多数の有名企業が立ち並ぶ、日本屈指のオフィス街"汐留"。多くのビジネスパーソンが行き交うこの街に7月30日、新しいスタイルの銀行がオープンした。メガバンクの雄、三井住友銀行による汐留出張所「マネービバ@汐留」だ。

  • 三井住友銀行の汐留出張所「マネービバ@汐留」

同行が満を持してオープンしたのは、従来の銀行のスタイルを脱却した斬新なコンセプトのもとに考えられた、働く人のためのマネースポットである。

コンセプトは「ビジネスパーソンに選ばれる銀行店舗」

忙しく働く現役世代が銀行に抱くイメージとはどういうものだろう? まず、営業時間が短く窓口に行けない、長時間待たされる、金融商品を勧められそう、などといったことだろう。

中でも多いのは、「ネットバンキングを利用しているので、わざわざ行く用事がない」という意見である。すでに、ネットバンキングは広く浸透し、銀行アプリといったデジタルチャネルとともに利用者は増加の一途。逆に銀行窓口への来店者数は減る傾向にあり、中でも現役ビジネスパーソンの銀行窓口利用率は2~3割と低い水準となっている。少子高齢化が進む中で、銀行側としても現役世代の取引拡大は大きな課題となった。

そこで、三井住友銀行汐留出張所「マネービバ@汐留」では、「ビジネスパーソンに寄り添い、選ばれる銀行店舗」をテーマとして、利便性追求と来店リスク解消に努める。

  • 「マネービバ@汐留」のコンセプトは「ビジネスパーソンに寄り添い選ばれる銀行店舗」

  • 三井住友銀行リテールIT戦略部長の上村明生氏

19時まで営業、オンライン事前予約も

新店舗の特徴を見てみよう。まず、営業時間。通常15時でクローズしてしまう店舗がほとんどだが、新店舗では11時半~19時と設定し、現役世代でも昼休みはもちろん仕事帰りにでも気軽に立ち寄ることができるようにした。また、「せっかく足を運んでも待ち時間がもったいない」という問題を解消するためにオンラインでの事前予約制を導入した。予約制にすることで、待ち時間なく住所変更や各種手続きから投資・資産や将来のお金の相談までが可能になった。相談時間は、30分と60分から選ぶことができる。

タブレットが窓口に

予約後、来店したら店頭のタブレットを使ってチェックインを済ます。もし、個別に相談したいことがあれば、個室で専門スタッフが対応してくれる。個室は2室ある。お金のやり取りが必要であれば用意されたタブレット端末上で手続きができる。つまりこの店舗には、窓口と窓口スタッフがいない、それから現金の取り扱いのないキャッシュレス店舗ということになる。ちなみに、現金引き出しなどのためにATM2台は設置してある。もちろん、事前予約なく訪れたとしても、店頭と店内に予約状況が掲示してあるため、その場で店頭タブレットを使って予約をすることもできる。

  • 「マネービバ@汐留」店頭の受付タブレット

フラッと立ち寄れるフリースペース

「周辺で働くビジネスパーソンにフラッと立ち寄ってほしい」というのは、同行の主な狙いである。店内には、フリーWi-Fiと電源が完備されているので、パソコン作業やメールチェックなどもできる。

  • 「マネービバ@汐留」フリースペース

  • 「マネービバ@汐留」フリースペースのハイテーブル&チェア席

店内レイアウトは、窓口スペースがないためフリースペースがメインの開放的な造り。数名で座れるテーブル席と、ハイテーブル&チェア席を設置している。ちなみに、三井住友銀行の口座がなくても入店・店内利用可能としている。さらに、SMBCデビットカードを持っていれば、カードをかざすだけで無料のドリンクサービスまであるため、ちょっとした打ち合わせも可能であろう。コワーキングスペースのような使い方もできそうだ。

  • SMBCデビットカードをかざすだけで無料のドリンクサービスも

  • カードをかざすだけ

銀行店舗であることを忘れそうな快適な空間だが、多額の現金取引など以外の銀行窓口でできることは基本的にタブレットですべてできる。

  • 銀行窓口でやることをタブレットで

マネーセミナーも定期開催

通常営業以外に、有識者を招いてのセミナーも定期的に開催する。「人生100年時代」「フィンテック」など、現役世代が何かと気になるマネーに関する有益な話題や、いまさら聞けないマネーの基礎を学べる。18時スタートなら仕事帰りに参加できるというわけだ。銀行側としても、何度も参加してほしいという思いから、専用アプリ「SMBCスタンプカード」を用意。スマホにダウンロードすれば来店するだけでスタンプが貯まり、プレゼントがもらえる仕組みだ。相談やセミナー参加で、さらに多くのスタンプが得られるようになっている。

働き方改革が叫ばれ、雇用環境が大きく変わろうとする現在。住宅、教育、老後の資金など逼迫した課題を抱え、貯蓄や投資が有用であることは認識しながらも、忙しさを理由に目先のやりくりに追われるだけの現役世代にとって、汐留の新店舗は頼もしい存在となるだろう。働きながらでも足を運びやすいこと、カジュアルなスペースでお金のプロに相談できること、何よりマネーの豆知識から長い人生を考えるヒントまで吸収できるのがいい。

ネットバンキングの需要は増えるばかりの現在、銀行だって働き方改革中だ。およそ6万人ものビジネスパーソンがいる汐留店を、新世代の銀行の方向性を探る戦略的な店舗と位置づけ、今後どんどん新たなサービスや試みを提案していくということだ。あなたも足を運んで体験してみてはいかがだろうか。