島根富士通は、”スマートものづくり”に取り組んでいる。
2018年4月に、スマートものづくりセンターを設置。データを活用したものづくり改革を開始した。
島根富士通の神門明社長は、「これまでにもデータを活用した『カイゼン』活動は行ってきたが、IoTやAIを組み合わせることによって、さらにデータを生かすことができ、これまで以上に、ものづくりをカイゼンできると考えている。その推進役となるのが、スマートものづくりセンターであり、次世代のものづくりへとつなげることができる」と語る。
ケーブルの正しい接続をAIで判断
すでに、具体的な取り組みがいくつか始まっている。「AI活用による外観検査アルゴリズムファイルの自動生成」は、検査工程においてAIを活用した事例のひとつだ。
これまでにもカメラで撮影した画像を検査工程で活用していたが、AIを活用することで、従来の画像処理ではできなかった検査に応用している。
たとえば、組立工程において、ケーブルが正しくコネクタに挿入されているかどうかを画像で確認するには、ケーブルの挿入具合が様々なため、従来の画像処理では検出が困難だったという。だが、AIを活用することで、正常と異常を識別するための検査アルゴリズムを自動生成。これを検査プログラムに活用することで、画像をAIが判断して、様々な挿入状態を良否判定し、不具合があった場合には作業者に知らせることができるようになった。組立ラインの中に組み込むことが可能であるほか、AIは日々学習を続けており、精度を高めているという。
混雑する部品ピッキングをスマートに
「ピッキング動線の可視化」では、部品をピッキングする作業者の動線をデータ化し、それを分析。ピッキング作業者が同じ場所に集中するといったことをデータから可視化した。使用頻度の高い棚などは位置を変更したり、追加で用意するなどの改善によって、効率的な作業環境を実現することになる。
もともと島根富士通では、部品倉庫エリアにおいて、デジタルピッキングの仕組みを採用している。3Dプリンタを使用して独自に制作した腕時計型のRFIDスキャナを、ピッキング作業者が装着。間違った部品を取り出した時には、RFIDタグを読み取って、手首につけたデバイスが振動して知らせることで、ピッキングミスをゼロにすることに成功してきた経緯がある。
今回の可視化では、こうしたデジタルピッキングの仕組みを通じて収集したデータを使い、さらなる作業改善につなげるのが狙いだ。
また、「画像認識による情報の自動習得」では、画像データを活用しながら、作業者間の干渉をチェックしたり、動線表示により混在箇所を確認したりといった利用のほか、作業姿勢なども評価。しゃがんでモノを取ることが多かったり、島根富士通が活用している、富士通のものづくり統合支援 ツール「GP4」でシミュレーションした結果と差異があった場合にも、それをデータから確認できる。たとえば、歩行速度が想定よりも遅いことがデータからわかれば、「待ち」の時間が長いということがわかり、動線や作業内容を改善する必要があるといった判断ができるというわけだ。
2~3センチの極小バーコードを画像認識
「画像認識による部品情報自動トラッキング」は、組立ライン上を動く部品を画像認識することで、トラッキングする仕組みだ。
島根富士通では、従来から、バーコードの読み取りによって、正しい部品が流れているかどうかを確認していた。しかし近年は部品がコモディティ化し、複数のメーカーから調達することが一般化してきたことで、組立ラインには、異なるメーカーの部品が頻繁に流れていた。
メーカーや部品が異なると、印刷されたバーコードのサイズや位置などが異なり、バーコードリーダーでは読みとり範囲が制限され、部品の変化に柔軟に対応できないという問題が起こるが、島根富士通では、ライン上を動いている部品を、カメラを使って画像で認識。しかも、2cmから3cmという小さなスペースに貼られたバーコードも認識できるという。
また、混流生産を行っているラインでは、液晶パネルのトラッキングを活用。異なるサイズ、異なるメーカーの液晶パネルが流れているラインを、画像によって認識することで、さまざまな液晶パネルのバーコードを読みとり、トラッキングすることが可能になっている。
このほか、試験エラーが起こった際に、組立ラインの作業のなにが問題だったのかを確認する上でも、組立ラインの作業映像データを活用する。従来は、どこに問題があったのかを確認できなかったが、画像データを参考にすることで、組立ラインでの課題を発見できるようになったという。
さらに、IoT活用によるリペア(修理)工程の見える化では、組立ラインから外れて、リペアなどを行っている機器が、どういった状況にあるのかを確認するために、IoTゲートウェイとビーコンを活用して把握する。優先させるべき製品を特定することで、修理工程内のリードタイムを20%削減。優先修理した製品を定刻出発のトラックに積載し、予定通りの出荷に間に合わせることで、出荷遅延を抑制。これまで発生していた輸送コスト増を削減した。「輸送コストでは30%の削減が可能になった」としている。