数あるお酒のなかでも、ハードルが高いと思われがちなのがワインではないでしょうか。価格もピンからキリまであって何を選べばいいかわからないし、ラベルに何が書いてあるのかもよくわからない……そんな感じでつい敬遠してしまう人も多いでしょう。

  • お話を伺ったヤギ原さん

    サントリーワインインターナショナルの柳原亮さん(通称ヤギハラさん)にお話を伺いました

その一方で、カジュアルにワインを楽しめるお店も増えてきているので、職場の飲み会でワインが登場する機会も少なくないですよね。そこで今回は、サントリーワインインターナショナルの企画部に所属し、シニアソムリエ、チーズプロフェッショナルなどの資格も持つ柳原亮さんにワインの楽しみ方を教えていただきました。

■そもそもワインってどんなお酒?

――本日はよろしくお願いします。ワインと一口にいっても赤や白、スパークリングなどがありますよね。まずはそのあたりの基本的なところから教えていただけますか。

柳原:皆さんが一般的にイメージされる赤ワインや白ワインは“スティルワイン”といって、泡の出ないワインという意味です。これに対して泡のあるワイン、つまりスパークリングワインがあります。

――泡があるといえば、「シャンパン」なども同じですか?

柳原:そうですね。スパークリングワイン=シャンパンだと思われている方もいますが、正確には違います。シャンパンはフランスのシャンパーニュ地方でつくられているスパークリングワインのことなので、他の地域のスパークリングワインには使えない名称なんです。

――なるほど。「アメリカのスパークリングワイン」はあるけれど、「アメリカのシャンパン」は存在しないわけですね。

柳原:他にも分類としては、ワインにブランデーを加えてアルコール度数を高めた「酒精強化ワイン」や、果物などを加えた「フレーバードワイン」などもあります。酒精強化ワインだとシェリー、フレーバードワインだとサングリアなどが有名でしょうか。

――ワインといっても、スティル、スパークリング、酒精強化、フレーバードの4タイプあるということですね。ところで、そもそもワインとはどんなお酒なのでしょうか。

柳原:シンプルにいうとぶどうからつくったお酒です。……ということはよく知られていますが、他のお酒とワインが大きく違うのは、ぶどう"のみ"で作っているということです。ぶどうには果汁がありますから、ビールや日本酒と違って水は加えません。

――ぶどう"のみ"。ワインって、シンプルなお酒なんですね。

柳原:そうなんです。ぶどうだけでつくるということは、つまり原料となるぶどうの品質がそのままワインの品質に反映されるということです。ワインってよく産地によって価格や味が違うっていいますよね。あれはそういうことなんです。突き詰めるとワインづくりはぶどうづくりであり、良いワインは良いぶどうから生まれるのです。

――なるほど、たしかにワインというとフランスのイメージがありますが、他にも多くの国で作られていますよね。

柳原:イタリア、スペイン、アメリカ、オーストラリアといった世界中の国々……そしてもちろん日本でもつくっています。その土地の気候風土を反映するお酒がワインなのです。

――ということは、同じぶどうからワインをつくっても国によって味が変わるということでしょうか。

柳原:もちろんです。国や地域、さらには畑単位でも違ってきます。ワイン、つまりぶどうの味を決めるのは、「その土地の土壌」「その年の気候条件」「ぶどうの品種」「醸造技術」です。同じ土地で同じ品種を育てても、つくり手によってまったく違うワインになります。逆に同じ品種、同じつくり手であっても、ぶどう畑や気候条件が変わるとまたワインの味わいが変わります。この多様性がワインの面白さなのです。

――多様性というと、同じぶどうのお酒なのにコンビニで買える500円のワインもあれば、100万円のワインもあるわけですよね。たしかにそんな飲み物は他にはなかなかありません。

柳原:ワインというと高級なイメージを持たれる方もいらっしゃいますが、実はそんなことはないんですよね。もちろん、品質はある程度、価格によるところはありますが。

■ワインを選ぶ基準とは?

――多様性はワインの良さである一方、初心者にとっては「どれを頼めばいいかわからない」となりがちです。レストランや居酒屋でワインを頼む場合、どんな基準で選べばいいのでしょうか。

柳原:ソムリエがいる場合はお任せするのがいいでしょう。頼んだ料理、好み、予算感を伝えれば合うワインを提案してくれると思います。ソムリエがいなくて自分で選ぶ場合は、品種と国による特徴を知っておくと選びやすいですね。

――いくつか教えていただけますか。

柳原:ワイン用ぶどうの品種はいろいろありますが、メジャーなものをいくつか知っておけば大丈夫です。

【赤ワインの場合】

・カベルネ・ソーヴィニヨン
渋みがあり、重くてしっかりしたワイン

・ピノ・ノワール
繊細で上品、きれいな酸味があり気品のある味わい

・シラー
パワフルでスパイシーなワイン

【白ワインの場合】

・リースリング
アロマティックな香りとしっかりした酸味のあるエレガントな品種

・ソーヴィニヨン・ブラン
ハーブのような緑の香りがある爽やかな味わい

・シャルドネ
産地によって味ががらりと変わる品種なので、産地の気候条件とセットで選ぶ。寒い地方のシャルドネは、しっかりとした酸味の爽やかな味わいで、暖かい地方だと酸味は穏やかで果実味が豊富な味わいになる。

柳原:産地については、他のぶどうにも当てはまる部分があるので、気候条件と品種の特徴をセットで考えるとワインの味わいが想像しやすいですよ。

――たとえばチリのような暖かい土地のカベルネ・ソーヴィニヨンなら、果実味や渋みがしっかりとして酸味はそれほど多くない味になる、という感じでしょうか。

柳原:そうです、そうです。

■料理に合わせてワインを選ぶポイントは?

――料理に合わせて選ぶにはどうしたらいいでしょう。

柳原:肉には赤、魚には白といったイメージがあるかと思いますが、必ずしもそういうわけではありません。肉に白、魚に赤が合う場合も多いです。

──難しいですね。初心者向けの方法はありますか?

柳原:合わせ方はいろいろありますが、簡単なのは色合わせです。似た色のワインを選べば大きく外すことはありません。たとえば焼き鳥ですと、タレで食べるなら赤ワイン、塩で食べるなら白ワインが合います。

――なるほど。タレは赤っぽくて塩は白ですからね。

柳原:一つ豆知識ですが、ワインに合わせて何か料理を頼むなら、食材を「鶏肉」「じゃがいも」「きのこ」にしておけばだいたいのワインに合います。

──おお! この情報は今日からでも役立ちますね!

柳原:渋くて重い赤ワインのときだけは牛肉を焼きましょう。また、料理に何のワインを合わせるか困ったら、とりあえず辛口のスパークリングワインにしておくといいでしょう。ただ、ワインと料理のペアリングに正解はないんですよ。今の話はあくまで一般論ですので、自由に楽しんでいただければと思います。

――無難な"抑え"の選択肢として重宝しそうですね!