台風と言えば、日本の夏の風物詩と言っても過言ではない。毎年のように日本に上陸し、大きな爪痕を各地に残していく。そして残念ながら、台風による強風や大雨などで命を落とすケースも出てくる。ただ、事前にしっかりと準備をしておけば、そのリスクをいくらか低減させることは可能だ。
そこで今回、気象庁予報部予報課 アジア太平洋気象防災センターの石原洋予報官と同予報部予報課気象防災推進室の坪井嘉宏 洪水情報係長に「台風から身を守る術」などをうかがった。
台風の階級の決まり方
そもそも、台風の基となるのは海上にできる積乱雲だ。熱帯の海上で上昇気流によって次々と発生した積乱雲が多数まとまって渦ができると、渦の中心に向かって水蒸気を含んだ空気が周囲から流れこみ、積乱雲がさらに発達する。
雲のできる過程で水蒸気が水粒に変わるが、その際に多くの熱を放出。その熱が周囲の空気を暖め、上昇気流はさらに強まる。この工程が繰り返されると積乱雲がまとまって熱帯低気圧が発生し、その規模が最大風速(10分間平均)およそ17m/s以上となると台風と呼ばれるようになる。
「台風は最大風速で階級を分類しています。一般に台風はその中心付近の風速が最大となっており、33m/s以上となると『強い台風』となります。同様に44m/s以上では『非常に強い台風』、54m/s以上となると『猛烈な台風』となります。昔は中心気圧で分類していましたが、防災の観点上、風の強さの方が重要であるため、現在は世界各国で最大風速をもとに台風の強さを階級分けしています」(石原予報官)
そして、台風の規模を表すのは「強さ」のほかに「大きさ」がある。これは強風域(風速15m/s以上の風が吹いている範囲)の半径を基準に決めている。500km以上~800km未満なら「大型(大きい)」で、800km以上なら「超大型(非常に大きい)」となる。
最大風速と強風域は台風によって大きく異なる。「超大型で猛烈な台風」が、分類上では最も威力のあるものとなる。「超大型で猛烈な台風」が近づいてくるとなったら、私たちは最大級の警戒をする必要がある。
台風は年々増えているのか?
台風は毎年発生数が異なっているのは周知の事実だろう。そして、その発生には「エルニーニョ現象」と「ラニーニャ現象」も関係している。
エルニーニョ現象は、太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より高い状況が1年程度続く現象。反対に、同海域で海面水温が平年より低い状態が続くのをラニーニャ現象と呼ぶ。気象庁はこの2つの現象により台風の発生数がどのように変化しているかを統計的に分析しており、「エルニーニョ現象が終息した年の7~9月は、台風の発生数が平常時より少ない」などの傾向を発見しているという。
近年は、北海道と岩手県で記録的な大雨をもたらすなどした平成28年8月の「台風第7号、第9号、第10号、第11号」や、平成29年7月九州北部豪雨にも関わった「台風第3号」など、各地に甚大な被害をもたらすような台風が散見される。このような状況を鑑みると、年々台風の発生件数が増えているように感じてしまうが、実際はどうなのだろうか。
「台風は平均すると年間で25~26個発生しています。ただ、大気の流れによって進路が変わるため、このすべてが日本に接近・上陸するというわけではありません。統計上では、これまでの年間の台風発生数は最高で39個、最低で14個でした。そして、日本に接近・上陸する台風の数が増えているという統計データはありません」
日本に接近・上陸する台風の数が増加している傾向は確認されないとのことだが、先述のようにインフラが整備された近年でも記録的な被害をもたらす台風がよくみられる。これまで以上にその襲来に備えて準備をしておかなければならないのは確かと言えそうだ。