の制作発表会見が21日、都内で行われ、主演の高良健吾、多部未華子、木村了、中島監督が出席した。
同作は、「殺陣の魅力を存分に見てもらうこと」をコンセプトにした、中島監督の59年の経験を次世代に受け継ぐ“ちゃんばら時代劇”。舞台は幕末の京都。長州を脱藩した清川多十郎を主人公に、1本の刀に込めた「男の情念」や「殉愛」を描く。
中島監督は「“ちゃんばら”というパフォーマンスが消えようとしているのをなんとかしたいという気持ちがあり、やってみようと。『時代劇は死なず ちゃんばら美学考』というドキュメンタリーを作りましたが、ドラマとしてどうしても実現したかった」と思いを告白。「斬る、斬られる。間合いが非常に難しいが、高良君を中心に頑張ってくれた」「3人が大変いい動きをしてくれたし、何よりも脚本の理解が深い。3人に関して非常に満足しております」と高良、多部、木村の演技を絶賛した。
主人公・多十郎役の高良は、中島監督について「役者としてという以外のこともたくさん学んだ。言葉もたくさんありますが、立ち姿で教えてくれたこともたくさんあった。殺陣というのは思いやりと信頼がないとできないということ。そして、相手をけがさせたらダメ、けがしてもダメ」と話し、「監督の人との向かい方から学ぶことがたくさんありました」と振り返った。
多十郎に好意を寄せるおとよ役の多部も「何より現場で感じていたことは、監督の人柄。スタッフ一人一人が監督のために頑張る、監督が大好きだからその現場にいるという空気感の現場で、私も高良さんも木村さんも監督のために頑張りたいという気持ちが強くなりました。一人一人に愛情を与えているからこそ、私たちも返さないといけないという強い気持ちになれたのはすごく不思議な感覚でしたし、監督のことを毎日毎日思いながら現場にいられるのは幸せなことだなと思いました」と監督への思いを語った。
そして多部が「『これは一種の恋だよね』って高良君とよく話していました」と明かすと、高良も「恋ですね」と断言。「『高良ちゃん』って言われるとキュンとします」と笑った。多十郎の腹違いの弟・数馬を演じる木村も「最初は『数馬』って呼んでくれていたんですけど、途中から『木村ちゃん』って。その瞬間、監督との距離が縮まってうれしかったのを覚えています」とうれしそうに話し、「楽屋から出たくないくらい緊張していたのが、撮影が進むにつれて監督の人柄やスタッフさんの温かい感じに心を奪われて、最終日は帰りたくなかったです」と振り返った。
最後に高良は「今のこの時代の時代劇の技術の限界に挑戦した時代劇ではなく、今この時代に生きている自分たちが役者の限界や肉体の限界に挑戦した時代劇になっている。そういう気持ちを持って、中島組の時代劇をやらせていただきました。人の重みや、なぜ今刀を抜いたか、なぜ今斬ったか、なぜ斬らなかったか…そういう一つ一つを現場みんなでこだわり抜いて作った時代劇です」と作品に込めた思いを語り、「時代劇が初めての方も感覚的にすんなり入ってきておもしろいと思っていただけると思いますし、時代劇が好きな方はこんなところまで細かいなと思ってもらえる時代劇にもなっていると思います。自信があるので、ぜひみなさんよろしくお願いします」とアピール。
中島監督も「時代劇であるということをあまり意識せずにやったつもりです。カッティングもほとんど現代劇と同じ。現代劇の中でもテンポの速いものを意識しています。見ていただければ、若い人たちに時代劇のおもしろさ、ちゃんばらのおもしろさが伝わってくれるのではないかなと。ぜひ伝わってほしいというのが私の思いでございます。なんとか作品をヒットさせて、こういうタッチの時代劇がこれからも作っていける状況を作りたい」と願った。
会見では、10月11日から京都で開かれる「京都国際映画祭2018」でワールドプレミア上映されることも発表され、上映を祝して、京都国際映画祭実行委員長の中村伊知哉氏も登場し、「こんなに光栄なことはございません。日本、世界のみなさまにご覧いただきたい」と感慨深げに語った。