第2部では、「傾聴」と「伝える」技術を学ぶワークショップが行われた。具体的には、同社のインサイド・セールスの業務を例にとり、「見えない相手に伝える」練習が行われた。
インサイド・セールスとは、電話やメールといったコミュニケーションツールを通じて、見込み顧客への営業活動を行う内勤型の営業をいう。企業を訪問して営業活動を行う「フィールド・セールス」と異なり、実際に相手の顔を見て、コミュニケーションをとらずに、セールス活動を行わなければならない。
例えば、PCとモニタを接続する際にVGAケーブルが必要だが、インサイド・セールスの場合、相手がそのコネクタの形状がわからなければ、表現を替えてその内容を伝えなければならない。ここでは、相手が何を言いたいのかを理解したうえで、相手が理解する形でその内容を伝える必要がある。
デルの社員である講師の人は、顧客とコミュニケーションをとる際、「話す」よりも「聴く」ほうが多いほうがベターであり、今回のワークショップでは「傾聴すること、伝えることの難しさを学んでもらいたい」と語っていた。
見えないものを伝える練習として、2人1組でゲームが行われた。その内容は、クイズに答える人が自分に見えない状態で国旗のカードを引いて相手に渡し、渡された人は相手が少しでも早く答えられるよう、わかりやすいヒントを出すといったものだ。
自分の知っていることを相手が知っているとは限らず、なかなか正解が出ずに、苦戦しているペアもいた。
ワークショップ中に、引率できていた川崎市立川崎高等学校附属中学校 教頭の西道生氏に話を聞いた。
同中学校では、2年生全員が3日間の職業体験を行うそうだ。毎年、川崎市内の30~40カ所の企業や組織で体験を行う。どの企業・組織を訪問する場合も事前学習を行っている。基本的に、3日目は午前中で終了し、午後は学校に集まって、報告会を行うそうだ。今回のデルの職業体験について、参加者たちがどのような報告を行ったのかは気になるところだ。
西教頭は職業体験について、「学校以外の大人から学ぶことができるいい機会。学生たちの意見や体験は共有することで、今後に生かしていく」と語っていた。
今回参加した7名の学生は「外資系企業」または「IT」に興味があるとのこと。職業体験先は学生の希望や適性に応じて、決まるそうだ。学生の1人は「ITの力で社会に貢献したい」と語っており、実に頼もしい限りだ。
デルは教育分野にも力を入れているが、川崎市の中学生の職業体験を受け入れたのは今年初めてだそうで、カリキュラムも手探りで決めたとのこと。学生との触れ合いから、同社が学ぶこともあるだろう。
今の大人の常識が通じなくなるであろう時代に、社会人として働くことになる中学生たち。職業体験が彼らの人生に何らかの糧をもたらすことを期待したい。