外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏が2018年7月の為替相場レビューと、今後注目の経済指標やイベントをもとにした今後の相場展望をお届けする。
【ユーロ/円 7月の推移】
7月のユーロ/円相場は128.417~131.982円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約1.1%の上昇(ユーロ高・円安)となった。独政権の内部崩壊リスクやイタリアのユーロ離脱リスクが緩和した事でユーロ買いが先行。ただ、17日の131.982円をピークに反落。ユーロに独自の材料が少なかった事もあってドル/円の反落につれるケースが目立った。なお、トランプ米大統領が「ドル高は嬉しくない」などと発言した20日は、ユーロ/ドルは上昇したが、ユーロ/円は下落した。その後、下旬にかけても上値の重い展開となったが、31日に日銀が「強力な金融緩和継続のための枠組み強化」を発表すると、円売り主導で一時131円台を回復した。
【ユーロ/円 8月の見通し】
6月、7月と、漸進的ながらもユーロが強含む展開が続いている。ドイツの政局が大連立の継続で落ち着いた事や、イタリアのユーロ離脱懸念が後退(財政問題などはくすぶり続けるが)した事など、政治面の不安が薄れたことが支えとなっている。
一方で、ユーロ圏の経済には、欧州中銀(ECB)が早期に利上げに踏み切る必要性を感じるほどの強さは見られない。インフレ率(消費者物価の前年比の伸び率)は7月に+2.1%へと加速したが、コアインフレ率は+1.1%にとどまった。また、4-6月期域内総生産(GDP)は前期比+0.3%と、2年ぶりの低い伸びとなった。ドラギECB総裁は利上げの時期について「来年夏以降」との見解を示しているが、今のところ市場には、利上げ前倒し観測が浮上しそうな様子もない。そうした中、8月のユーロ/円は、下値の堅い展開が見込まれるが、7月に付けた約2カ月半ぶりの高値(131.98円前後)を超えて続伸するためには新たな買い材料が欲しいところだろう。
【8月のユーロ圏注目イベント】
執筆者プロフィール : 神田 卓也(かんだ たくや)
株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Twitterアカウント:@kandaTakuya