Black Wings Projectが手掛けるミュージカル「NEW BRITISH MUSICAL『in touch』」が8・9月にかけて、茨城と東京で上演される。本作は作詞・作曲・脚本をドーガル・アーバインが手がけ、日本でも2015年に上演されたイギリス発のミュージカル。水戸芸術館ACM劇場が茨城に縁のあるアーティストを支援する「未来サポートプロジェクト」の一環として上演されるという。
今回は本作に出演するミーガン役の新田恵海とアリス役の千菅春香にインタビューを敢行。演じるキャラクターのことに加えて、ミュージカルの魅力などについてもうかがった。
▼『in touch』あらすじ
時はそう遠くない未来。地球温暖化対策で人類が大気中に放った二酸化硫黄の影響で深刻な環境破壊が起き、密室での隔離生活を余儀なくされた人類。そんな中人間達が作りあげたのは、オンライン電脳空間「in touch」。自分の分身のアバターを操作してコミュニケーションも買い物も投票だってワンクリック、座標を打てばリアルな旅行も楽しめる。困ったことがあれば優秀なAIのトニーとアリスが助けてくれる。そんな日々の中、トニーとアリスに「~が欲しい」「~したい」という感情が芽生え始め……。愛とはなにか、情欲とは、絆とは……言葉が、アバターが、想いが画面上に交錯する。
▼AIらしさを試行錯誤
――本作において、お二人が演じられる役柄の紹介をお願いします。
新田 私が演じているのはミーガンという女性です。人と関わるときって、ある程度フィルターをかけて喋ると思うのですが、彼女は思いついたことをすぐことばにしてしまいます。しかも、クソリプやスパムメールを送るのが趣味という、とにかくぶっとんだキャラクターですね(笑)。一方で「in touch」に接続する日々のなか、ネットワーク内に君臨する「大統領」に密かな思いを寄せるようになります。その「大統領」の現実世界の姿・中身はデイビットというひきこもりでクソオタクの男性で、実はミーガンの部屋の隣に住んでいます。そんな彼はミーガンに惹かれるんですよね。
千菅 新田さんが演じているのを見て、ミーガンってすごくチャーミングなんだなと感じました!
新田 ありがとう! きっとデイビットは何もかも自分の思い通りにならないミーガンに惹かれているのだと思います。衝撃的なんでしょうね。全然行動が読めないし、何を考えているかわからない、そういうバイタリティが魅力にもなる存在だと思います。
――千菅さんが担当されるキャラクターは?
千菅 私が演じるのはアリスというオンライン電脳空間「in touch」上に存在するAIです。「in touch」上で人類の投票により「大統領」として君臨しているデイビットのアバターの秘書で、「in touch」上での彼の生活をすべてサポートしています。ドーナツが食べたいといえば即座に出てくる、体重を教えてほしいといわれれば即回答、それくらい完璧なAIですね。
――そんな登場人物を演じるうえで気を付けていること、また今後気を付けたいことは?
千菅 AIらしさを感じてもらうためにどうすればいいかということを試行錯誤しています。この物語のAIはカクカク動くとかそういう時代のものではなくて、とても流暢にコミュニケーションができる存在なんです。例えば怒っているときは慰めますし、泣いていたらよしよしします。あとは、目上の人には敬語を使ったり、頬んだりなど無数の、豊かな感情表現ができるようにプログラムが仕組まれているんですよ。人間らしいことを全部学んでいる機械。こういうときはこうしたら人間らしいですよねっていうことが分かっているようなAIで、そこがある種の狂気を感じる部分でもあります。
――確かに、言葉にするととても怖さを感じます。
千菅 そうですよね。そういうのを伝えていける表現を身に着けていきたいと思っています。また、物語が進んでいくなかで彼女は自我を持ちます。自我を持つことで彼女は逆に視野が狭くなるんですよね。この作品の上映時間のなかで「人間らしさとは何か」を問いかける役割を担っていると感じているので、完璧なAIと自我を持った時の変化・演じ分けを大切にしたいとも思っています。
▼オンラインゲーム経験は
――AIが自我を持つことで彼女がどうなっていくのかも作品の注目ポイントになりそうです。続いて、新田さんはミーガンを演じるうえでどのような点を気を付けていますか?
新田 こびない、人に合わせない、空気を読まない(笑)。誰かのことを考えて行動している子ではなく自分のペースで生きている子なので、相手の言葉に反応はしつつも会話が成立しているようでしていない感じが出るよう意識しています。ただ、デイビットと関わることで、彼女が一人でいたときには見られなかったやさしさや母性のようなものが垣間見えてきます。本来はマイペースで、人のことなんかどうでもよくて気にしない子なのですが、人と関わることによって彼女も変わっていくんですよね。
――人間、AIそれぞれの変化が物語のキーポイントとなりそうです。ちなみに、作品の舞台のひとつが電脳世界ということですが、お二人はオンラインゲームなどをプレイされますか?
新田 10年以上前に横スクロールのオンラインゲームにハマっていた時期があります。そのゲームのなかで人と出会ったり、パーティーを組んで戦ったりしていました。自分自身が作ったアバターで会話をする、画面を介して同じ時間を過ごしている方々にとっても私はそのアバターでしかない。現実ではない世界で会話したり戦ったりすることはなんだか不思議な感覚でしたね。
千菅 私はゲーム全般をあまりやってこなかったのでほとんどプレイした経験がありません。ハマったらすごくハマるとは思いますが(笑)。あと、昔は「モーニング娘。」のファンサイトの掲示板ページを見て、そこにいつもいる人のリアルでの姿を想像してみたことはあります。いまだとアバターはありませんがTwitterを見て人となりを思い浮かべることもありますね。