外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏が2018年7月の為替相場レビューと、今後注目の経済指標やイベントをもとにした今後の相場展望をお届けする。

【ドル/円 7月の推移】

7月のドル/円相場は110.277~113.162円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約1.0%の上昇(ドル高・円安)となった。上旬は、米中貿易戦争の激化に対する懸念などがくすぶり上値の重い展開となったが、次第に「貿易戦争はドル高要因」との見方に傾き、ドル高・円安に振れた。米国が対中追加関税リストを公表した11日などは、リスク回避のドル買いが活発化し、ドル/円を押し上げた。

こうした中、中国人民元が下落基調を強め、ドル/人民元が上昇するとドル/円もつれ高となり、18日には約半年振りに113円台に乗せた。ただ、19日にトランプ米大統領がドルの上昇に不満を示し、ドル安誘導発言を行うと上げ幅を縮小。下旬にかけて再び上値の重い展開となったが、31日に日銀が「強力な金融緩和継続のための枠組み強化」を発表し、大規模緩和の長期化方針を示すと円売り主導で111円台後半へ上昇した。

【ドル/円 8月の見通し】

7月のドル/円相場は小幅に上昇したとはいえ、約半年ぶりに113円台に上昇したかと思えば110円台に差し込むなど、明確な方向感は見出せなかった。8月も引き続き、方向感を模索する事になりそうだ。7月に超えられなかった年初来高値(113.39円前後)を攻略できれば、節目の115円台目指して上昇が加速する可能性がある。一方、7月安値(110.28円前後)を割り込めば、110円割れの可能性が高まり、109円台前半まで下値余地が拡大するだろう。

もっとも、8月は夏季休暇シーズンで参加者が減少しがちであり、材料の面でも手薄になりがちだ。通商問題(貿易戦争問題)が最も注目される事になろうが、この問題に対するドル/円相場の反応は定まりきれていないため、決め手にはなりにくいだろう。

貿易の減少でグローバルな景気圧迫要因となりうるため、リスク回避の円買い(ドル売り)に繋がるというのが従来のパターンだったが、7月には貿易戦争の勝者は米国しかいないとの見方などから、リスク回避のドル買い(円売り)が強まるケースも見られた。

そのほか、今年も23-25日に、米ワイオミング州・ジャクソンホールでカンザスシティ連銀主催の経済シンポジウムが開催される。今年のテーマは「変化する市場構造と金融政策への影響」。現時点では参加者等の詳細は不明だが、為替相場の今後を考える上では注目しておきたいイベントのひとつだろう。

【8月の日米注目イベント】

執筆者プロフィール : 神田 卓也(かんだ たくや)

株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Twitterアカウント:@kandaTakuya